温暖化とヒートアイランド現象
地球はいったいどのくらい温暖になったのでしょうか。ある統計によると、1906年から2005年までの100年で、平均気温は0.74℃上昇しました。一方、1901年からの100年で計算すると0.6℃の上昇となり、たった5年の差で平均気温が0.14℃も上昇。さらに、21世紀末には現在より約2℃も高くなるだろうと予測され、平均気温はその後も上がり続けると言われています。過去100年の上昇率からすると、この2℃という上昇幅は尋常ではないことを示しています。
夏になると問題になる「ヒートアイランド現象」とは、都心部にできる局地的な高温域のことを言います。産業の排気熱、自動車の排気ガス、冷房機器の排熱、コンクリートやアスファルトの熱吸収などによって、気温が極度に上がる現象です。私たちはこれらの猛烈な暑さを冷房でしのぐために、社会全体で膨大なエネルギーを一斉に使います。そこで起こるのが、都会のヒートアイランド現象なのです。これらを低減させるために最近注目を集めているのが、屋上緑化です。省エネルギーで、夏を涼しく過ごすための解決策の1つです。
屋上緑化で涼しく過ごす
渋谷区役所 神南分庁舎では、昨年猛暑の日に計測した際に芝の表面が30℃だったのに対し、緑化していない地面は50℃にも達していました。また、あるリサーチによると、緑化した屋上の下の部屋と、緑化していない部分の下の部屋では、同じビルでも室温に約9℃の差が出たそうです(表1参照)。さらに壁面やベランダなどの緑化も、建物全体を熱気から守る効果が期待できます。植物から発散される冷気によっても、建物の内部だけに限らず周辺環境を冷やす効果があることが検証されています
実験日時 2001年7月8日
晴れ 午後2時 |
緑化なし |
緑化あり |
外気温度
屋上表面30cm
屋上表面120cm
屋上下事務室 |
37℃
52℃ 49℃ 38℃ |
37℃
42℃ 45℃ 29℃ |
▲同じ建物の部屋とは思えないほど、明らかに温度の差が出ています |
緑化推進のための助成制度
屋上を緑化するには、しっかりとした防水設備が必須です。また、植物を上手に育てるには水はけのよさが大切で、最近は屋上に適した軽量化した土や、高い防水性を維持できるシートが研究・開発されるなど画期的な製品が出てきています。
これら屋上の緑化には、それ相応の資金も必要となってきます。例えば、プロの手を借りて本格的な緑化のベースを作るとなると、その際の予算の目安は約3万円〜/m²ぐらいかかると言われています。
市町村によっては、緑化推進のための助成制度が既に整っており、東京23区ではそのうち20区で制度が整備されています。実際に屋上緑化をするとなると初期費用がかさんでしまいますが、緑化によって断熱効果がアップし、設置以降の省エネにもつながります。また、何より猛暑を快適に過ごせるようになるのです。助成制度を上手に利用して、積極的に個人レベルでの緑化計画を進めたいものです。
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屋上 |
ベラ
ンダ |
壁面 |
ほか |
助成金算出方法と限度額、助成の対象と条件 |
品川区 |
○ |
○ |
○ |
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上限30万円/民間建築物対象 1m²以上の緑化整備を行うこと |
渋谷区 |
○ |
○ |
○ |
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屋上¥4,000/m²で上限40万円、ベランダ¥2,000/m²で上限10万円、壁面¥2,000/m²で上限10万円/300m²以上の敷地を持つ民間の建物で建築物の販売を目的とした緑化整備でないこと |
墨田区 |
○ |
○ |
○ |
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上限40万円/民間建築物対象 |
千代田区 |
○ |
○ |
○ |
○ |
上限10万円/敷地1,000m²未満の民間建築物対象/プランター可 |
豊島区 |
○ |
○ |
○ |
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総経費の1/2もしくは区で定めた標準施工単価(¥10,000)×施工面積のいずれか小さい方の額/屋上・ベランダ:上限40万円 |
台東区 |
○ |
○ |
○ |
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5,000円/m² ×助成対象緑化面積または工事費×1/2のいずれか小さい額/2m²以上の屋上緑化または壁面緑化、既存建物 敷地面積1,000m²未満のもの、新築・増改築 敷地面積300m²未満のもの |
そのほか |
※区によって、条件は変わる |
中央区、練馬区、文京区、板橋区、北区、葛飾区、中野区、足立区、江東区、杉並区、世田谷区、目黒区、港区、荒川区、横浜市、川崎市、戸田市、船橋市
※荒川区は今年の夏から屋上緑化の助成制度対応開始。土木課で対応する。5月の区報で制度内容を発表の予定 |
▲地域で屋上緑化を推進しています。条件は区によってさまざまです 新宿区、大田区:屋上緑化は助成制度なし(ただし、生け垣の助成はあり) 足立区は、屋上緑化の助成制度なし |
屋上緑化の多様な効果
屋上緑化は、夏を涼しく過ごせるだけではなく、植物を育てながらの庭いじりの時間や、花の観賞など、いろいろな楽しみをもたらしてくれます。いわゆる「癒やし」の効果も期待でき、精神安定効果やストレス発散作用もあると言われています。また、自閉症のためのホティカル・セラピー(園芸療法)としての効果があるとも言われています。
涼をとるには、屋上緑化のほかに「緑のカーテン」といって、プランターを使ってつる科の植物を軒下で育てるなど、ベランダで簡単にできる緑化も普及し始めています。また緑化以外にも、窓にすだれを掛けたり、毎夏恒例となった銀座での「打ち水大作戦」と銘打ったイベントのように水を道にまくといった、昔ながらの涼むための工夫が見直されつつあります。 皆さんも、夏本番を迎える前に、身近なところから緑化を考えてみませんか。
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