1)アマチュア無線の楽しみ方いろいろ
アマチュア無線とは、公共の電波を使って、音声やモールス信号で発信・受信を楽しむコミュニケーションツールです。日本では約110万局、海外を合わせると約270万局ものアマチュア無線局が存在します。電波を送受信するためのアンテナと、電波を音声に変換し、音声を電波に変換するための無線機(トランシーバー)の2つがそろえば、そこはもう無線室。仲間や見知らぬ相手と会話を楽しんだり、ラジオ局気分で不特定多数の人に自分の声を発信したり、さらには海外の人と会話したりすることもできます。
とはいえ、特定の相手との会話だけなら携帯電話で十分と感じるかもしれませんが、そこは侮るべからず。アマチュア無線には、さまざまな楽しみ方があります。ここでは、その一部をご紹介します。
●世界各地の交信コンテストに挑戦
アマチュア無線のコンテストでは、一定時間内にどれだけたくさんの無線局と交信できるかを競い合います。日本アマチュア無線連盟など日本のアマチュア無線の団体が開催するコンテストから、海外の団体主催のものまで、多種多様なコンテストが週末を中心に多数開催されています。世界のコンテストに参加できるのも、アマチュア無線ならではといえます。いきなり上位入賞を目指す必要はありませんから、各地の愛好家と交信するチャンスぐらいの感覚で、どんどん参加するのがおすすめです。
●アウトドアで楽しむARDFに参加
ARDFとは"Amateur Radio Direction Finding"の略称で、アマチュア無線の電波を使った方向探査競技のことです。毎年10月に開催される「全日本ARDF競技大会」が日本最大規模の大会で、他にも小さな競技会は全国各地で行われています。野山にセットされた無線送信機を、そこから一定のルールで発射される電波を頼りに、受信機で探査して見つけ出します。電波を使ったオリエンテーリングといった感じで、知力と体力が試される究極の大人の遊びです。
●QSLカードをコレクションする
QSLカードは、交信した相手に送るはがきサイズの交信記録です。イラストや美しい写真、版画によるものなど、発行者の個性や土地柄が感じられる工夫をこらしたものも多く、収集しがいがあります。QSLカードを送ることは世界共通の慣例なので、違う国の人と交信して、ユニークなカードを集めて楽しむ愛好家もいます。
2)まずは4級の資格を取得
アマチュア無線を実際に始めるには、機材を手に入れる前に、まず「アマチュア無線技士」の資格を取得する必要があります。無線技士の国家試験に合格すると、晴れてアマチュア無線を始められます。アマチュア無線技士は、第4級から始まり、第3級、第2級と進み、最上位が第1級です。
難易度としては、4級であれば、小学生から高齢者まで誰でも挑戦できて合格も可能なレベル。4級と3級については、日本アマチュア無線振興協会が主催する講習会を修了することでも、資格を取得できます。講習会であれば2〜4日間ほどで修了できる内容といえます。講習会の場合は費用が掛かるものの、その分、合格率が高く、集中して学びたい忙しい人におすすめです。
級が上になればなるほど、より交信能力の高い無線機を操作する資格が得られます。
 
3)必要な機材は無線機とアンテナだけ
資格を取得できたら、次は無線局の開設に関する申請書を地域の総合通信局(総務省の地方支分局)へ提出しましょう。申請手続きが完了すると、個々の無線局に割り当てられる識別信号「コールサイン」が付与されます。これで、アマチュア無線を始める準備は完了。
次に、いよいよ機材です。無線機(トランシーバー)には固定機、車載機、ハンディーサイズの携帯機があります。新品でも10万円台から購入でき、東京の秋葉原に代表される電気街にある専門店などでは、より廉価な中古品も販売されています。また、アンテナもアマチュア無線専用のものがあり、簡単に組み立てて設置できるように設計されています。アンテナは数千円から購入できます。
いきなり高価な機材をそろえなくても、携帯機とベランダの手すりなどにも付けられる小型アンテナでも、十分に楽しめます。現在は、無線機もアンテナもインターネットで簡単に買えますが、最初は専門店でお店の人に相談しながら選ぶのが一番です。
アマチュア無線は、交信する手段という単純な目的を超えて、実にさまざまな楽しみ方があります。また、QSLカードやコンテストを通じて世界各地にいるアマチュア無線の愛好家と出会う機会にも恵まれていて、世界共通の大人の趣味といえます。
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