●炭水化物だけではない、お米の健康パワーとは?
新米の季節を迎え、お米がおいしい季節になりました。香りよくツヤツヤに炊き上がったご飯は、食欲を大いに刺激してくれますね。
さて、お米というと、炭水化物でエネルギー源とばかり思われがちですが、実は食物繊維や鉄分、ビタミンなどさまざまな栄養素が含まれています(図1参照)。また、同じ炭水化物でもパンよりもご飯を食べたほうが太りにくいとも。その理由はというと、インスリンの分泌にあります。炭水化物を摂取すると、その代謝を調整するためにインスリンというホルモンが分泌されますが、これは急激に大量に分泌されてしまうと脂肪細胞を増大させる働きをします。ご飯で炭水化物を取った場合、このインスリンの分泌が緩やかでかつ低いため、太りにくいといえるのです。
また、ひと口にお米といってもその種類はさまざま。一般的に広く食べられている精白米のほかにも、玄米や胚芽米、色素米(または古代米とも)などがあります。ぬか層と胚芽を含む玄米は、精白米に比べてタンパク質やビタミンB、ビタミンEが多いのが特長。一方、胚芽のみ残した胚芽米はビタミンEやアミノ酸などが豊富です。また、古代人が食べていた黒米や赤米といった色素米は、鉄やカルシウム、ポリフェノールなどを含んでおり、近年健康食品として注目が集まっています。加えて、精白米に赤米を少し加えて炊くと、お赤飯のような色鮮やかなご飯に炊き上がります。お米は日本の伝統的な食文化のひとつということだけではなく、日本人の健康をサポートする大切な存在といえるでしょう。
お茶わん1杯分に含まれている栄養(精白米の場合)
[出典]『お米・ごはんハンドブック』
●小麦粉に変わる新しい粉「米粉」
大部分を輸入に頼る小麦粉の世界的な値上がりの結果、最近注目を集めているのが純国産でまかなえる「米粉」です。米の粉といえば和菓子の材料といったイメージですが、最近はさらに粒子を細かくして小麦粉の代わりにパンや洋菓子、めん類にも使えるように開発が進展。大手製パンメーカーが米粉パンを製造したり、コンビニが米粉パスタを発売したり、さらに給食にも積極的に米粉パンが使われたりと、その使用用途は年々広がっています。結果、農林水産省の調査によると、米粉の新しい用途への使用量は2003年度の1,000トンから2006年度には6,000トンと6倍にも増えたといいます。
米粉の特長は、小麦粉と比べて生地がしっとり、もっちり仕上がる点や、低カロリーで高タンパクといった栄養面など。また、最近増えている小麦粉アレルギーの子どもでも安心して食べられることも好評を博している一因のようです。今年の8月からは埼玉県の製粉メーカーが薄力粉の代わりとして使える「米粉パウダー」を発売。これまで業務用が中心だった米粉が、家庭用の商品としても流通するようになり、今後は一般家庭の台所でも大活躍しそうです。
●お米を食べて自給率向上を目指す
冒頭で述べたとおり、確かに1ポイントほど食料自給率が向上したとはいえ、昭和40年代からその推移(表1)を見てみると、急激に下降した値が極めて低いレベルで停滞しているに過ぎないともいえます。加えて、世界の先進国と見比べてみても、日本の自給率の低さは群を抜いています(表2)。窮迫した状況に直面した農林水産省では、2009年度の概算要求に自給率向上を目的とする予算3,025億円を盛り込むことを発表しました。いよいよ私たちも無関心とはいっていられないところまで、日本の食糧問題はきてしまったのかもしれません。
ところで、食料自給率の低下の要因としてよくいわれているのが、食生活の欧米化です。日本人がお米を含む、昔ながらの食事から離れていき、結果、さまざまな要因が重なり合って日本の農業を衰退させてしまったというわけです。事実、昭和40年代の日本人は毎日ご飯を平均5杯食べていましたが、平成18年度になると3杯に減少しています。仮に、全国民が1日にご飯を茶わんでもう1杯(精白米60グラム)多く食べると食料自給率は8%、1日に7グラムの小麦粉製品(パンなど)を米粉に切り替えると1%上昇するといいます。というのも、平成18年度の農林水産省のデータによれば、米の自給率は94%で、主食用のみでいえば自給率が100%になるからです。つまり、お米は国産のみでまかなえる貴重な食品なのです。もちろん、お米を食べれば自給率の問題を解決できる、といった簡単なことではありません。しかし、お米をもっと食べることは、自給率の向上につながり、栄養たっぷりで健康にもいいし、しかも、おいしい! という一石二鳥ならぬそれ以上にもなるのです。
表1 食料自給率の推移(単位:%)
昭和40年度 |
昭和50年度 |
昭和60年度 |
平成7年度 |
平成12年度 |
平成18年度 |
平成19年度 |
73 |
54 |
53 |
43 |
40 |
39 |
40 |
[出典]農林水産省「平成19年度食料需給表」参考2.食料自給率の推移
表2 主要先進国の食料自給率(カロリーベース)の推移(試算)・2003(平成15)年度 (単位:%)
オーストラリア |
カナダ |
フランス |
ドイツ |
イタリア |
オランダ |
237 |
145 |
122 |
84 |
62 |
58 |
スペイン |
スウェーデン |
スイス |
英国 |
アメリカ |
日本 |
89 |
84 |
49 |
70 |
128 |
40 |
[出典]農林水産省 農林水産省で試算した主要先進国の食料自給率
※このレポートにおける食料自給率の数値は「カロリーベース総合食料自給率」です。食料自給率とは、国内で食べている食料のうち、どのくらいが日本で作られているかという割合のこと。その計算方法には3種類あり、食品の重さそのものを用いて計算した自給率の値を「重量ベース自給率」、食料に含まれるカロリーを用いて計算した値を「カロリーベース総合食料自給率」、価格を用いて計算した値を「生産額ベース自給率」といいます。一般的にはカロリーベースによる値が使用されています。
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