グリーンレポート
特集:個人情報保護法案
-個人情報保護法案- 1/3

1.個人情報保護法案について

(経緯)
 高度情報通信社会の進展に伴い、Eメールやホームページなどが誰でも簡単に使えるようになり、特に個人の社会生活は飛躍的に便利になりました。情報通信技術はさらなる技術革新を遂げるものと予想され、インターネット等の情報インフラを利用した個人向けサービスはますます盛んになるものと思われます。しかしながら、こういった情報社会の進歩を喜んでばかりいられません。個人の社会生活における利便性が拡大する一方で、住所、氏名、生年月日等、さまざまな個人情報がインターネット上で頻繁にやり取りされる状況も生まれました。さらにブロードバンドの普及により、一度に送受信できるデータの量も加速度的に増えつつあります。 そこで個人情報の適正な取扱いに関するルールを定め、不正な漏洩や横流しがおきないように、法的な整備を行おうという目的の元に検討されたのがこの法案です 。
 そもそものきっかけは平成11年の住民基本台帳法改正の際の国会での議論です。当時の議論では、特に民間分野に個人情報保護の法律がないことが問題視されていましたが、民間だけでなく役所もIT化された住民基本台帳をしっかり管理するようにということで個人情報保護法の制定の動きがでてきたのです。
(概要)
 この法案は、個人情報を利用することの有用性(役に立つこと)に配慮しながら、プライバシーなどの個人の権利利益を保護することを目的としています。
 平成13年に提出された法案では、個人情報を取り扱う者すべてが自主的に守るように努力すべき5つの「基本原則」や、大量の個人情報をデータベース化して事業に用いている事業者が守るべき法律上の具体的な義務、主務大臣の報告聴取、勧告、改善命令等に従わない場合の罰則などが定められました。その後与党3党による修正要綱が提示されましたが、ここでは、「基本原則」に変わる「基本理念」の制定や「報道」の定義の明確化、著述業も義務規定の適用外とする、等の内容が追加・修正されました。

個人情報保護法案要旨

(効果)
 これまで民間分野における個人情報の取扱いに関しては、業界や事業者のモラルや自主規制に委ねられていました。しかし、この法案では大量の個人情報をデータベース化して事業に用いている事業者に対して、様々な法律上の具体的な義務を課し、さらに違反した場合の罰則まで定めています。
 例えば、この法案の適用対象となる事業者は、個人情報を目的外に利用したり、本人の同意なく第三者に提供したりすることが原則禁止されます。データの漏洩などを防止するための安全管理措置や従業員などの監督も必要になります。さらに、個人情報の本人は、事業者に対して、自分の情報の開示を求めたり、その内容が間違っていれば訂正を求めたり、さらには目的外に利用されている場合に利用停止を求められるなど、自分の情報に積極的にアクセスできるようになります。
 この法案によって個人情報の取扱いに関するルールが整備されれば、個人情報を使用される側の個人にとって、自分の情報がどのように使われているか分からないという不安はかなり軽減されると思われます。
(問題点)
 しかし、個人情報の管理を厳しく求めるこの法律は、メディア活動の自由を妨げる一面も持っています。平成15年に提出された与党3党による修正要綱によって、個人情報取扱事業者のうち、報道機関(フリー含む)、著述業、学術研究機関、宗教団体、政治団体が適用除外となりましたが、報道、著述目的以外の出版分野については、義務規定も含め全面的に法が適用される可能性があります。
 また、最近ではインターネット等のメディアが普及して個人の表現活動が大きな可能性を持つようになりましたが、これらの規制は個人の自由な表現活動を国が監視し、制限する枠組みとなる恐れもあります。


個人情報保護法案の枠組み


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