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第50回 健やかな日常生活のために 心地よく眠る
ロハスなはなし
▲昔から「寝る子は育つ」といわれています。よく眠ることは、子どもだけではなく、大人にとっても元気に過ごすために大切です。
ロハスなはなし
▲ヒトの睡眠の時間経過図[アレクサンダー・A・ボルベイ.睡眠の謎,どうぶつ社,1985 を改変] 日本睡眠学会公式ホームページより引用
(引用文献:井上昌次郎: 『6. 高等動物の2種類の睡眠―ノンレム睡眠とレム睡眠. 睡眠科学の基礎』 日本睡眠学会ホームページ http://jssr.jp/kiso/
kagaku/kagaku06.html
ロハスなはなし
▲寝室の香りには、心を鎮めてくれるラベンダーなどがおすすめです。
ロハスなはなし
▲読書するときは一気に読み過ぎないようにして、ウトウトし始めたら、すぐに目を閉じるようにしましょう。
第50回
健やかな日常生活のために
心地よく眠る
2010/5/12
 

【1】心地よい睡眠のメカニズム
 ひと口に睡眠といっても、ヒトをはじめ哺乳類を中心とした高等動物の睡眠は、レム睡眠とノンレム睡眠の2種類があります。日本睡眠学会では、脳は目覚めている状態に近いレム睡眠を「ぐったり眠る」状態で、深い眠りであるノンレム睡眠を「ぐっすり眠る」状態と定義しています。ちなみに、レム睡眠はRapid Eye Movement(急速眼球運動)の頭文字を取ったもので、REM(レム)を伴う睡眠という意味の造語です。急速眼球運動とは、まぶたを閉じていても眼球はキョロキョロと動くことで、体は意識がないようにぐったりしているにもかかわらず、脳は覚醒に近い状態になっている眠りです。夢を見ているのは、レム睡眠中が多いとされています。一方、ノンレム睡眠はレム睡眠ではない眠りという意味で、体も脳も休息できている安らかな睡眠といえます。
 ヒトにおけるノンレム睡眠には、浅いまどろみの状態からぐっすり熟睡している状態まで、脳波の違いによって、さらに4段階に分けられます。
 レム睡眠とノンレム睡眠の2種類の睡眠には、レム睡眠が大脳を活性化するのに対して、ノンレム睡眠は大脳を鎮静化するというまったく正反対の効果があります。健康な成人の睡眠では、レム睡眠とノンレム睡眠が組み合わさって90分という一単位をつくっていて、この単位が積み重なって、一夜の睡眠が構成されています。90分のうち前半にノンレム睡眠が、後半にレム睡眠が現われます。眠り始めて180分ぐらいまでは、前半のノンレム睡眠が90分の大半を占めますが、それを超えるとレム睡眠が占める割合が増えていきます。レム睡眠が増えるということは、徐々に脳が目覚める準備をしているということです。つまり、寝始めてから4.5時間、6時間、7.5時間後に起きるようにすると、すっきりと目覚められるといえます。睡眠は90分単位で取るとよいという通説は、ここからきています。

【2】ぐっすり眠れない人が増加中!? 現代人の睡眠事情
 2003年にドラッグストアなどでも購入できる睡眠改善薬が日本で初めて発売されて以来、現在はその種類も増え、睡眠改善薬はすっかり身近な医薬品になっているといえます。逆にいえば、ぐっすり眠れないという悩みを抱えている人が多いという現れでもあります。
 睡眠が不足すると、注意力や意欲が低下するといったことに加えて、免疫力が低下したり、女性ならば月経不順になったりといった問題も引き起こします。このように、心身を健やかに保つだけの睡眠が取れていない状態を「不眠」といいます。 
 では、なぜ不眠に陥ってしまうのでしょうか。その原因には、身体疾患、環境の変化や精神的なストレス、心の病気、薬やアルコールが挙げられます。特に、誰もが陥りやすいのが、ストレスによる不眠といえるでしょう。強いストレスを抱えると、分泌される副腎皮質刺激ホルモンには、睡眠を抑制する作用があるため、不眠になりやすくなるといえます。さらに、なかなか寝つけない焦りで、ますます寝つけなくなるという悪循環に陥ることもあります。
 また、近年、問題視されている「睡眠時無呼吸症候群」も不眠の原因のひとつです。これは、夜寝ている間、舌が喉の奥の方へ落ち込んでしまうことで呼吸が止まったり、止まりかけたりすることが繰り返し起こる症状をいいます。夜の睡眠が慢性的に妨げられてしまうため、朝すっきり目覚められず、1日中、強い眠気やだるさが抜けない状態が続きます。肥満体型の中年男性に多く、年齢が上がるにつれて増加する傾向にあります。呼吸が止まる以外にも、大きないびきをかくという特徴的な症状が現われますが、いずれも睡眠中であるため気づかない場合が多いというのが危険なところです。2003年には新幹線の運転士が「睡眠時無呼吸症候群」であることに気づかず、睡魔により事故を起こすという事件が発生し、これを契機に国土交通省が対応マニュアルを作成するなど、睡眠時無呼吸症候群は深刻な社会問題のひとつとして注目されるようになりました。十分に睡眠時間を取っているはずなのに、日中強い眠気があるという人は、一度、「睡眠外来」などの専門の医療機関に相談してみるとよいでしょう。

【3】心地よく眠るための工夫
 夜、脳の休息である良質な睡眠を取ることは、健康を保つ上でもっとも大切です。では、どのようにすれば心地よく眠ることができるのでしょうか。厚生労働省が2003年に発表した「健康づくりのための睡眠指針検討会報告書」をもとに、安眠につながるちょっとした生活習慣を下記に簡単にまとめてみました。すべて実践しようとすると、それがプレッシャーになってしまいますから、まずはできることからゆっくり行ってみましょう。

□ウオーキングなど軽い運動を習慣にする。
□夜食はごく軽く、その分、心と体を目覚めさせる朝食はしっかり食べる。
□最適な睡眠時間は人それぞれ。8時間にこだわらない。
□寝床でダラダラすると熟睡感が減る。目覚めたら、早めに起床する。
□年齢を重ねると睡眠時間は短くなるのは普通。心配しない。
□夕食後のカフェイン摂取は寝つきが悪くなる原因。寝る前のコーヒーや緑茶は控える。
□「睡眠薬代わりの寝酒」は、睡眠の質を悪くするので要注意。
□ぬるめのお風呂でゆっくり入浴して体を温めると、寝つきがよくなる。
□軽い読書・音楽・香り・ストレッチなど、自分なりのリラックス法で寝床へ。
□「眠ろう!眠ろう!」と意気込まず、眠くなったら寝床に入ろうぐらいの気持ちで。
□毎日、同じ時刻に起床するクセをつける。
□早起きが早寝に通じる。
□休日だからといって遅くまで寝床で過ごすと、翌日の朝がつらくなる。平日も休日も起床時間は同じに。
□短い昼寝は効果的。午後3時前の20〜30分がベスト。夕方以降に昼寝してしまうと、夜眠りにくくなるので注意。

 ここに挙げた安眠のための生活習慣はどれも難しいものではなく、ストレスを解消し、リラックスする時間をつくるための心がけです。「こうしなければならない」とは考えずに、自分が心地よくできるものから始めてみてはいかがでしょうか。

<参考ホームページ>
日本睡眠学会
→http://jssr.jp/index.html
厚生労働省「健康づくりのための睡眠指針検討会報告書」
→http://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/03/s0331-3.html
国土交通省「SAS対応マニュアル」
→http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha07/09/090601_.html
 
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