CLUB GC  
ロハスなはなし 第47回 古きよき暮らし 日本の生活道具
ロハスなはなし
▲ちゃぶ台や座布団も日本の古くからの住宅には最適な家具です。使わないときはしまえるため、狭い住空間を有効に活用できます。
ロハスなはなし
▲湯たんぽは、ほどよい温度でじんわりと体を芯から温めてくれます。
ロハスなはなし
▲風呂敷はものを大切にする精神も一緒に包みます。
ロハスなはなし
▲穏やかに揺れるろうそくの炎を眺める静かな時間は、とても贅沢なものかもしれません。
ロハスなはなし
▲お気に入りだったのに着られなくなった洋服などで作れば、愛着もひとしおです。
第47回
古きよき暮らし 日本の生活道具
2010/2/10
 

(1)湯たんぽ
 古くからの生活道具で、最近ブームになっているものの代表格が湯たんぽです。財団法人製品安全協会の推計によると、2004年度までは出荷個数が年間100万個程度だったにもかかわらず、2008年には約900万個にもなっています。
 そもそも湯たんぽの発祥の地は中国で、日本に伝わったのは室町時代といわれています。栃木県日光の輪王寺には江戸幕府五代将軍・徳川綱吉が使っていたとされる犬型の湯たんぽが伝わっています。青銅製の湯たんぽは、犬そのものの形で、決して使い勝手のよさそうなものではありませんが、左耳を外してお湯を入れる仕掛けになっていて、なかなかウイットに富んでいます。
 今は金属製やプラスチック製のものが一般的ですが、大正までは陶製が主流。まだ一般住宅に自動湯沸し器が付いていなかったころは、朝、湯たんぽのぬるま湯を洗面器にあけて顔を洗う習慣などもありました。
 ところで、最近の湯たんぽブームに伴って、湯たんぽが原因の低温やけどが増加中。心地よい温度でも、何時間も肌を当てていると低温やけどになってしまうことがあります。特に、寝るときに使うという場合は注意が必要です。ふとんが温まったら、湯たんぽは外に出すように心掛けてください。

(2)風呂敷
 湯たんぽとともに、その機能性から近年注目を集めているものに風呂敷もあります。四角いものから瓶や球体まで、いろいろな形のものを持ちやすいように包め、エコを重視する社会的な気運とともに、風呂敷の利便性が見直されています。
 日本において四角い布でものを包む文化の始まりは古く、正倉院に納める物品を包んだ収納専用包みなど、奈良時代には「包み」という呼称が、すでに使われていた形跡があります。さらに、「風呂敷」という名称が生まれた発端は、室町時代と考えられています。当時の風呂は蒸気浴だったため、床にむしろや布などを敷いて入りました。また、大人数で風呂に入る際には、自分の衣服を布に包み、風呂から上がった際にはその布の上で着替えをしました。このような習慣から、風呂敷の名称が生まれていったと考えられています。
 江戸時代になると、江戸の町人たちも入ることができる銭湯が生まれ、人々は銭湯で他人の荷物と混同しないように家紋や屋号を染め抜いた風呂敷に銭湯の道具を包んで通ったといいます。さらに、町人文化の発展とともに、風呂敷はものを包んで運ぶ道具として重宝されていくようになりました。
 引っ越しの家財からちょっとしたおつかいものまで、私たち日本人は何でも風呂敷に包んで持ち運びました。ちなみに、「包」という漢字の形は身ごもるさまを表わしていることから、布で包むという所作には、包まれる対象を大切に丁寧に扱うという意味合いも併せもっています。エコという観点からの利便性はもちろん、日本の精神的な文化性からも風呂敷を見つめ直し、活用してはいかがでしょうか。

(3)和ろうそく
 2003年から、「100万人のキャンドルナイト」と題して、冬至と夏至の夜8時から10時まで一斉に電気を消して、ろうそくの明かりだけで過ごそうという活動が行われています。このときは、東京タワーも消灯され、年々街の明かりが消える範囲が広がりつつあります。このようにろうそくの明かりが再考されるなかで、日本で古くから使われてきた和ろうそくにも注目が集まっています。
 そもそも和ろうそくとは、一般的に広葉樹のハゼの実から採取した蝋(ろう)で作ったろうそくを指します。江戸時代に広く普及し、石油由来のパラフィンを原料とする安価な洋ろうそくが広まる明治時代まで、生活の明かりとして欠かせないものでした。和ろうそくは、風がないところでも炎が優しく揺れ、ゆっくりと燃えていく様が特徴です。現在も、伝統的な手作業で1本1本丁寧に作られているものが多く、洋ろうそくに比べるとやや高価ではありますが、洋ろうそくでは味わえない和の風情があります。
 例えば、眠る前の数十分だけ和ろうそくの明かりで心をリッラクスさせる時間を持つなど、生活の中に取り入れてみましょう。

(4)布草履
 着古したTシャツや古くなったシーツなど、古い布を使って誰でも手軽に作れる布草履がひそかなブームになっています。出来上がった布草履を取り扱っている店が増えたのはもちろん、博物館や公民館などではその作り方を教える講座をよく見掛けるようになりました。
 布草履は古い布が再利用できるという利点はもちろん、健康面でもいいことがたくさんあります。布製の底がほどよいクッションとなって足裏のツボを心地よく刺激してくれます。また、布製のため、こまめに洗濯ができて、いつでも清潔なものを履けるのもよいところ。最近は作り方をまとめた専門の本も出ていますので、作り方を覚えて、お気に入りの一足を手づくりしてみるのも楽しいでしょう。

 今回ご紹介した4つの道具は、さまざまある生活道具の中のほんのひと握りです。現代のような技術がなかった時代に生まれた道具の中には、今の私たちの生活にも便利に使える道具はまだまだたくさんあります。それらの中からひとつでも多くの道具を取り入れてみるのはいかがでしょうか。


●参考文献
三越『日本を楽しむ年中行事』
大修館書店『新漢語林』
 
閉じる
ロハスって?
Copyright(c) FUJIFILM BUSINESS SUPPLY CO., LTD. All Rights Reserved.