-流通小売業講座<前編>- 5/8
食の安全確保に向けた基本理念、食品安全委員会の設置などを決めた食品安全基本法案とともに、食品衛生法改正案など食品安全関連の7つの法案が成立しました。それら法案のなかでも大きな話題となっているのが、「牛肉トレーサビリティ法」案です。同法案の正式名称は「牛の個体識別のための情報管理に関する特別措置法」。BSEの蔓延防止、食肉偽装の防止、牛肉に対する信頼確保などが目的の法案です。
農林水産省がやろうとしていることは、簡単にいえば日本国内にいる約450万頭の乳牛、肉牛などの「牛肉」の戸籍づくり。つまり牛(乳牛、肉牛問わず)が誕生してから、と畜され精肉され小売店で販売されるまでの流れのなかで、1頭ごとに付与された識別情報を共有していこうとするものです。
牛が誕生した段階で、畜産業者には、独立法人家畜改良センターに届け出ること、同センターから個体識別番号を印字した耳標(じひょう)を装着することが義務付けられます。この装着された耳標を勝手に取り外すことや、耳標のない牛の譲渡・受け渡しは禁じられ、これらを犯したときには、義務違反として罰則規定も設けられています。
その後、枝肉(と畜)、部分肉(卸売)と肉が解体されていくごとに、個体識別番号、枝肉番号、またはロット番号の表示が、さらに精肉(小売り)段階では識別番号(もしくはロット番号)の表示が義務付けられることになります。これらも義務違反となれば、罰則(罰金)が適用されることとなります。なお切り落とし、ミンチ、惣菜、加工品などの肉、または輸入牛肉については、今回の法案の対象とはなっていません。
今回は牛肉だけの措置となりましたが、今後は鶏肉・豚肉などにも同様の法律を作り、トレーサビリティ(生産履歴)を明確にする予定になっています。
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