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第59回 日本の文化と伝統(8)囲炉裏のある暮らし
ロハスなはなし
▲木炭をくべた囲炉裏。ぬくもりのある炎は人々の心を癒やしてくれる
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▲岐阜県「白川郷」の古民家に今も残る昔ながらの囲炉裏(写真提供http://k-kabegami.com/
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▲茶室に設えられた炉。茶釜をのせて使う
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▲囲炉裏の上に備えられた火棚。すすがこびりついている(写真提供 囲炉裏本舗ちろり)
第59回
日本の文化と伝統(8) 囲炉裏のある暮らし
2011/2/10
 

[1]日本の暮らしに欠かせなかった囲炉裏
 囲炉裏の歴史は竪穴住居の時代にまでさかのぼれ、住居跡では囲炉裏の跡も発見されています。そもそも竪穴住居とは、縄文時代から主に平安時代まで建てられた住居様式で、地面を数十センチほど掘り下げて床にする半地下式の住居です。住居の中央に暖をとるための炉を配置し、屋根に開けた穴から煙を排出しました。竪穴住居の炉は、床面に石で囲いを作りそこに薪をくべるという、極めて原始的なものでした。
 その後、民家の様式が掘立柱建物、さらに総柱型建物と変化していく中で、同様に囲炉裏の様式も変わっていきました。室町末期から江戸時代にかけて発展した江戸や京都、大阪などの都市部の町家を除き、農村部では近代まで囲炉裏で煮炊きをし、そこに家族が集まって食事をし、暖を取るという暮らし方が続けられてきました。

[2]基本的な囲炉裏のつくり
 囲炉裏は家族の団らんだけでなく、客人をもてなす場所でもありました。そのような場合の囲炉裏は灰を美しく整え、やかんを置いて茶の用意をしました。その究極の様式が茶室の炉といえます。いずれにしても、囲炉裏端は暖かな火を囲んで人々が語らうコミュニケーションの場所だったのです。
 囲炉裏の基本的な構造は、床を四角に切って開き、そこに木製の枠組み(炉縁)を作って灰で埋めます。そこに薪や木炭といった燃料を入れて、火を起こします。天井には、木を格子状に組んだ「火棚」(ひだな)を吊るしました。これは、万が一火の粉が高く舞い上がったとしても、火が天井に燃え移るのを防ぐためです。さらに、火棚の真上に当たる天井板は少し隙間を空けて張られている場合が多く、こうすることで熱が家全体に広がり、煙は天井裏を抜けて排出されるようになっていました。同時に、薪を焚くとすすも天井裏まで広がります。家中がすすだらけになるという欠点もありますが、その一方ですすは天然の防虫剤の役割を果たしていました。囲炉裏は日本の住環境に適した優れた設備であるといえます。

[3]さまざまな囲炉裏の形
 囲炉裏の様式はいくつかに分けられますので、代表的なものをご紹介します。

 
●畳座敷に作られた囲炉裏
畳座敷に囲炉裏を設ける場合には、すすが出る薪ではなく高価な木炭が燃料にされました。商家など経済的に豊かな人物の家屋で多く見ることができます。

岐阜県「吉島家」の囲炉裏(写真提供 囲炉裏本舗ちろり)
 
●板の間に作られた囲炉裏
板の間を切って作られた囲炉裏。豪農の家などでも用いられた一般的な様式。燃料は、薪も木炭も使えます。
福島県「旧外島家」。村の重役を務めた郷頭(ごうがしら)の囲炉裏。手前が上座の囲炉裏、奥に見えるのが下座の囲炉裏(写真提供 囲炉裏本舗ちろり)
 
●内側に腰を掛けられる囲炉裏
寒い東北地方独特の様式。囲炉裏を二段に掘り下げ、縁に座って足下が直接火に当たるように工夫されています。囲炉裏が土間に設けてあることもあります。

岩手県南部地方の伝統的な家屋「曲がり家」に残る囲炉裏(写真提供 囲炉裏本舗ちろり)
 
●現代の囲炉裏
日本の伝統的な暮らし方が見直されつつある現代では、住宅に囲炉裏を取り入れようと新しいデザインが考えられています。テーブルタイプのものなど、現代住宅のリビングにもよく合う囲炉裏が生み出されています。

ダイニングにも置けるテーブルタイプの囲炉裏(写真提供 囲炉裏本舗ちろり)
 

 縄文の時代から囲炉裏は家族が集う空間を創出してきました。もしかすると、核家族化が進んだ現代にこそ、必要な暮らしの道具といえるのかもしれません。囲炉裏は、人と人を結びつける貴重なコミュニケーションの場所なのです。

 
<参考ホームページ>
囲炉裏本舗ちろり
→http://7rinhonpo.jp/
 
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