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第62回 日本の文化と伝統(11) 茶道
ロハスなはなし
▲作法にとらわれず、自宅で自由にお茶をたてるのも一興です。
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▲千利休像(1522−1591)。大阪・堺の商家に生まれ、武野紹鴎に師事し、茶人として織田信長、豊臣秀吉に仕えました
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▲お茶をたてるための基本的な道具。右からお茶を入れる茶入れ、茶杓、茶筅、茶碗。茶筅の下に敷かれている小さな白い布巾が茶巾です
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▲薄茶。泡が立つようにたてます。干菓子を合わせます
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▲濃茶。本来、生菓子は濃茶用の茶菓子として供されます
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▲広間の設え。広間も小間も、床の間に軸と季節の花を飾ってもてなします
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▲野点の様子。基本的な道具と気の合う仲間がいれば、どこでも茶席になります
 
第62回
日本の文化と伝統(11) 茶道
2011/5/10
 

[1]茶道の歴史
 茶道とは、作法に沿ってお茶をたてて、振る舞う芸道のことです。「茶の湯」もほぼ同じ意味で使われます。
 茶道では抹茶を使いますが、お茶を粉末にして飲む方法は、13世紀の初めの鎌倉時代に、栄西法師によって禅宗の教えと共に中国から持ち込まれたといいます。抹茶という飲み方が紹介されたことによって喫茶は各地に広がり、抹茶を飲むことは禅僧の生活規範の一つに定着していきました。
 その一方で、貴族や武家の間でも、中国からの舶来品の茶道具などを鑑賞しながら抹茶を楽しむスタイルが生まれ、鎌倉末期から南北朝時代にかけては連歌や香会(こうえ)と並ぶ流行の遊びだったといいます。さらに室町時代に入ると、武士たちを中心に茶葉の産地を当てる「闘茶(とうちゃ)」というゲーム感覚の喫茶様式も生み出されました。
 そのような風潮のなかで、室町時代の僧侶の村田珠光は、より精神性を追求した「わび茶」を始めます。華やかな唐物の茶道具ではなく、土の風合いが残る粗相(粗末なこと)な日本の焼物などに価値を見いだし、新たな美意識を創出しました。その後、その心を受け継いだ武野紹鴎(たけのじょうおう)、その弟子である千利休によって点前(てまえ)や茶室の設えなど流儀が整えられ、「わび茶」が確立されました。
 豊臣秀吉に命じられて利休が自刃した後、「わび茶」の流儀は孫の千宗旦(せんのそうたん)、さらに息子たちによって受け継がれます。江戸時代前期、宗旦の3人の息子たちはそれぞれの流派をたて、 現在の表千家(不審庵)、裏千家(今日庵)、武者小路千家(官休庵)の三千家に分かれました。ほかにも、備中松山藩(のち近江小室藩)の大名、小堀遠州による遠州流など、多種多様な流派も生まれ、現在まで茶道は伝統的な芸道の一つとして受け継がれてきました。

[2]抹茶のたて方と種類
 茶道には細かな作法がありますが、抹茶をたてること自体は難しくはありません。大ざっぱにいうと、茶碗をお湯で温めて捨て、そこに抹茶を茶杓(ちゃしゃく)ですくって入れ、70〜80℃程度のお湯を注ぎ、茶筅(ちゃせん)で撹拌するだけです。ただ、茶道の正式なお点前となると、袱紗(ふくさ)で茶杓や茶入れを拭き清めたり、茶巾(ちゃきん)で茶碗を拭いたり、決められた流れがあります。道具の扱い方やたて方など、流派によっても異なります。
 また、抹茶は茶葉の配合によって二つに分けられます。一般的に緑色が濃く、渋みや苦みが弱く甘みの強い茶葉で仕上げたものを濃茶(こいちゃ)、逆に苦みや渋みの強いものを薄茶(うすちゃ)といいます。茶葉の特徴を生かすため、それぞれたて方も異なります。
 薄茶は、やや強い苦みや渋みをやわらげるため、茶筅で手早く撹拌し、表面に細かな泡が立つようにたてます。
 一方、濃茶はたくさんの抹茶を少しのお湯で練るようにして茶筅で撹拌し、濃厚な色とまろやかな味わいを楽しみます。茶席での振る舞われ方も異なり、薄茶は一人に一碗ずつ出されますが、濃茶は一つの茶碗に人数分をまとめてたてて、茶碗を回して、一人ずつ飲んでいきます。濃茶は格式の高いもてなしで、千利休が始めたものと伝えられています。

[3]茶室の設えを楽しむ
 茶道において、茶室の設えも楽しみの一つです。茶室は、四畳半以下を小間、四畳半以上を広間といいます。広間では飾り棚や台を配しますが、小間はそのようなものは置かず、可能な限り飾りを排除します。千利休が目指した「わび茶」の世界をより具現化した設えは、小間のほうになります。
 また、茶道は少し敷居が高いと考えている人でも、気軽にお茶を楽しめるのが野点(のだて)です。野点は、春や秋の季節のよいときに、自然を茶室に見立て、お茶をたてて楽しむことです。野点には決まった道具や作法がないため、逆に茶人にとって茶席を用意するのがとても難しいとされています。けれどもあまり難しく考えなければ、ハイキングやトレッキングの合間に誰でも気軽に楽しめる方法でもあります。お茶は、茶碗と茶杓、茶入れ、茶筅、さらにお湯さえあれば、楽しむことができます。美しい新緑を眺めながら、家族や友人とお茶のおいしさと楽しさを体験してみてください。

 
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