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SDGsで見えてくる企業の未来
 
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SDGsで見えてくる企業の未来

2020/01
株式会社大川印刷
SDGsを経営方針に組み込み事業を拡大した横浜の老舗企業

明文舎印刷商事株式会社
ノーカーボン紙印刷のコスト削減・品質向上事例

SDGsで見えてくる企業の未来

株式会社大川印刷
SDGsを経営方針に組み込み事業を拡大した横浜の老舗企業
 世界的に注目度が高まっているSDGs(Sustainable Development Goals/持続可能な開発目標)。これは、健康、教育、ジェンダー平等、海や陸の豊かさを守る、貧困や人・国の不平等をなくす、気候や環境の変動に対策を講じる、平和と公正をすべての人に、など、地球規模の課題を2030年に向けて解決していくために、2015年に国連が定めた行動指標です。
 SDGsについて、関東経済産業局が500社の中小企業を対象に行った2018年の調査によると、「まったく知らない」という回答が約84%で、認知度は低い状態です。しかし、取り組みは国レベルで進み、企業間の取引でも「SDGsに取り組んでいるかどうか」が重要な条件になる時代が間もなく訪れると考えられています。
 そのSDGsを企業活動の根幹に据え、事業の拡大につなげたことで注目されている企業のひとつが株式会社大川印刷です。
 「多くの気づきや、新たな視点を得る上で、SDGsは役立ちます。事業の再定義や思考回路を変えることができると思っています」と同社代表取締役社長の大川哲郎さんはいいます。
まず、身近な課題を解決するできることから始めよう
 大川印刷は、日本で初めてゼロカーボンプリントを実現した印刷会社です。2004年には、自社を、本業を通じて社会課題解決を実践する「ソーシャルプリンティングカンパニー」と位置づけ、石油系溶剤を含まないノンVOCインキ、FSC森林認証紙などのエコ用紙を積極的に採用するなど、環境を意識した印刷事業を展開。顧客は、大川印刷に発注すれば温室効果ガスの削減に貢献できることになり、同社の大きなアピールポイントにもなっています。
 「SDGsをしっかり理解している会社に依頼したいということで、当社に仕事を発注してくださるお客様が増えています。こちらから新規開拓を仕掛けるのではなく、相手から問い合わせが来るかたちで新しいビジネスが始まっているのを実感しています」(大川さん、以下同)
 大川印刷では、毎年社内でSDGs経営計画策定ワークショップを開催。いくつかのチームに分け、SDGsのゴールをもとに自分たちのやりたいことを提案し、計画を作成しています。たとえば2018年に発表された、若者の働きがいのある職場について考える「若者カフェ」は、横浜の高校のイベントに出展し、大川印刷の社員と高校生が語り合う場として実現しました。
 その他、つくる責任、つかう責任から、プラごみ・CO2の削減を進め、働きやすい工場づくりなども目指した「ゼロ・エミッション2020プロジェクト」など、SDGsのゴールをもとに、取り組みが進められています。
 また、2015年から始めた「多言語おくすり手帳普及プロジェクト」は、大川印刷でインターンとして働いていた留学生の困りごとから生まれました。日本在住の外国人が言葉の壁で医療機関を受診できなかったり、災害時に不利益を被ったりしないようにということで、人や国の不平等をなくすことを目指しています。
 このように従業員の意見を尊重し、それを全社的に考えることで、SDGsを自分ごととしてとらえ、社会の課題解決の大切さを一人ひとりが認識し、事業にも結び付けていく。それは大川印刷の大きな力になっています。
 「自分さえよければいい、をなくす。自分には関係ない、をなくす。この二つを頭におきましょう」
 大川さんは従業員の方にこう話しています。大切なのは、できることから始めること。SDGsのゴールへは、身近な課題を解決していくことから近づいていけるでしょう。
多業種で広がる、SDGsのゴールに向けた取り組み
 SDGsのゴールをもとに、自社の業態を顧みて、どのゴールに向けてどのようなことに取り組んでいけばいいかを考え、活動を起こす企業も登場してきました。
 たとえば、あるジュエリーメーカーは、海外の電気が通っていない集落に水力発電機を設置するプロジェクトをクラウドファウンディングで成功させたり、自社で使用する革素材の端材を国内のデザイン系教育機関に提供してものづくり支援を行うなど、生活や教育の質の向上を目指しています。

日、英、中、韓の4か国語を併記した「わたしのおくすり手帳」。市民団体の協力を得て作成。5年目に入り、問い合わせが増えてきている。
 優れた品質のタオルをラインアップに持つ繊維品メーカーの例では、貧困や飢餓をなくすというゴールを念頭に置き、開発途上国の生活改善と自立につながるフェアトレードで原料を調達しています。
 中小企業でも、障がい者や外国人を積極的に雇用する金属プレス加工会社、子育て中の女性に働きやすい環境を整え、女性目線のサービスで営業成績をあげたタクシー会社など、SDGsに関する取り組みは広がりを見せています。もちろん、印刷業界でもSDGsに取り組む企業は増えてきています。
 また、SDGsに取り組む利点のもうひとつの側面として、自社の見えない課題に気づくことが挙げられます。事業活動を洗い出し、改めてSDGsのゴールと照らし合わせることで、環境、健康、教育、働きがい、ジェンダーなど、多彩な側面から事業活動を見直すことができるからです。その課題を解決することで、自社のマイナス(課題)をプラスへ転換していける可能性が高まります。
 今後さらに、SDGsが世界的な流れとなっていけば、社会の課題解決に通じる事業に取り組む企業には、大きなビジネスチャンスが広がっていることでしょう。  

