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ロハスなはなし 第42回 化石燃料だけに頼らない社会へ 新エネルギーでエコに暮らす
ロハスなはなし
▲新エネルギーには、太陽光発電、太陽熱利用、風力発電、バイオマスエネルギー、温度差熱利用、雪氷熱利用、中小水力発電、地熱発電があります。
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▲佐賀県庁本館の屋上に設置された太陽光発電。(出展:独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)ホームページ)
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▲小型風力発電なら遊歩道や公園などのちょっとしたスペースにも設置できます。(出展:NEDOホームページ)
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▲日本で最初の本格的な地熱発電所として1966年10月に運転を開始した岩手県の松川地熱発電所。発電設備容量は23,500kWほど。(出展:東北水力地熱株式会社)
第42回
化石燃料だけに頼らない社会へ
新エネルギーでエコに暮らす
2009/9/10
 

(1)補助金制度の復活で導入しやすくなった「太陽光発電」
 個人レベルでも導入できる新エネルギーの代表格といえば、太陽光発電です。今年からは約3年ぶりに一般住宅用の太陽光発電設備に対する補助金制度が復活し、伸び悩んでいた国内での太陽光発電の普及に拍車が掛かっています。さらに、都道府県や市町村独自で補助金制度を行っているところも多く、国と地方自治体の両方から補助金を受けられるケースもあります。また、自宅で使い、さらに余った電力は電力会社へ販売でき、国が来春からの実施を目指しているFIT制度(※)が始まると、売電価格は現在の2倍1kWh当たり48〜49円程度になる予定です。これらの新制度を利用すると、経済産業省によるコスト試算によれば、一世帯で使う電力が賄える程度の太陽光発電システムを新築時に導入した場合は平均的な初期投資200万円が10年ほどで、既築の場合は約245万円が15年で回収でき、それ以降は売電による収入を得ることができます。
 ところで、国の補助金制度が中断していた時期も独自の取り組みで太陽光発電の普及率を伸ばしていたのが、佐賀県です。普及の原動力となったのが、2006年度と2007年度に実施された「太陽光発電トップランナー推進事業」です。これは、各住宅の太陽光発電による電力に対して、CO2を出さないといった「環境価値」を県が買い取るという制度で、全国の自治体に先駆けて実施されました。具体的には、住宅用太陽光発電で発生した電力のうち、電力会社に売電した分を除き、住宅で実際に使用した電力の環境価値をグリ−ン電力認証機構の認証を得て証書化します。県がこれを1kWh当たり40円で一括購入することで、太陽光発電を導入した各世帯を支援するという仕組みです。このような取り組みによって、佐賀県は住宅用太陽光発電の普及率が全国1位になりました。

(※)FIT制度:固定価格買い取り制度。再生可能な自然エネルギーによって発電された電力を、送電事業者(日本では電力会社)は発電手段ごとに 一定の価格で買い取るように義務付ける制度。90年代初頭にドイツが導入して以来、現在は世界各国で自然エネルギー普及の原動力として導入が進められています。

(2)環境に優しい街のシンボル「風力発電」
 新エネルギーの中では発電単価が比較的安いことから1990年代から2000年代にかけて、ドイツやアメリカ、スペインなどの欧米を中心に導入量が大幅に伸びているのが風力発電です。日本の風力発電の設置基数も2006年度末までに1,314基、発電設備容量(発電できる総出力)も合計149万kWまで増加しました。国は設置目標を2010年までに300万kWと定め、より一層の普及を目指しています。その一方で、風力発電は大型化が進むにつれ、大きな風車が引き起こす低周波による健康被害が問題視されてきました。EU諸国では、住宅から数キロメートル離れていなければ設置できないなどの規制が行われています。日本でも、設置場所の規制が求められ始めています。
 健康被害が心配な大型の風力発電とは一線を画した取り組みが、「新エネ百選」(※)に選ばれた京都府京丹後市の「うみかぜ風力エネルギー普及モデル事業」です。日本海に面した海岸部という京丹後市の立地を生かし、「うみかぜ」を利用した風力発電をより身近なものとして普及させようという試みです。2005年度から2007年度にかけて、0.3〜3kWレベルの小型風力発電設備が公園や老人福祉施設、一般住宅などへモデル的に設置されました。街の至るところで風車が回る姿は、住民たちに環境を守る大切さを思い起こさせるシンボルになっています。

(※)新エネ百選:経済産業省と独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が、地域性を考慮した地産地消型の新エネルギー等利用などの取り組みの中から、特に優れたものを 「新エネ百選」として選定する事業です。佐賀県の「太陽光発電トップランナー推進事業」と京都府京丹後市の「うみかぜ風力エネルギー普及モデル事業」はいずれも「新エネ百選」に選ばれています。

(3)火山大国・日本の地中に眠るエネルギー資源を活用
 エネルギー資源が乏しく95%以上を輸入に頼る日本において、莫大な潜在能力をもつ資源が地熱エネルギーです。世界有数の火山国である日本には、全世界の約1割に当たる地熱エネルギーがあるともいわれています。また、地熱エネルギーを利用した発電は太陽光発電や風力発電と比べてもCO2排出量が少なく、とてもクリーンな発電です。世界レベルでみると地熱発電の開発は進んでいて、発電設備容量(発電できる総出力)はここ30年で約7倍になっています。にもかかわらず、日本での開発は1996年以降頭打ち状態で、地熱発電所は現在18地点20プラントが稼働しており、その発電設備容量も合計約54万kWにとどまっています。現在は、開発コストが高いことなどから新たな事業展開が進んでいない状況にありますが、今後さらなる普及に向けての国の施策、事業者の取り組みが期待されています。

 このように、新エネルギーのなかでも普及が進んでいるもの、潜在能力は高いものの開発が遅れているもの、その現状はさまざまです。日本はまだまだエネルギーの大半を化石燃料に頼ってはいますが、これから少しずつクリーンなエネルギーが増えれば、地球温暖化の要因となるCO2の排出量を減らすことができます。新エネルギーへの期待は、今後いっそう大きなものになっていくでしょう。

【参考文献】
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)『新エネ百選』
→http://www.nedo.go.jp/
 kankobutsu/pamphlets/dounyuu/nes100/index.html

NEDO『地熱開発の現状』
→http://www.nedo.go.jp/kankobutsu/pamphlets/dounyuu/chinetsu.pdf
NEDO『新エネルギーガイドブック2008』
→http://www.nedo.go.jp/
 kankobutsu/pamphlets/dounyuu/shinenegaido2008/index.html

【参考URL】
佐賀県庁HP「佐賀県は発電時にCO2を排出しない住宅用太陽光発電を推進しています」
→http://www.pref.saga.lg.jp/web/toprunnersuishintyuu.html
新エネルギーみらい さが「佐賀県新エネルギー導入戦略的行動計画」
→http://www.pref.saga.lg.jp/
 at-contents/kankyo/energy/torikumi_plan.html
 
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