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第60回 日本の文化と伝統(9)水戸の提灯(ちょうちん)
ロハスなはなし
▲夜、参拝に訪れる人々を優しく導く提灯の明かり
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▲高張提灯。高いところから棒や紐で吊り下げます。祭礼の目印などに使用
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▲上段奥が丸型提灯、下段が桶型提灯。看板や外灯としてひさしなどに吊り下げて使用
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▲弓張提灯。持ち手のついた携帯用の提灯のこと。持ち手を外して小さく畳める
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▲鈴木茂兵衛商店の屋号からネーミングされたSUZUMO CHOCHIN。サイズもさまざまで、小さなものは脇にすっぽり納まり、深夜にフットライト代わりに持ち歩くのにも便利
第60回
日本の文化と伝統(9) 水戸の提灯(ちょうちん)
2011/3/10
 

[1]提灯の歴史とさまざまな形
 提灯は、その原型が室町時代の末期までには生まれていたと考えられています。折り畳むことのできない中国式の提灯「灯籠(タンロン)」が中国から日本に伝わったのがそのきっかけだったのではないかといわれています。室町時代に使われていた提灯の原型は「かご提灯」と呼ばれるもので、籠に持ち手をつけた簡素なものでした。現在の提灯のように、竹ひごで成形して表面に和紙を貼り、"折り畳む"という日本独自の携帯性と機能性を実現した構造は、安土桃山時代に確立されたといわれます。
 日常の道具である提灯はその土地ごとに職人がいて、専門店があるのが一般的でした。大量に生産する産地としては、岐阜、福岡県の八女、茨城県の水戸が日本三大産地です。
 鈴木茂兵衛商店は茨城県水戸市に工場を構える提灯製造問屋で、現店主の鈴木隆太郎さんで七代目。江戸時代から続く伝統産業を今も大切に守ります。「水戸の近くには西ノ内という和紙の産地がありました。西ノ内和紙はとても丈夫な紙で、水につけて絞っても破れないほどです。そのため、江戸の商家では掛け帳に西ノ内和紙がよく使われていました」と鈴木さんは言います。水戸周辺では良質な竹も十分に採れたため、提灯を作る条件が整っていました。江戸時代には、内職として製造に携わる職人を束ねて大量生産を行う組織ができあがり、大消費地である江戸の需要に応えていました。現在、鈴木さんは古い産地の歴史を今に伝えながら、現代的なデザインを取り入れた提灯を作るなど、多種多様な提灯作りに挑戦しています。

[2]提灯ができるまで
 提灯の製造方法は大きく二つに分かれます。一つが1本の長い竹ひごを螺旋状に巻き上げて外枠を作る方法、もう一つが竹ひごで輪を作り、それを糸で留めて成形する方法です。水戸提灯は古くは後者の手法で作られてきました。これは螺旋状に外枠を作るのに比べてより手間のかかるものです。ここでは、輪を作って組み立てる工程をご紹介します。
(以下8点写真提供 鈴木茂兵衛商店)

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[3]心と心をつなぐ"明かりのコミュニケーション"
 提灯には日本人らしい知恵と技術が詰まっています。「提灯の本質は畳めること。コンパクトになるので着物のたもとにも入り、携帯性が抜群です。また、外側の袋が破れたら、袋だけ新しいものと替えればまた新品同様に使えます」と、鈴木さんはその魅力について語ります。
 そこで、提灯をもっと楽しんでもらおうと生まれたのがオリジナルの「SUZUMO CHOCHIN」です。鈴木さんの幼なじみであるビジュアルアーティストのミック*イタヤさんがデザインし、鈴木茂兵衛商店が手作業で製作するデザイン提灯です。光源はLEDですが、ろうそくのような橙色と揺らめきが再現されています。音センサーが埋め込まれていて、「パチンッ!!」と手を叩くと、その音でスイッチが入ったり、切れたりする楽しいアイデアが盛り込まれています。
 「例えばテーブルに提灯を置いて、それを挟んで相手と話すと、いつもは言い出せないことも話せるような雰囲気に変わります。和紙越しの和らいだ光が、心と心を密にしてくれるのでしょうね」と鈴木さんは言います。家族と、友人と、恋人と、提灯はコミュニケーションがより深まるように、仲立ちをしてくるようです。

<参考>
取材協力:鈴木茂兵衛商店
→http://www.suzumo.com/
 
   
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