グリーンレポート
特集:環境対応への企業努力が不可欠に 印刷業界に迫る「グリーン購入」への潮流
-印刷業界に迫る「グリーン購入」への潮流-6/9


 さらにGPNでは、昨年11月に「『オフセット印刷サービス』発注ガイドライン」を策定・公表しています。これは、紙の印刷物をオフセット印刷で発注する際に考慮すべき重要なポイントをリストアップしたもの。印刷サービスについてわが国ではじめて制定される"発注者向け"のガイドラインとなり、自治体をはじめとしてグリーン購入に取り組む多くの団体・企業においての積極的な活用が予想されます。特徴は、「I・印刷物の使用等について考慮すべき事項」と「II・発注先の事業者選定にあたって考慮すべき事項」の2部構成となっていることでしょう。特に第II部は私たち印刷事業者にとって、そのまま印刷受注を左右する事項であり、各項目を研究・理解し、対応への努力を進めることが何よりも重要と思われます。
 各項目は、「ガイドライン」「チェックリスト」「背景説明」からなり、チェックリストは発注者と印刷事業者のコミュニケーションが促進できるよう、具体的な配慮事項をリスト化したものです。以下、重要なポイントを解説していきます。

第I部「印刷物の使用等について考慮すべき事項」

 第I部では、「用紙」「インキ」「表面加工」「製本及びその他加工」「印刷物への表示」の5つのカテゴリーについて次のような基準を定めています(抜粋)。

【用紙】
●古紙を多く配合している
 古紙の利用は森林資源の保全につながることはもちろん、ゴミの減量化やパルプ化に要するエネルギーの低減など、さまざまな環境負荷を減らすことにつながります。古紙回収をより促進することと、回収された古紙を再生紙としてリサイクルすることはもはや当たり前のことと言えます。日本製紙連合会によれば、日本の古紙利用率は既に58%(2001年)まで向上し、世界最高水準に達しています。製紙産業では、新たな目標を設定し、2005年度までに古紙利用率を60%まで高めようと挑戦しています。
●白色度が低い
 紙をパルプ化する工程では、白色度を上げるために漂白剤や蛍光増白剤を使用します。白色度の低い製品を選ぶことは、薬品の使用削減とともに生産コストの削減にもつながります。発注側に対しては用途に応じて適切な白色度の紙を提案していくことが環境への配慮となります。
●白い紙と色紙を併用していない
 白色の古紙の中に色紙が混入すると、資源としての価値は低くなるため、白い紙と色紙の併用を避ける配慮が必要です。
【インキ】
●芳香族成分を含まない石油系溶剤を用いるとともに、植物油含有量を増やして石油系溶剤を削減したインキを使用すること
 石油系溶剤とは、炭化水素系の揮発性有機化合物(VOC)であり、他の物質と反応して光化学スモッグなどの大気汚染の一因となるものです。チェックリストでは、石油系溶剤のなかでも特に健康への悪影響がある「芳香族成分」を含まないアロマフリーインキ、また石油系溶剤を大豆油インキなど植物油で代替したインキ使用をすすめています。
【表面加工】
●表面加工(フィルム貼り、ニス引き)の必要性の有無を考慮すること
 表面加工には特に資源やエネルギーを要すため、単に見た目をよくするために加工をせず、その必要性を十分考慮するように謳っています。
【製本およびその他加工】
●製本に接着剤を使用する場合、リサイクルに支障がないものを使用すること
 古紙の再生工程において除去しやすい難細裂化HM(ホットメルト)接着剤などを推奨しています。難細裂化HMはまだコストがかかり、生産性にも影響があることから、業界をあげて解決すべき課題となっています。
【印刷物への表示】
●印刷物に用紙、表面加工、インキ、製本方法などについて情報を明記すること
 印刷物の仕様に関する表示は、環境に配慮する企業姿勢のアピールになるだけでなく、適切なリサイクルや処理を促す情報提供となることを謳っています。
 第I部の最後には「発注側の配慮事項」として、「初めから完全な原稿を入れることを心がけ、初回の校正で十分にチェックを行うことで、校正チェックの回数を減らす」「必要以上の過剰品質を要求して刷り直しを行わない」の2点をあげ、資源、エネルギーの消費抑制をうながすとともに、作業を効率アップできる内容となっています。

第II部「発注先の事業者選定にあたって考慮すべき事項」(抜粋)

