グリーンレポート
特集:流通小売業講座<前編>
-流通小売業講座<前編>- 4/8

4.新しい売れ筋を探して<NO.2>

 また、百貨店各社で、低迷の続く紳士用品売り場をテコ入れする動きが広がっています。伊勢丹本店新館で、今春改装した5階売り場は、従来の百貨店にはない画期的な作りと話題を集めています。ポイントは「買い物に苦痛を感じていた男性客が、ゆったりと買い物ができる売り場にした」こと。ブランドショップごとにあった仕切りを取り除き開放感を演出、買いやすさを追求しました。お客さんは、どの商品がどこにあるのか、フロア全体を見渡すことができます。ジャケット、シャツなど商品ごとに陳列されており、異なるブランドの商品をじっくりと比較できるようになりました。
 実は、百貨店の紳士用品売り場は女性客が圧倒的に多く、紳士用品を主にあつかう伊勢丹の新館でも、改装前は男性客の購買比率は35%、女性客が65%と多数。それが改装後には、男性客52%と逆転。「男性客が主役となれる売り場を作りたかった」という狙いはまずは当たったようです。
 京王百貨店は庶民派百貨店として独自路線を貫き、顧客をつかんでいます。百貨店のほとんどが海外高級ブランドをテナントに持っていますが、京王にはまったくありません。若い女性向けのサマーセーターを、デザインを変えずにサイズ調整し50〜60代向けに売り出すなど、独自の手法で対抗してきました。
 昨秋導入した丈サイズ2センチ刻みの女性用スラックスは、昨年9〜12月の売上高が前年同期比90%増、今年2〜6月には同2.3倍まで膨らみました。従来の女性用スラックスはウエストのサイズごとに丈サイズが1つしかなく、すそ直しが必要でしたが、京王はとメーカーと交渉し、複数の丈サイズを実現しました。
 催事内容もユニークで、今夏の目玉は「老舗大古書市」と「大骨董市」。96年秋から始めた「質流れ品大処分市」(毎年2回開催)では、3〜5割引のブランド品が飛ぶように売れ、ここ3年の売り上げは1週間の開催で、常に8億円を超えています。
 京王の戦略は、特に中高年層の受けがよく、新宿店の化粧品売り場では、70代以上の購入が全体の1割超。来年には、開店40周年を機に「新しい中高年層にどんなものを提供できるか」を念頭に、改装を検討しているとのこと。地方百貨店からも見学の依頼が相次ぎ、独特の商法に注目が集まっています。
 スーパーマーケット各社では、店内で焼き上げるパン売り場「インストアベーカリー」を強化しています。売り場に独自色を打ち出せ、客の目を引く焼きたてパンを集客の目玉にしたいと、知恵をしぼっているのです。自家製の天然酵母を使って焼くパンや、地域限定パンなど品ぞろえも多彩。パートタイマー一人で切り盛りするパン工房など、運営面でも新しいタイプの店が生まれているようです。
 また、食品スーパーを中心に、営業時間を延長する動きが加速しています。大手では、イオンが平成13年8月に一部店舗の24時間営業に踏み切りました。マルエツやダイエーなどでも強化の動きが広がっています。
 顧客を獲得するために、各社さまざまなアイディアをめぐらせています。それらの新しい動きがあるところには、新たな印刷物が必要となるはずです。



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