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ロハスなはなし 第36回 農業でボランティア 「援農」で日本の食を守ろう
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▲都市からしばし離れ、農作業に汗を流すと心身ともにリフレッシュできます。
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▲千葉県鴨川市の農家でみかんの収穫を手伝う「温州みかん総採り収穫隊」。(写真協力:社団法人全国農協観光協会)
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▲「りんご摘果隊」の一コマ。農家の人との交流も楽しみの一つです。(写真協力:社団法人全国農協観光協会)
第36回
農業でボランティア
「援農」で日本の食を守ろう
2008/4/10
 

(1)援農で日本の食生活を守っていきませんか?
 先進国のなかでも日本の食料自給率が極めて低いことは周知の事実です。であるにもかかわらず、自給率を支える農業従事者の高齢化や後継者不足は年々進み、耕し手がいなくなった耕作放棄地も増加傾向にあるといいます。農林水産省が発表した「耕作放棄地対策研究会中間とりまとめ」では、耕作放棄地はその面積が把握され始めた1975年から1985年までは13万ヘクタールと横ばいだったものの、これ以降増加が始まり、2005年には38.6万ヘクタールになったと報告されています。
 このように弱体化が進む日本の農業を守る一つの対策として、注目が集まっているのが「援農ボランティア」です。これは普段農業にまったく縁のない都市住民などが繁忙期の農家へ手伝いに行くというボランティア活動です。作業内容は時期や作物によってさまざまですが、収穫日だけの数日単位のものもあれば数カ月にわたる連続作業のものもあります。また、参加方法も農家が直接募集している場合、自治体が窓口となって募集している場合などがあります。
 では、具体的にどのように始めればよいのでしょう? 最近は自治体やJAに専門の窓口を置いている場合が多いので、まずは住まいのある自治体やJAに問い合わせてみるとよいでしょう。問い合わせるにあたって、心積もりしておきたいのが報酬について。ボランティアですから基本的に無報酬ですし、さらに交通費や宿泊費は自己負担になると考えておきましょう。でも、普段の生活では決して味わえない充足感や爽快感など、得るものはそれ以上なのです。

(2)初めての人でも参加しやすい「快汗!猫の手援農隊」
 援農を始めてみたいと思っていても、園芸の経験すらなくて不安という人でも安心して参加できる取り組みの一つに「快汗!猫の手援農隊」があります。これは、都市と農山漁村の交流をサポートすることを目的に活動する「社団法人全国農協観光協会」が主催する援農ボランティアです。毎年5〜6回ほど企画されていて、毎回30〜90名程度の参加者を募り、繁忙期を迎える各地の農家に派遣しています。
 全国農協観光協会では10年前から、新潟県南魚沼市(旧大和町)での特産品「八色西瓜」の収穫の手伝いを皮切りに、毎年少しずつ活動の幅を広げてきました。最初は見ず知らずの人たちを受け入れることに抵抗感のあった農家側も、回を重ねるごとにボランティアの力を実感し、受け入れ農家の数も増えてきているといいます。また、参加者の意識も申し込みの段階ではレジャー感覚に近かった人でも、実際に活動をしてみると農家をサポートする社会的な意義に目覚めることが多いのだとか。「困っている人の役に立ちたい!」という思いは、参加者はもちろん農家にもパワーを与えてくれるようです。
 では、具体的にどんな援農隊が組まれているのか、いくつかご紹介しましょう。

●りんご摘果隊(5月下旬〜6月上旬)&総採り収穫隊(11月中旬〜下旬)
長野県中野市のりんご農家17軒に、3班約90名の摘果隊と、4班約120名の収穫隊が応援に(2008年度)。摘果とは、りんごの果実が実ったところで大きいものだけを残し、小さいものを取り除くという作業です。りんご農家にとって、最も人手が必要になる作業です。2002年に始まった収穫隊の大成功から、2003年から摘果隊も結成され、年々隊員の数も増えています。日程はどちらも2泊3日、3泊4日という2タイプから選ぶことができ、参加費は、宿泊・食事代などの実費として12,500円から(2008年度の場合)。現地集合・現地解散で、近隣在住者に限らずどこからでも参加することができます。

●蔵王 梅もぎ収穫隊(7月中旬)
宮城県蔵王町の果樹農園で、鈴なりに実った梅の収穫を手伝います。一つひとつ梅を手でもぎ、肩にかけた籠に入れていくという単純作業なので、初めての人でも貴重な働き手として活躍できます。2008年で第4回目を迎え、2班合計60名が参加しました。日程は2泊3日で、参加費用は約12,000円(2008年度の場合)。もちろん誰でも参加できます。

 全国農協観光協会主催の援農隊は、どの隊も作業を始める前にしっかりとオリエンテーションが行われ、また宿泊先などの手配も行き届いているので、初心者でも安心して参加できるのが魅力です。最新の募集要項は、協会のホームページでチェックできます。

(3)援農ボランティアとしてレベルアップしたいのなら
 最近では短期的な活動だけではなく、長期的に幅広い作業を担えるようなボランティアスタッフの養成も積極的に行われています。将来、農業に従事してみたいと考えている人には、より深い知識を身に付ける絶好の機会ともいえるでしょう。
 例えば、東京では「財団法人東京都農林水産振興財団」が援農ボランティアを養成する「東京の青空塾事業」という取り組みを行っています。農業に関心のある都民を対象に、援農ボランティア事業を実施する地域の組織(市区町村やJA)が募集をかけ、応募者に農作業実習を中心とした養成講座を開講。講座に7割以上出席すると「援農ボランティア」として認定され、講座を受けた地域で訓練を受けたボランティアスタッフとして活動できるようになります。この取り組みは、1996年度から始まり、国分寺市、府中市、小平市、三鷹市、東村山市などの比較的農家の多い地域で実施されています。募集は早いところで4月ごろからで、多くは5月に始まり、講座は夏野菜の収穫が始まる7月ごろから12月にかけて行われています。

 このように一口に援農ボランティアといっても、初心者でも安心なイベント感覚のものから、数カ月間の養成講座を受けて活動するものまで幅広く実施されています。でも、短期的なものであっても長期的なものであっても、農業を支える貴重なマンパワーであることは変わりません。畑で汗をかけば、心身ともにリフレッシュもできるでしょう。まずは、楽しんで体験してみるという第一歩が何よりも大切なのです。

【参考文献・URL】
・農林水産省「耕作放棄地対策研究会中間とりまとめ」
→http://www.maff.go.jp/j/study/kousaku_houki/06/pdf/data3.pdf[PDF:215KB]
・全国農協観光協会『地域コミュニティの活発化支援事業報告書』
・社団法人全国農協観光協会ホームページ
→http://www.znk.or.jp/
・財団法人東京都農林水産振興財団『東京の青空塾』
→http://www.tokyo-aff.or.jp/gaiyo/03/01/03/02.html
 
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