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ロハスなはなし 第25回 陸と海の生命を育て、環境を守る 海の森・マングローブ<後編>
ロハスなはなし
▲植林されたマングローブ
ロハスなはなし
▲枝についたまま発芽するオヒルギの胎生種子
第25回
陸と海の生命を育て、環境を守る
海の森・マングローブ<後編>
2008/4/10
 
 

「呼吸」と「光合成」、2つの作用をもつ植物のメカニズム
 植物は、生命を維持するために、「呼吸」(空気中から酸素を吸収し、二酸化炭素を排出)と、「光合成」(太陽エネルギーを用いて水と空気中の二酸化炭素から、炭素を内部に固定化、酸素を空気中に排出)という2つの作用を行います。マングローブも、この2つの作用を行っていますが、なぜ二酸化炭素の吸収量が大きいのでしょうか?
 一般的に、植物は、成長期には光合成を行い、空気中の二酸化炭素を吸収し幹や種子に炭素化合物を蓄えます。この機能を炭素固定といいます。成長が止まるとこの活動が低下して二酸化炭素の吸収量が少なくなります。
 マングローブが地球温暖化対策として注目される第一の理由は、樹木の成長の早さによる二酸化炭素吸収量の大きさにあります。
 マングローブの種子は、胎生種子と呼ばれ、枝についた状態で発芽します。
 3年目ころから本格的な成長期を迎えますが、条件がよければ1年に1m、種類によっては2〜3mも成長する木もあり、二酸化炭素吸収量は12年目まで増加するといわれています。関西電力の調査によると、マングローブ林は光合成により、1ヘクタールあたり年間で6.9トンの炭素を内部に固定する能力があり、樹種や生育条件によって10トンを超える場合もあるそうです。

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(注)熱帯雨林およびスギ林は地下部・土壌のデータがないため、地上部の炭素固定量のみを表示しています。

出典:マングローブおよび熱帯雨林は、関西電力(株)、オーストラリア海洋科学研究所(AIMS)、関西総合環境センター(KANSO)による国際共同研究資料より。
スギ林は、スギ1本あたりの1年間の炭素固定量約3.8kg(環境省・林野庁発行 「地球温暖化防止のための緑の吸収源対策」より)に、1ヘクタールあたり900本のスギがあると仮定して算出した数値です。

マングローブは、酸素を供給し、炭素を貯蔵する”工場”
 二つめの理由は、マングローブが海と陸の間にある汽水域(きすいいき)で生育するため、幹や根に貯蔵された有機物(炭素を含んだ化合物)が泥炭層となって堆積されやすく、二酸化炭素が長期間にわたって放出されにくいという点です。
 堆積した有機物の一部は潮の満ち干によって沿岸に運ばれ、バクテリアなどの働きによって炭素として海水に戻されますが、「海洋の中層や深層に運ばれた有機物は数十年から数百年の間大気から隔離される」と考えられています。((財)電力中央研究所・電中研ニュース361号より)
 多くの二酸化炭素を吸収して酸素を供給するとともに、炭素を貯蔵し長期間堆積させるという2つの役割が、地球温暖化対策としてマングローブが注目を集めている理由といえるでしょう。

●マングローブの「呼吸」と「光合成」
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マングローブ林再生への取り組み
 日本の企業や団体でも、関西電力などの電力系企業や、海上保険会社などが、自らの企業活動によって排出された二酸化炭素を補償するというカーボンオフセットや国際貢献活動の一環としてマングローブの植林に取り組んでいます。
 世界最大のマングローブ林保有国・インドネシアでは、1992年から国際協力機構(JICA)の活動拠点・MIC(マングローブ情報センター)が、現地の人々と協力して植林に取り組んでいます。MICの推計では、「同国には九州より広い約450万ヘクタールの林があり、うち復旧すべき対象の200万ヘクタールを復活させれば、その吸収量は概算で日本の温室効果ガス排出量の7%にあたり、京都議定書での削減義務6%を上回る可能性がある」としています。
 化石燃料の大量消費による二酸化炭素の排出と、森林の減少による二酸化炭素吸収能力の低下とは、地球温暖化を加速させる大きな要因となっています。さまざまな生命を育み、環境を守ってきた海の森・マングローブを、これからも大切に守り続けていきたいものです。

 
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