(1)8月22日から「水都大阪2009」が開催
江戸時代、「天下の台所」として物流・商業の中心地として栄えた大阪。その大阪の経済活動を支えたのが、町の中心地を流れるいくつもの川と江戸時代に盛んに開削された運河でした。現在は陸上交通網の発達とともにかつての繁栄は失われたものの、堂島川・土佐堀川・木津川・道頓堀川・東横堀川によってできた水の回廊(左マップ図参照)を中心に、水辺の再整備が進められてきました。
そして、今年8月22日から52日間、大規模なイベント「水都大阪2009」が開催されます。これは堂島川と土佐堀川に挟まれた中之島公園をメイン会場に、大阪市内各所で水辺を盛り上げるイベントです。
一番の見どころは、期間中テーマパークに生まれ変わる中之島公園会場。園内は「つくる」「あそぶ」「はなす・みる」の3つの機能をもつ仮設小屋や広場で、アーティストと一緒にモノづくりができたり、ワークショップに参加できたりと、さまざまなプログラムが用意されています。ほかにも八軒家浜会場で行われる水と光と映像を駆使した幻想的なショーや朝市、水の回廊を巡るアート船プログラムなど、老若男女を問わず楽しめる催しが企画されています。さっそく、コンクリート砂漠の暑さから逃れて、水辺の魅力を再発見しに訪れてみてはいかがでしょうか。
(2)「よみがえれ!大阪湾」再生プロジェクト
古代から大阪湾は豊かな漁場であり、また中国大陸や朝鮮半島とつながるシルクロードの日本の玄関口でした。江戸時代に入ると、大阪湾では干潟や浅場の埋め立てが始まり、東京湾よりも早く工業地帯として発展。そのため、大阪湾は生物が生息できる沿岸エリアが極端に狭くなり、海の自然浄化能力が低下、慢性的な水質悪化に長年悩まされてきました。
このような事態から脱して大阪湾を再生させようと、国や近畿地方の府・県・政令市などによって設立されたのが、「大阪湾再生推進会議」です。それまではバラバラに取り組んでいた官民の団体の間に、緩やかなネットワークが生まれました。具体的には、大阪湾再生推進会議によって実施されている年1回の大阪湾一斉水質調査のほか、NPOや自治体による沿岸部の清掃、大量に発生するアオサ藻類の除去、稚魚の育成場となるアマモの移植、自然海岸がもつ機能を再現できるように人工海岸の改善実験、といった多種多様な取り組みが実践されています。かつての豊かな大阪湾を取り戻したいという人々の思いによって、広い大阪湾に小さな努力の輪が生まれつつあるのです。
(3)京阪神エリアの水瓶・琵琶湖を守る
大阪湾再生と同時に、琵琶湖・淀川流域でも再生プロジェクトが進行しています。
日本の湖で最大面積を誇る琵琶湖とそこから流れ出る唯一の淀川の流域は、三重・滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良の2府4県にまたがる京阪神の人々の大切な水資源となっています。琵琶湖または淀川流域の水を利用している人は、およそ1,700万人にもなります。また、世界有数の古代湖である琵琶湖には、約50種類の固有種を含めて約1,000種類の動植物が生息し、多様な生態系を形成しています。琵琶湖は人間だけではなく、生物にとってもかけがえのない場所といえます。
ところが、高度成長期以来、市街地の増加による農地や山林の減少、生活排水や事業場排水、洪水対策のための湖岸整備といった要因が重なり合い、琵琶湖と淀川流域の自然環境や水質は急激に悪化しました。外来魚の大繁殖の影響もあり、琵琶湖では漁獲量が減少していて、エビ類やフナといった重要魚介類の平成14年度の漁獲量は、平成5年の3分の1まで落ち込んでいます。
このような事態を受けて、国や周辺の地方自治体が主要メンバーとなり、「琵琶湖・淀川流域圏再生推進協議会」を組織し、平成17年より再生に向けての対策がスタートしています。「生命の水を再生する」「水辺をつなぐ」「水辺の拠点を整備する」「まちにせせらぎを導入する」「流域圏の自然環境をつなぐ」という5つのテーマに沿って、さまざまな取り組みが計画・実施されています。いくつか例を挙げると、水質改善のプログラムや自然な河原の復元、河川敷をつなぐ遊歩道の整備、「川の駅」や「湖の駅」の整備、さらに現在流れていない京都市内の西高瀬川と堀川での清流復活など、その内容は多岐に及んでいます。
といっても、どのプロジェクトもまだ始まったばかり。各地で行われている地道な努力と、それらにスポットを当てるための大規模なイベント、さまざまなアプローチで進む関西エリアの環境再生への取り組みに、私たちも積極的に関心をもって応援していきましょう。
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