 次に第II部は、発注側が印刷事業者に対して、環境マネジメントシステムへの取り組み、環境情報の積極的な公開などを求めるものです。特徴的なのは、このチェックリストがそのまま印刷事業者の回答シートを兼用していること。つまり、発注に際して環境に配慮している企業を評価し、取引企業として選定する貴重なデータとなるものです。シートには「下記の記載内容に誤りのないことを確認致します」という文言に加え、事業者名・責任者名・署名印入りで回答する形になっています。具体的内容は次の通りです。

【環境マネジメントシステム】
●組織的に環境保全に取り組むための環境マネジメントシステム(EMS)があること
 EMSは、国際的に認知された規格としては環境ISO(ISO14001)があり、他に簡易的な手法を用いた環境省の「環境活動評価プログラム」や、地域のプログラムがあります。チェックリストでは、EMSの実施段階や名称が確認できるようにしています。
【環境への取り組み内容】
●製版、刷版工程のデジタル化(DTP化、CTP化等)に努めていること
 デジタル化により、製版・刷版で使用する資材や薬剤の使用量を削減できることを説明しています。
●印刷時に揮発するVOCを大気中に放出しないよう、適切な管理及び処理を行っていること
 湿し水にイソプロピルアルコールを使用しない、或いは低濃度で管理しているかをチェック。さらにオフ輪印刷での排ガス処理装置の有無を挙げています。
●環境に配慮した印刷物の作成について発注者にアドバイスできること
 用紙やインキの選定、表面加工や製本の方法等の環境配慮に関する知識を確認しています。発注者が環境に配慮した印刷物の仕様を決めるためには、受注側が必要な知識をもってアドバイスできることが肝要です。
●廃棄物の発生抑制、リサイクル、適正処理に取り組んでいること
 損紙等の再利用やリサイクル、インキ容器・包装資材のリサイクル状況をチェック。他の項目として自由記載欄も設けています。

「オフセット印刷サービス」発注ガイドライン
第II部「発注先の事業者選定にあたって考慮すべき事項」(抜粋)
以下のような項目に回答して発注先に提出する

1. 環境マネジメントシステム
ガイドライン/チェックリスト
組織的に環境改善に取り組むための環境マネジメントシステムがあること
 〈レベル1〉
□環境方針を持っている
□環境対応の責任体制を明確に定めている
□従業員の環境意識を高める教育を行っている
□関係する環境法規制を把握している
 〈レベル2〉
□自社の環境負荷を把握し、計画や目標を立ててその削減に努めている
□環境マネジメントシステムと取り組み成果を定期的に検証して次の活動に生かしている
□業界の自主基準に沿って取り組みを進めている

2. 環境への取り組み内容
□製版、刷版工程のデジタル化(DTP化、CTP化等)に努めている
□印刷時の湿し水にイソプロピルアルコール(IPA)を使用しないか、溶液濃度を5%以下に管理している
□用紙の取りムダが少ない仕様や用紙の選定、インキの選定、表面加工や製本の方法等、環境配慮について発注者にアドバイスできる
廃棄物の発生抑制、リサイクル、適正処理に取り組んでいること
□損紙等の再利用やリサイクルの徹底
□インキ容器のリサイクルの推進
□包装資材(ワンプ(用紙包装)、製版資材包装、PPバンド等)のリサイクルの推進
□その他(           )
□グリーン購入に取り組む方針を持っている
 〈次の分野のグリーン購入に取り組んでいる〉
□紙類(会社案内、名刺、見積書、コピー用紙等)
□オフィス用品等(文具・事務用品、オフィス家具、OA機器、パソコン等)
□業務用自動車(低排出ガス車や低燃費の車等)
□再生材を用いた資材や、廃棄物の少ない資材等
□その他(           ) 


グリーン購入商品総合案内サイト  以上、GPNの「オフセット印刷サービス」発注ガイドラインを概観してきました。私たちとしては、一つひとつの項目をさらに掘り下げて、自社なりの研究を進めること、そして発注者と常にコミュニケーションを取りながら、取り組みの優先順位を充分吟味して進めていくことが大切になってくるでしょう。
 またGPNでは、運営する3つの情報提供システムを整理して、グリーン購入商品総合案内サイトとして、インターネット上で情報提供しています。情報提供を希望する事業者はそれぞれに該当する製品・サービスの情報が登録可能です。グリーン購入に取り組む個人や企業、行政機関にとって、詳細かつ最新の情報源になります。

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