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2010年のキーワード 「生物多様性」について考える
ロハスなはなし
▲地球上にはさまざまな生き物が暮らしています。
ロハスなはなし
▲絶滅危惧Ⅱ類のひとつであり、日本の特別天然記念物であるタンチョウ。
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▲カナダ・モントリオールにある国連環境計画・生物多様性条約事務局の公式ホームページ。
http://www.cbd.int/
ロハスなはなし
▲「いきものみっけ」のホームページより。いろいろな人から報告された写真が蒐集されています。
http://www.mikke.go.jp/
第48回
2010年のキーワード
「生物多様性」について考える
2010/3/10
 

(1)生物多様性とは?
 私たち人類は、他の生物と一緒に大きな地球の生態系の枠組みの中で生きています。ところが、現代の地球上では、生物が暮らす環境の悪化や生態系そのものの破壊などによって、かつてないスピードで野生生物の種が絶滅しています。現在、絶滅する恐れのある野生生物は約1万7000種にも上ります(「2009年絶滅危惧種に関するIUCNレッドリスト」より)。このような状況から、「生物多様性」を大切に守ることが、現代を生きる私たち人類の重要な課題となっています。
 環境省生物多様性センターが運営するホームページでは、生物多様性を次のように解説しています。「地球上の生物は、約40億年に及ぶ進化の過程で多様に分化し、生息場所に応じた相互の関係を築きながら、地球の生命体を形づくっています。このような多様な生物の世界を『生物多様性』といいます」。
 そもそも「生物多様性」という用語が広く使われるようになったのは、1992年の地球サミット以降といえます。この地球サミットとは、ブラジルのリオデジャネイロで開催された「環境と開発に関する国際会議」のことで、環境問題について国際的な対応が本格的に議論されるようになっていく大きな節目となった重要な会議です。この会議では、世界各国が協力して未来のために地球環境を保全していくことをまとめた「リオ宣言」の採択とともに、「気候変動枠組条約」と「生物多様性条約」の署名が始められました。以来、環境問題について語られる際に、「気候変動」と「生物多様性」がキーワードとして使われるようになりました。
 この生物多様性条約には、2008年10月現在、日本はもちろんのこと、193の国と地域が締結しています。具体的には、「地球上の多様な生物と生息環境を保全すること」や「生物資源を持続可能な形で利用すること」などを定めています。生物多様性を語る上で、指針となる重要な条約といえます。

(2)COP10の開催に向けて
 2008年5月のドイツ・ボンに続き、今年10月11日から29日まで、愛知県の名古屋で、生物多様性条約第10回締約国会議が開催されます。世界各地から政府関係者やNGOの人々など約8000人が集まります。最も重要な議題は、2010年目標に向けてどのように努力がなされてきたかを検証し、それを受けて新たな目標を策定することにあります。ちなみに、「2010年目標」とは、2002年にオランダ・ハーグで開催されたCOP6で採択された「生物多様性の損失速度を2010年までに顕著に減少させる」という目標をいいます。
 また、COP10開催期間中は政治的な会合だけではなく、交流会やイベント、展示なども行われます。COP10会場に隣接する白鳥公園や熱田神宮公園などの白鳥地区では、誰でも自由に参加できる「生物多様性交流フェア」が開催されます。ここでは、国内外の政府や自治体、国際機関、NGO/NPOの人々が思い思いのブースを作り上げ、生物多様性への具体的な取り組みや保全のためのアイディアについて、分かりやすくアピールする予定です。
 このような大きな環境問題の国際会議が日本で行われることは、政治的な意義だけではなく、日本での生物多様性に対する人々の認知度を高めていく絶好の機会でもあります。そのため、COP10支援実行員会では、COP10開催に向けて、自然観察会や絵画・写真コンテストなどを企画し、会議ひいては生物多様性への関心が高まっていくように努力が続けられています。

(3)生物多様性の保護のためにできること
 CO2の削減量を設定するなど、数字的な目標を立てやすい気候変動に比べて、生物多様性の保護は私たち一人ひとりが具体的にどのような行動を起こしていけばよいのか、少しイメージしにくいかもしれません。しかし、誰もが簡単にできることはあります。外に出かけて公園や道々を観察して、たくさんの植物や虫、動物と出合う時間を作るだけでも、とても大きな一歩といえます。通学や通勤途中に少し歩みを緩めて街路樹に目を向けたり、休日に家族で公園に出かけ、新芽が顔を出し始めた樹木や土から芽を伸ばした春の花々、そこに集まる虫たちなど、たくさんの発見をすることができるはずです。
 そのようなちょっとした発見をより楽しいものにしてくれるプロジェクトに、環境省生物多様性センターが実施する「いきものみっけ」があります。このプロジェクトは市民参加によるいきもの調査で、身近に見られる生き物を観察することで、そのいきものがいつ・どんなところで見られるのか、また生き物と周りの環境の変化との関係を調べていくことを目的としたものです。「いきものみっけ」のサイトには、調査対象のモンシロチョウやヒキガエルの卵、ツクシなど身近な生き物たちの特徴や見つかる季節やエリア、環境の目安などの情報が、分かりやすくまとめられています。そして、調査対象種以外でも実際に生き物を見つけたら写真を撮って、サイトに報告することができます。サイトには、いろいろな人から寄せられた写真とコメントによる写真集ができあがっていきます。調査対象種であれば報告によっていきもの地図ができあがっていきます。このように、身近な自然を大切に観察し、そこに多様な生物の世界に気づくことが、生物の多様性を考えていくことにつながります。
 国連では、2010年を「国際生物多様性年」と定めています。地球の美しい環境を遠い未来にまで引き継いでいくために、私たち一人ひとりが生物多様性に目を向けることが大切です。


<参考>
生物多様性センター
→http://www.biodic.go.jp/
生物多様性フォーラム
→http://www.jf-biodiversity.org/contents/
日本自然保護協会
→http://www.nacsj.or.jp/katsudo/cbd/2009/10/cop10nacs-j2010.html
外務省 生物多様性条約
→http://www.mofa.go.jp/mofaj/GAIKO/kankyo/jyoyaku/bio.html
COP10支援実行委員会公式ウェブサイト
→http://www.cop10.jp/aichi-nagoya/
COP10ニュースvol.6
→http://www.cop10.jp/aichi-nagoya/committee/pdf/cop10news6.pdf
 
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