(1)なぜ、間伐が必要なのか?
森には、大きく分けて天然林と人工林の2種類があります。前者は自然の力によって形成された森林のことで、さまざまな木や草が生育する美しい森林を形成しています。代表的なものでいえば、世界自然遺産にも登録されている白神山地のブナ林が当たります。現在、天然林は長い歴史の中で、日本の森全体の1/6(※1)までに減少しました。その理由は、太古の昔から日本人は生活に森林を利用してきたことに加えて、戦後の復興期に伐採と植林が進んだことなどが挙げられます。
一方、人工林は苗木を植栽したり、種をまいたりすることで人が育てた森林のことをいいます。一度人によってつくられた森は、そ の後も人が手入れし続ける必要があります。木の苗を大きく成長させるには、その伸長に合わせて下草刈りや枝打ち、間伐といった木が伸びるスペースを広げるための作業をしなくてはいけません。このように木々の密度を調節しなければ、木々の足元まで日光が届かず暗い森となり、やがて荒れた森となってしまいます。森が荒れてしまうと、森の保水力が落ちて雨水が地下に吸収されることなく川へと注ぎ込み、土砂崩れなどが起こりやすくなるなど、さまざまな災害が起こります。このように国土の67%が森林という豊かな自然環境を守っていくためには、間伐をはじめとする森の手入れがとても重要なのです。
※1 生物多様性情報システム「第5回基礎調査植生調査報告書植生メッシュデータとりまとめ」参照
(2)次々と生まれる間伐材プロダクツ
昭和30年代に木材の輸入自由化が進み、安価な輸入木材が登場するようになって、昭和30年に約94%だった日本の木材自給率は、現在24%(※2)にまで落ち込みました。その結果、日本の森は木材として利用できる木々が豊富にあるにもかかわらず、放置されるようになってしまいました。そこで、木材が利用されないことによって森が荒れていくのを防ごうという取り組みのひとつが、間伐材の積極的な再利用です。
平成12年度からは間伐材推進中央協議会による「間伐・間伐材利用コンクール」、平成17年度からは林野庁によって「木づかい運動」といった取り組みも始まっています。木づかい運動では、間伐材や端材など国産材を使用した全国各地の優れた商品を紹介して、積極的に取り入れるように呼びかけています。公式ホームページ「木づかい.com」には、オフィス用ファイルやフォトフレームといった雑貨から、住宅用のフローリング材、学校やオフィス用のテーブル、椅子といったものまで、木のぬくもりが感じられる“木づかい製品”がたくさん紹介されています。
また、間伐材は小学校で環境学習の教材としても利用されていて、子どもたちが自分たちの手で間伐材からマイ箸や携帯電話ストラップ、木にかけるネームプレートなどを作り、木のぬくもりとその大切さを学ぶ機会となっています。
※2 農林水産省「木材需給表」平成20年度
(3)森林ボランティアとして森を守ろう
間伐材の利用とともに、森が荒れ山と化していくのを少しでも食い止めようと、各地でボランティアによる森林の手入れ作業の輪が広がっています。平成13年に施行された「森林・林業基本法」の第三章第十六条では、個人や民間の団体による森林ボランティア活動を国が積極的に促進していくように明記されました。現在、全国には1,000を超える市民団体が森林ボランティア活動に取り組んでいるといいます。
具体的には、各地の森林の間伐作業や下草刈り、水源地域の植林活動、ハイキングコース周辺の森林の手入れなどが行われています。土地は北海道から沖縄まで、期間も休日を利用しての1日単位のものから数日間かけて作業するものまで、自分の生活スタイルに合わせて参加することができます。森林のおいしい空気の中で行う作業は、心地よく汗を流すことができ、心身ともにリフレッシュできるいい機会なのだとか。参加してみたいという場合には、森林ボランティアを支援する「社団法人
国土緑化推進機構」や緑・自然・環境のボランティアを応援する「NPO法人 地球緑化センター」などのホームページにボランティア募集の最新情報が集約されているので、参考にしてみてください。ただし、くれぐれも作業を軽視することなく、しっかり体調管理をした上で臨むようにしましょう。
国産間伐材の再利用も森林ボランティアも、広大な日本の森林に与えられる影響としては決して大きなものとはいえません。けれども、私たち一人ひとりが間伐材で作られたモノを愛用したり、森林ボランティアとして森の整備に汗を流したりすることで森を守る大切さに気づくことは、貴重な自然環境を未来へとつなげていくための大きな一歩であるといえます。自分ができる範囲で、何かひとつ始めてみてはいかがでしょうか。
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