バイオエタノール――地球温暖化防止に貢献する燃料
バイオエタノールとは、植物性の物質を利用して作られるアルコールの一種です。天然ガスや石油などの化石資源から作られた合成エタノールと区別するために、こう呼んでいます。農林水産省によると、2005年度は全世界で年間4,600万kl(原油換算)が生産され(東京ドームの約37個分)、2001年度と比較して1.5倍に増加しています。バイオエタノールはCO2を吸収する植物が原料であるため、地球温暖化対策に有益とされています。
■トウモロコシ高騰 その影響で・・・
2007年1月、欧州連合(EU)では、2020年までに輸送用燃料の2割を、バイオエタノールに転換することを決定しました。同様にアメリカでも、自動車のガソリン消費を今後10年間で2割削減する方針を打ち出しました。地球温暖化を防止するこれらの施策の影響で、バイオエタノールの主な原料であるトウモロコシやサトウキビの価格が、前年比の1.5〜2倍に高騰しました。
バイオエタノールが注目されたことで、ほかの野菜や果物からトウモロコシやサトウキビに転作する農家が増えはじめています。そのことが原因の一つとなり、小麦は10年ぶり、大豆もほぼ3年ぶりの高値をつけました。
解決策として、EUでは取引や生産についての国際的なルールづくりを検討し、価格の安定化や公正取引の確保を目指しています。
さらに植物の成長を促進する肥料の開発や、バイオエタノールを作りやすくする遺伝子組み換え技術、食用に適さないトウモロコシの茎や葉をバイオエタノールに転換するなどの研究が世界中で進められています。
■わが国の導入状況
このように全世界で需要が拡大しているバイオエタノールですが、わが国の導入状況はどうなっているのでしょうか? 最近の事例をいくつか紹介しましょう。
石油連盟の発表によると、2007年4月から首都圏50カ所の給油所においてバイオエタノールにガソリンを混合させたバイオガソリンの試験販売を開始しました。2010年度には、全国への本格導入を予定しています。当然ながら、バイオガソリンの製造コストは通常のガソリンよりも高くつくのですが(1リットルあたり1〜2円高)、政府から補助金が出ているため、今のところ同じ価格で販売されています。
一方、ディーゼル車向けのバイオ燃料として、都営バスの一部の車両を対象に2007年10月から実証実験を始める予定です。そのほか全国各地で、バイオディーゼルの普及に向けたさまざまな取り組みが進められています。
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2007年度 |
2008年度 |
2009年度 |
2010年度 |
位置付け |
試験販売開始 |
試験販売拡大 |
導入拡大 |
本格導入 |
販売所数 |
50 |
100 |
1,000 |
全国展開 |
バイオ発電――ゴミや海藻がエネルギーに
環境問題への関心が高く木材資源が豊富な北欧諸国では、製材所で生じる木材チップや廃材などの木質系のバイオマスを原料とした発電が行われています。わが国では、2007年7月より北陸電力の敦賀火力発電所で、木質バイオマス発電を本格的に始めましたが、全国的な普及にはまだまだ時間がかかりそうです。
ユニークなところでは、廃棄物を使ったバイオ発電が注目を浴びています。生ゴミを焼却する際の熱で蒸気を作り、タービンを回して発電します。発電後の排熱は、近隣施設の温水や冷暖房としても利用が可能です。発電効率やコストなどの課題はあるものの、ゴミを焼却しながらエネルギーを発生するのは一石二鳥。本格的な実用化に向けて期待されています。このほか、近年大量発生した海藻や、家畜排せつ物などからもエネルギーに転換する研究開発が進められています。
これからのエネルギーを考えるとき、環境にやさしいバイオマスの重要性はますます高まることでしょう。数年後には、あっと驚くような技術が生まれるかもしれません。
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