[1]雑穀とは
現代の日本では白米が主食ですが、誰でも白米を食べられるようになったのは昭和に入ってからです。明治時代でも富裕層や都市部を除けば、収穫が限られた白米は、晴れの日の食事でした。それ以前、人口の大部分を占めた農民の主食は雑穀や麦であり、おかゆなどにして食べられていました。
雑穀とは、米と大麦、小麦をのぞいた穀物の総称です。具体的には、粟、きび、アマランサス、そばなどをいいます。最近では、白米に比べて食物繊維やミネラルなど栄養素を豊富に含むものが多いため、栄養食品、ダイエット食品として注目されています。代表的な雑穀について簡単にご紹介しましょう。
粟(あわ)
原産地はアフガニスタンと考えられていて、イネの渡来よりも早く、縄文時代には栽培されていました。粟のもちもちとした食感を生かした粟餅や粟麩などに加工されるほか、あめの原料でもあり、お菓子作りに欠かせない雑穀です。カルシウムが白米の約3倍、鉄分は約6倍、食物繊維が約7倍と、貧血や便秘に悩む人によいといわれています。もち種とうるち種があり、もち種のほうが味がよいとされていて、現在はもち種のほうが一般的です。
きび
原産地はインドと推定されていて、日本への渡来は粟よりも遅く、弥生時代に入ってからと考えられています。「桃太郎」のきび団子の原材料で、やや大きめの粒を細かく挽き、お団子にします。カルシウムは白米の約2倍、鉄分と食物繊維は約3倍と、栄養豊富です。
はと麦
熱帯アジア原産で、古くから日本でも栽培されていましたが、渡来時期は分かっていません。鳩の大好物ということから、はと麦と名付けられたといわれています。白米などに比べると、タンパク質と脂質の割合が多く、ビタミンB1やカルシウムなどミネラルもバランスよく含まれています。鎮痛や利尿、強壮といった薬効があるとされ、古くから漢方薬の一つとして用いられてきました。
アマランサス
原産地は南米で、ケイトウのような色鮮やかな赤い花をつけます。日本には江戸時代に入ってきましたが、食用よりも、主に観賞目的に栽培されてきました。白米と比べて、カルシウムが30倍以上、鉄分が10倍以上も含まれていて、さらに他の穀物類には少ない必須アミノ酸も含まれています。その高い栄養価から、NASAが「21世紀の栄養食品」と評価するほどで、日本でも優れた機能性食材として注目が集まっています。粒が小さく、プチプチとした食感で、ほかの雑穀に比べえぐみが少なく食べやすいのが特徴です。
[2]雑穀のおいしい食べ方
雑穀を手軽においしく食べるには、やはり白米に混ぜて雑穀ご飯にするのが一番です。雑穀は灰汁(あく)が強いものが多いので、しっかり灰汁抜きするようにしましょう。具体的には、お米を研ぐのと同じ要領で洗ってごみを取り除き、一晩水につけておきます。炊く際には、塩をひとつまみ入れると、雑穀のえぐみが抑えられ、独特の風味が引き立ちます。最近は白米にそのまま混ぜてすぐに炊飯できるパックもあり、とても便利です。ほかにも、ホームベーカリーで小麦粉と同じ要領でパンが焼ける雑穀のミックス粉なども市販されています。白米や小麦粉とブレンドすれば、栄養価がぐっと高まり、いつもとはひと味違った風味を楽しむこともできます。
最後に、注目のアマランサスを使ったふりかけの作り方をご紹介します。日本雑穀協会が行う雑穀レシピコンテストで紹介されたレシピです。ご飯だけでなく、冷ややっこやサラダにかけてもおいしく食べられます。アマランサスの高い栄養価を手軽に摂取できるうれしいふりかけです。
【材料】 ※作りやすい分量
●アマランサス/50g
●生姜(みじん切り)/25g
●生姜(薄切り)/5枚ほど
●塩/ひとつまみ
●ごま油/適量
●酒/大さじ2と1/2
●麦味噌/大さじ1と2/3ほど
【作り方】
1)アマランサスは洗って目の細かいざるで水を切ります。
2)鍋に多めの水と生姜薄切りを入れて沸かします。沸騰したら塩とアマランサスを入れ、7〜8分ほどプチっという音がするまでゆでます。生姜を先に取り出してから、目の細かいざるにあけて水を切ります。
3)フライパンに太白(たいはく)ごま油と生姜みじん切りを入れて炒め、香りが出たらゆでたアマランサスを加えます。ごま油が全体にいきわたったら、酒をふりかけて混ぜ、最後に麦味噌を加えます。
4)水分をとばすように炒め、ぱらりとしたら火を止めます。
いちから調理しようとするとやや手間のかかる雑穀ですが、今は下準備なしに調理できるものがたくさん市販されていますので、白米や小麦粉と同じ感覚で料理に活用できます。古くから貴重なタンパク源やミネラル源として食べられてきた雑穀を、毎日の食生活に積極的に取り入れていきましょう。
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