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ロハスなはなし 第28回 江戸の大ブームからエコ運動まで 朝顔と夏の暮らし
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▲牡丹咲きの朝顔。もともと朝顔の原種は小さな青い花でとても地味なものでした
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▲昭和50年ごろの朝顔市の様子
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▲現在も大勢の人たちで賑わう。今年は北海道洞爺湖サミットの影響で、7月18〜20日に開催(写真提供/いずれも入谷中央商店街)
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▲4階建ての壁面を覆うように茂る板橋区役所の「緑のカーテン」。朝顔だけではつるの高さに限界があるため、きゅうりやへちま、ゴーヤの4種類のつる性植物を植える。平成19年度(写真提供/板橋区)
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▲今年も順調に生育中のカーテン。平成20年6月10日、板橋区役所にて
第28回
江戸の大ブームからエコ運動まで
朝顔と夏の暮らし
2008/7/10
 

●大名も江戸っ子も熱中した朝顔ブーム
 江戸時代後期、文化・文政期(1804〜1830年)と嘉永・安政期(1848〜1860年)に、朝顔は江戸と大阪でそれぞれ大きなブームを迎えます。
その始まりは、文化13(1816)年に行われた浅草大円寺・上野寛永寺子院の「闘花会」といわれています。これは突然変異によって生まれた「変化朝顔」(さまざまな色や形をした朝顔)を、持ち主たちが競い合った催しで、優劣をつけた花の番付表まで刊行されました。この時代を境に、数種類しかなかった朝顔の色は数倍に増え、模様や形、葉形なども多様に変化していきました。しかし、文政期以降は飢饉や政治改革などが起こり、流行はいったん終息。そのため、どのように変化朝顔が栽培されたのかが記された詳しい資料は残されていません。
 嘉永・安政期になると、朝顔が再び流行。その熱は前回以上に高まりました。牡丹咲きや八重咲きのように花弁の枚数を増やした豪華なものなどさまざまな朝顔が作出。観賞用として、大名や御家人、僧侶、裕福な商人の間でもてはやされ、彼らはその栽培にまでも熱中したといいます。他方で、変化朝顔は大変な高値で取引されたため、植木屋はもちろんのこと、下級武士や一般庶民までが変化朝顔の栽培に精を出したとか。“花合わせ”という品評会も大阪と江戸の各地で開催され、栽培家の番付表や優れた朝顔を集めた図版も数多く出版されました。まさに殿様から庶民までを巻き込んだ大ブームだったことがうかがわれます。その時代に変化朝顔づくりの名人として活躍したのが、入谷の植木師・成田屋留次郎。彼の活躍が後に入谷が朝顔の街として賑わう礎になったといえます。

住民たちが復活させた入谷の朝顔市
 毎年7月6日から8日まで、東京都・入谷の入谷鬼子母神境内では朝顔市が開催されます。下町の情緒を今に伝える夏の風物詩としてすっかりおなじみの催しです。
 さて、入谷が朝顔の街として広く知られるようになったのは明治の中頃。『下谷繁昌記』(大正3年発行)にも、「入谷の朝顔の全盛を極めたりしは、明治二十四五年頃にして、其の頃は、朝顔を造る植木屋十数軒を数え、入谷の通りは、毎朝、往来止めとなる程なりし也」とあるように、夏になると植木屋たちが軒下に朝顔の鉢をずらりと並べ、それを目当てにたくさんの人が集まりました。明治天皇も侍従を遣わせて買いに来たといいます。ちなみに当時一株弐銭。非常に高価なものでしたが、ひと夏に十数万鉢も売れたとか。
 しかし、その大盛況もあまり長くは続きませんでした。明治後期になると、東京の発展とともに入谷の地価も高騰。しだいに植木屋は郊外に越したり、廃業したりと軒数を減らしていきました。大正2年、ついに最後の2軒も廃業し、入谷の朝顔の歴史はいったん幕を閉じます。
 再び、入谷が朝顔の街として息を吹き返したのは昭和22年のこと。戦後、商店街の有志が美しい自然を取り戻そうと、戦争ですっかり荒れ果ててしまった街のあちこちに朝顔の種をまき、人々に配ったのです。そして、翌年7月には第1回目の朝顔市が開催され、「入谷の朝顔」は復活しました。入谷の朝顔には、戦後の荒廃から立ち上がろうとする人々の思いが込められていたのでした。

朝顔で広がる都市緑化の輪
 もっぱら観賞用の花として愛されてきた朝顔ですが、最近では都市の緑化をサポートしてくれる植物として注目を集めています。朝顔やゴーヤなどつる性の植物を窓辺で育て、カーテンのように日よけにするというものです。この植物のカーテンによって窓の遮光率が高まり、さらに葉の蒸散作用によって周辺の気温を下げる効果も。ある電力会社の調べによると、エアコンの使用量では20〜30%の省エネ効果があるとされています。
 この植物のカーテンは、手軽でしかも花や実が目を楽しませてくれる緑化運動として注目を集めています。今年で3年目になる東京都・板橋区役所をはじめ、杉並区役所、福岡市役所、鹿児島市役所など、全国各地で朝顔やゴーヤ、ヘチマなどを使ったカーテンづくりが進行中。なかでもいち早く取り組んできた板橋区では、昨年幅11メートル、高さ16メートルもの巨大カーテンづくりに成功しました。
今年は育てるのには時期遅れになってしまいましたが、最後に板橋区が推奨するカーテンの作り方を簡単にご紹介しましょう。来年はぜひ挑戦してみてください!

[緑のカーテンの育て方]
●準備するもの
 プランター(大きく深めのもの)、培養土、保水性小石(水はけをよくするため、プランターの底に敷く)、ネット(10×10cm目角が最適)、支柱(苗が短いうちは支柱で支える)、種または苗(朝顔やフウセンカズラ、きゅうり、ゴーヤなど)
●種まきや苗植えの時期
 種は3月下旬から4月中旬。種を一晩水につけておいたり、切り込みを入れたりしておくと発芽しやすくなります。苗の場合は5月上旬。どちらも朝顔など葉の小さいものは20cm間隔で、きゅうりやゴーヤなど葉の大きいものは30cm間隔で植えましょう。
●水やりと追肥
 水は土が乾かないように毎日たっぷり、真夏は朝夕2回。また肥料は10日に1回のペースで与えます。
●つるや枝の誘引
 50cmほどつるが伸びたら、支柱やネットを設置してつるをはわせるようにします。
(板橋区地球温暖化防止活動推進協議会作成「緑のカーテン」より一部抜粋)

<参考URL>
入谷中央商店街
→http://www.asagaoroad.com/
九州大学大学院 染色体機能学研究室
→http://mg.biology.kyushu-u.ac.jp/
アサガオ類画像データベース
→http://www.genetics.or.jp/Asagao/Yoneda/menu.html
国立歴史民族博物館「伝統の朝顔―2001」
→http://www.rekihaku.ac.jp/kikaku/index60/

<参考文献>
入谷中央商店街振興組合『入谷朝顔市と共に』
講談社パノラマ図鑑『アサガオ』

 
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