「地産地消」を見直す
先にも述べたとおり、私たちは科学技術によって冬でもトマトを栽培できるようになり、また遠隔地で捕れた魚介類を日本に運べるようになり、いつでも好きなものを食べられるようになりました。しかし、それは大量の石油エネルギーに頼ってのこと。地球温暖化の問題が叫ばれ、加えて急激に石油価格が高騰する昨今、私たちは自分たちの食生活を見直す必要があるといえます。
そこで改めて注目したいのが「地産地消」です。これは“地域で生産されたものをその地域で消費すること”。これまではどちらかというと、消費者と生産者をより近づけることで食の安全と農業の振興を図ることが目的とされてきましたが、トラックや飛行機、船での長時間の運搬が不要な分、化石燃料の消費を抑えることができてエコにも効果的です。さらに、生産者と直接コミュニケーションをとることで、地域の特産品や旬に関する私たち(消費者)の意識がもっと高まれば、自然環境や季節に順応した農業・漁業への理解ももっと深まるでしょう。つまり、ロハスな暮らしには「地産地消」を意識した食生活が欠かせないのです。
では、具体的に何から始めればいいのでしょう。今号ではその第一歩として、長い歴史を持つ日本三大朝市を紹介します。地元の台所として長く受け継がれてきた朝市には、季節の味覚や作り手との気さくな会話が今もなお残っています。三大朝市に足を伸ばしてみるのはもちろん、これをきっかけに近くの朝市に顔を出してみてはいかがでしょう。
千葉県・勝浦朝市
400年以上も続き、カツオで知られる勝浦漁港からの近海の海産物や地元の農家で収穫された農産物が並ぶ勝浦朝市。その歴史は天正19(1591)年に領主の植村土佐守泰忠(うえむらとさのかみやすただ)が産業振興のために農水産物の交換の場として開設したことに始まります。開設当時どのような天気でも毎日開かれていたこともあり、現在でも水曜日と年始を除き、毎朝6時ごろから11時ごろまで約70軒が出店しています。店先には採れたての野菜や果物に、勝浦漁港で水揚げされたばかりの魚介類などの新鮮な地元の食材のほか、自家製の漬け物やカツオ節、干物などの加工品、手作りの工芸品などが並びます。会場は2ヵ所で交互に行われ、毎月1〜15日までは「下本町通り」、16日〜月末までは「仲本町通り」で開催。出店者は地元の魚屋さんや農家の人、食堂の女将さんなどが中心とあって、のんびりとしたアットホームな雰囲気も魅力です。
※開催日・アクセスなど詳細は勝浦市の朝市のホームページを参照。
http://www.city.katsuura.chiba.jp/asaichi/index.html
石川県・輪島朝市
昔、神社の祭日ごとに立ったという物々交換の市が始まりとされている輪島朝市は1200年以上の歴史をもちます。現在は本町通りの約360mの間に、毎朝(10日と25日、年始は除く)150〜250軒ほどのお店が軒を連ねます。輪島の女性は「亭主の一人や二人養えない女は甲斐性なし」と自負するほど働き者で知られ、そのため朝市においても店主は女性が中心。旬の野菜や果物は周辺農家のおばちゃんたちが、新鮮な魚介類や海草は漁師町の女衆が売りにやってきます。新鮮な海の幸はこちらの最大の魅力ですが、なかでも舳倉島(へぐらじま)の名物蒸しアワビやサザエはぜひ味わっておきたいもの。ちなみに、輪島朝市ではあまり“値札”が付いていません。店の人とコミュニケーションしながら値段を交渉していく、これも朝市の楽しみのひとつといえます。
※開催日・アクセスなど詳細は公式ホームページ・輪島市朝市組合を参照。
http://www.honmachi.or.jp/
岐阜県・高山朝市
高山朝市は江戸時代後期、養蚕農家が桑の葉を売った「桑市」に始まり、農家がその傍らで花や野菜などを持参して並べたことから花市、夕市、朝市として発達し、明治の中頃になって朝市として定着したといわれています。現在、朝市は陣屋前広場と宮川沿いの2ヵ所で毎朝6時から開催されています。陣屋前広場の朝市は専業農家のみの出店と決められているので、新鮮な農作物が充実。一方、宮川沿いの朝市はより幅広い品ぞろえと出店数が魅力です。鍛冶橋から弥生橋まで約250mにわたって約40店舗のお店が並び、野菜や果物から、漬物や佃煮といった加工品、花、さらに高山名物のさるぼぼの人形などの民芸品までそろいます。何度も存続の危機に遭いながらも、地元の人々の熱意で続けられてきた朝市。今では高山の大切な観光スポットとして国内外からたくさんの観光客が訪れるようになっています。
※開催日・アクセスなど詳細は公式ホームページ・飛騨高山 宮川朝市協同組合を参照。
http://www.asaichi.net/
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