印刷用紙の伸縮特性

感圧紙,感熱紙や一般紙で比較的多い品質トラブルは「伸縮性」関係および「紙くせ」関係です。
ロールなら「巻くせ」もありますが、ここでは紙が持つ含水分(環境湿度)からの影響関係について解説します。

・紙の伸縮は、単に紙の伸び,縮み問題だけではなく、いわゆる「紙くせ」にも係わります。
・伸縮のトラブルとしては、見当不良,ピッチ不良などです。
・「紙くせ」は、カール,波うち,中たるみなどで、紙シワ,ロール印刷での蛇行,シート印刷での給排紙不良などの原因となります。
・印刷時のテンション(機械的)要因もあります。

1.伸縮は紙が含む水分の変化(回りの湿度の変化)の影響の現れでありそれは紙の主原料の木材繊維が
水分を吸収〜排出することで発生します。
2.吸(脱)水で繊維が受ける影響形態は膨張(収縮)であり、伸長(縮小)ではありません。
このことは紙の伸縮は縦(繊維の目方向)より横(目に直角方向)が大きいことの理由である→T/Y=1/3
比喩として<繊維に水分は太るけれども背は伸びない>
3.印刷用紙の適正平衡水分は5〜7%である(環境湿度の1/10が平衡水分)このことはRH50〜70%が見当不良.しわ.などない
適正作業環境といえることになります。


<参考>

1.平衡水分について

紙をある一定の湿度の場所にしばらく置き紙のもつ水分が一定(変化しない)になる時(実際にはその場所に2〜4時間放置後)の水分値。
通常は紙の水分A%という時は平衡水分状態を指します。

要因

(1)その場所の湿度
水分5%の紙がRH50%の場所にある時は水分値は変化しません。
これをRH70%の(時間も関係)場所に置いた時は水分7%となり、それがその状態での平衡水分となります。
補足:紙としてはそれだけ伸びる(膨張)ことになります。

(2)その場所の温度
20℃.RH60%(水分6%の状態)の場所で温度を約 5℃あげるとRHは約40% に変化(RHとしてみる)します。
このことは水分も4%に変化し紙としてはそれだけ縮む(収縮)ことになる訳です。

(3)原材料組成
紙の種類によって水分値が決まります。木材繊維分が多いほど高くなります。

2.紙質構成について

  ・緊密な紙(普通紙仕立てで密度の高い紙)ほど伸縮(紙くせ/カール)が大きくなります。(フカフカな紙はカール し難い)
・緊密な紙は紙層間が詰まっており、膨張(収縮)の影響を直接受けるため、伸縮が大きくなる訳です。
・フカフカな紙(紙層間に空隙がある)の場合は、そこで膨張(収縮)の影響を緩衝する為にカールが出難い訳です。

 

3.紙くせについて

[カール]

・カールは紙が反った状態をいいます。巻くせと紙の表裏面の伸縮差(吸脱湿量時間差)が原因です。
・カールには軸があり、巻くせ(巻カール)軸は目と直角、伸縮によるカール 軸は目と並行となります。
・表裏面の伸縮差によるカールは片面塗工紙で代表される(紙面の組成が異なることから吸脱湿差が生じる)
塗工面を内側にしてのカールとなることが多い(原紙面が吸湿で伸びが大)。
・この他に印刷で発生する印刷後カール,くわえ尻カールなどがあり、これらは印刷作業原因が主です。

[波うち]

・紙を積上げた時、本来平らのものが波状となり、1枚取り出しても同じくせが残った状態をいいます。
・波うちは部分的な吸湿伸びにより生じるものです。(紙の周辺部だけからの吸湿となります)
・従って、これは印刷準備中の作業環境が要因となります。

 

[中たるみ]

・紙の中央部が吸湿伸びの状態です。(波うちと逆現象で紙の周辺部からの脱湿が原因)
・(タイトエッジ) トラブルとしての「印刷しわ」が、くわえ尻までは発生しないことで「波うち」と区別できます。


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