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ロハスなはなし 第39回 花の力で心を育てる 花育のすすめ
ロハスなはなし
▲昔から花や緑には、心身を健やかに癒やしてくれる効果があると考えられています。
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▲花育によって子供たちは植物の成長を総体的に学んでいきます。
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▲花育をアピールするロゴマーク。全国花育活動推進協議会の参加団体は自由に使用できます。(資料提供:全国花育活動推進協議会事務局の(財)日本花普及センター)
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▲真剣な表情でアレンジメントに挑戦する御殿山幼稚園の園児たち。(資料提供:全国花育活動推進協議会事務局の(財)日本花普及センター)
第39回
花の力で心を育てる 花育のすすめ
2009/6/10
 

(1)「花育」は、子供たちの豊かな心をはぐくむ
 農林水産省のデータを見てみると、日々花に触れている人はそれほど多くないようです。平成20年12月に農林水産省がまとめた「花きをめぐる情勢」によると、1年間に一度も切り花および園芸品・園芸用品を購入しなかった世帯の割合は、それぞれ6割と7割。このような現実は、古くから自然や四季を愛でる文化が息づいてきた日本としては、少し寂しい調査結果といえます。
 そのようななかで、最近注目を集めているのが食育ならぬ「花育」です。都市化が進んだ日本の子供たちにとって、たとえ一輪挿しの花や小さな花壇であっても、それは自然を体感する貴重な機会になってくれます。そこで、教育や地域活動の現場で子供たちに花と触れ合う機会を作っていこうという取り組みが花育です。昨年3月末には、花き業界や都市緑化関係の幅広い団体が参加して「全国花育推進協議会」を立ち上げ、協議会を中心に教育関係者と連携して全国で花育の輪が広げられています。
 では、具体的にどのようなことが実践されているのでしょうか。その内容は、子供の成長段階に合わせて大きく2つに分けられます。(全国花育推進委員会「花育活動推進方策」より)

●幼児や低学年の児童が対象の場合
 幼児や児童が花や緑に触れることになじみ、その環境を心地よいと感じられるようになることを目的とした取り組みが中心です。具体的には、幼稚園などの園庭に用意した花や緑の世話をしたり、ひな祭りやクリスマスといった花や緑のデコレーションが欠かせない行事で花の準備を手伝ったり、といったことが行われています。

●中学年や高学年の児童が対象の場合
 この時期の子供たちには、一歩進んで自ら「楽しむこと」を重視。より園芸に重点を置いた専門的、本格的な取り組みが行われています。具体的には、近隣の園芸農家に教わりながらコンテナガーデンを作る、種まきから花作りに挑戦する、フラワーアレンジメントを楽しむ、園芸農家に通って作業を手伝うなど、その内容は多岐にわたります。

 このように植物の生命に触れることを通じて、子供たちは「感謝する気持ち」「優しい気持ち」「探究心や想像力」をはぐくんでいくことができます。また、作業を一緒に行うことで、普段は接することのない生産者や地域の人たちと交流ができたり、子供が花や園芸に興味を持つことでその家族も興味を抱くようになったりといった効果も期待されています。

(2)現場と専門家をつなぐ「花育アドバイザー」制度
 花育の普及によって求められるのが、それを指導する人材です。そのようなニーズと専門知識を持つ人材を結ぶ制度として始まったのが、全国花育活動推進協議会による登録制度「花育アドバイザーネットワークシステム」です。花育アドバイザーには、次のような条件を満たしていれば個人でも団体でも応募することができ、認証されるとアドバイザーとして登録されます。その条件とは、花や緑に関連する国の技能検定や関係団体が実施する資格認定制度(※1)の有資格者、または花育活動や植物に関する生産や試験研究などの経験がある者と、そのような専門家が会員などとして参加している団体です。
 登録するアドバイザーの情報は、事務局の財団法人日本花普及センターがまとめ、幼稚園・保育園や小学校からの依頼を受けて、アドバイザーの派遣を行っています。専門知識を持ちアドバイザーとして活動したいと考えている人にとっても、花育の指導者を探している人にとっても、便利な制度です。ちなみに、花育アドバイザーの活動は、資材費や交通費を除いて無報酬が原則とされています。(注:花育アドバイザーの登録によって、公的な資格や権利が付与されるものではありません)

※1 花育アドバイザー登録条件を満たす資格
・花や緑に関連する国の技能検定/フラワー装飾技能士、園芸装飾技能士、造園技能士
・財団法人公園緑地管理財団/公園管理運営士、緑・花文化士
・財団法人日本花の会/フラワーアドバイザー
・財団法人日本いけばな芸術協会/各流派の免許制度
・社団法人日本インドア・グリーン協会/グリーンマイスター
・社団法人日本造園建設業協会/植栽基盤診断士、街路樹剪定士
・社団法人日本家庭園芸普及協会/グリーンアドバイザー
・日本ハンギングバスケット協会/ハンギングバスケットマスター
・RHSJコンテナガーデニング協会/コンテナガーデニング・マスター

(3)フラワーアレンジメントや花壇作りに子供たちが大奮闘
 最後に、全国花育活動推進協議会のホームページで掲載されている東京のモデル地区「品川区立御殿山幼稚園」での実践例をご紹介します。
 御殿山幼稚園では、大きく2つの取り組みが実践されています。ひとつがフラワーアレンジメント作り。ひな祭り、母の日、お月見、クリスマスと季節の行事に合わせて、園児たちが思い思いのフラワーアレンジメントを作ります。これには、花に触れるだけでなく、季節の行事への理解も深まるというメリットがあります。
 もうひとつが、花壇作りとコンテナでの野菜栽培。土の中に顔を埋めるようにして種をまいたり、収穫した小玉スイカを慎重に抱えたりと、慣れない作業に大奮闘する園児たち。彼らは自分の手で花壇やコンテナの世話をすることで、花や野菜を育てる基礎的な知識や植物の本来の“旬”を体得していくのです。また、クリスマスのリース作りは親子一緒に参加します。参加した母親からは「今までは素通りしていたお花屋さんに、ふと立ち止まり見る余裕をもてるようになりました」といった声も寄せられています。

 このように、花育を通じ子供たちは自然の美しさに感動し、それをいとおしむ心をはぐくみます。取り組みそのものは決して難しいものではありません。家庭において、テーブルの上に花を飾ったり、庭に花壇を造ったり、毎日の生活のなかで親と子供が一緒に花や緑と接する機会を増やしていくことが大きな一歩となるのではないでしょうか。


【参考文献・URL】
全国花育活動推進協議会
→http://www.jfpc.or.jp/hanaikukatudoukyougikai-index.html
全国花育活動推進委員会「花育活動推進方策」(PDF:1MB)
→http://ogb.go.jp/nousui/seisansinkou/sinkou/farmproducts/kaki/hanaiku.pdf
平成20年3月、農林水産省花き産業振興室「花きをめぐる情勢」(PDF:932KB)
→http://www.maff.go.jp/kyusyu/seiryuu/hana/kakijyousei_h20_03.pdf
 
 
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