紙の「表」「裏」について

一般紙の両面印刷で印刷インキの着肉性の良し,悪しに関連して紙の「表」「裏」について解説します。
・通常の片面印刷では紙の「表」に印刷するのが常識です。
・印刷前の包装紙にも「表」(この面印刷)の注意書きがあります。
・一般紙の中で特に「表」「裏」に気を使う紙は新聞用紙です。
・この「表」「裏」に気を使うこと避けるための洋紙が両面塗工紙です。

1.一般的に「表」は「裏」と比べて平滑でありインキの着肉性が良いことが知られています。
・紙の平滑性に表裏差を生ずることは抄紙の段階で「微細繊維」や「填料=クレー」が抄紙のワイヤー(金網)の目から
抜けだすこと(流出)による影響度の差がその原因です。
・この影響は、ワイヤーの上側に当たる「表」では少なく、このため緊密質(平滑性高)となります。
・「裏」は影響が多く、このため多孔質(平滑性低)になる訳で。
2.最近では2枚のワイヤーを使用する抄紙方法が台頭しており、表裏差は少なくなっています。
3.微塗工紙は微塗工することにより「表」「裏」差を改善している普及タイプの紙と言えます。

 

<参考>

1.紙の「表」は「微細繊維」や「填料」の他に「サイズ剤」も多く残っているため、万年筆とか水性筆記具の使用適性も良い訳です。
「裏」はこの特性が下がるので万年筆は滲みがでやすい訳です。
(万年筆を多用していた時のノート用紙などでは強サイズ剤処理によりこの適性を維持させていました)

2.「裏」は多孔質(ポーラス)なため印刷インキが浸透しやすく、印刷濃度は高くなる傾向にあります。

3. 湿度による紙の挙動(伸縮)は多孔質なほど高くなります。(「裏」の挙動が「表」より大きい)
・紙が置かれている場所の湿度が高くなると「裏」の繊維が伸びて紙の表側にカールします。(吸湿は表)
・紙が置かれている場所の湿度が低くなると「裏」の繊維が縮んで紙の裏側にカールする(脱湿は裏)
・上記の如く、紙の「表」「裏」の差が大きい程カールしやすくなる訳です。

4. 紙の「表」「裏」の簡便な見分け方
[直観察法]
・対象の紙を水平にして目の位置を低くして観察する。(紙を2枚使用して「表」「裏」同時に観察)
・ワイヤーによる跡(長方形など)が見える面が「裏」となります。
[擦り跡観察法]
・対象の紙の両面に1円玉側面を擦り付けます。
・「表」はクレーがあるので、擦り跡が濃くなります。

5.和紙の場合「表」は簀の子(ワイヤーに相当)に接した面となります。
・和紙の繊維は長く、填料無添加のため目から抜けだすものはなく、簀の子に沿って平滑になります。


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