「会社の活動を通じてひとつでも多くの幸せを創造したい」と語る大川印刷代表取締役社長・大川 哲郎さん。
印刷関連分野企業に見られるSDGsへの取り組み
  • SDGsはボランティアではなく、本業そのものと直結している。日常の業務を通して社会的な課題解決に貢献する、という発想で業務を見直せば、潜在的な問題点や、新しい市場開拓のヒントも浮かび上がってくる。
  • 大川印刷では従業員の皆さんが毎年実行しているように、SDGsの導入は難しくない。身の回りの小さな気づきから始めよう。
株式会社大川印刷
https://www.ohkawa-inc.co.jp/

2018年に外務省主催の「第2回ジャパンSDGsアワード・SDGsパートナーシップ賞」を受賞するなど、SDGsへの取り組みが評価されている。

明文舎印刷商事株式会社
ノーカーボン紙印刷のコスト削減・品質向上事例
油性薄盛り減感の「FN-LP300」で品質が安定。
コストも無駄も大幅削減。「盛り過ぎチェックペン」との相乗効果で、技術力アップの強い戦力に。
 ビジネスフォームの印刷で豊富な実績を持つ明文舎印刷商事株式会社は、ノーカーボン紙の印刷時の減感にはUVインキをメインに使っていました。同社が油性薄盛りタイプの「FN-LP300」を導入したのは2019年3月。
1年未満ですがインキの使用量削減を実感しています。同年10月から使い始めた減感インキ専用の「盛り過ぎチェックペン」と共に、同社にどのような変化をもたらしたのか、お話をうかがいました。
インキ使用量は約半分に。水や紙の無駄も減り、オペレーターの労力軽減にもつながっています

業務本部 本部長 八若 昌弘さん
 滋賀県長浜市に本社がある明文舎印刷商事は、中部・近畿エリアだけでなく、東京や九州の印刷会社とタイアップしてビジネスフォームの印刷を手掛け、確かな技術でお客様から高い評価を得ています。減感インキは、UV約8割、油性約2割の比率で使っていましたが、富士フイルムの「FN-LP300」を導入したのはどのような理由なのでしょうか。業務本部長の八若 昌弘さんがお話しくださいました。
「全社的に単価の高いUVインキから油性インキへの切り替えを検討しているタイミングで、減感インキに関して富士フイルムのFN-LP300の情報が入ってきたんです。薄盛りタイプなので、従来使っていた油性インキに切り替える以上のコスト削減につながると判断しました」
 とはいえ慣れ親しんだ物や方法を変える際にはどうしても不安がつきまといます。それでも導入に踏み切ったのは同社の社風に関係がありました。
「当社は常に挑戦することをモットーにしています。必ずものにすると思ってまずはやってみる。そして成果が出ました」
 FN-LP300導入を進めた製造本部製造課長の堀永 洋行さんは次のように振り返ります。

製造本部 製造課 課長 堀永 洋行さん
「新しいものに切り替えることに正直不安はありました。失敗したら刷り直しになるし、ロールの場合は1本単位でだめになるので怖かったです。でも、使ってすぐに良さがわかりました。インキも進化していて、こんなにいいものがあるんだ!と思いました」
 まだ期間が短く、インキ使用量の正確なデータは出ていないとのことですが、堀永さんは、「青発色でも、黒発色でも、UVインキや以前使っていた油性インキに比べてすごく薄盛りで発色が止まります。使うインキの量は半分位になったと思います」と手応えを感じています。以前は、特に黒発色の印刷物の場合、オペレーターは減感効果を確実に出して発色を止めようとして、どうしても厚めに盛りがちでした。
「盛り過ぎるとガイドロールにインキが付着して、引きずり汚れが出てくるので掃除が何度も必要でした。FN-LP300に切り替えてからは薄盛りでいけるので、インキが流れにくくなり汚れも付着しません。印刷を始める前の調整段階のセット時間も短くなって助かっています」(堀永さん)
 インキの量が減れば、供給する水の量も減らせます。また、盛り過ぎると水元ロールにインキがからむなどのトラブルもありましたが、FN-LP300ではそのような問題は発生していません。琵琶湖に近いこともあり、湿し水にノンアルコールタイプを使うなど、環境に配慮している同社にとって水はデリケートなテーマ。エコ的視点からもメリットを感じています。
「薄盛りで確実に減感効果が出せるので、紙の無駄もなくなりました。何より、安定した品質で印刷できるのが嬉しいですね」(堀永さん)
 インキ、水、紙、手間、そして品質。FN-LP300導入の効果を印刷の現場では大いに実感しているようです。
盛り過ぎチェックペンで減感インキの盛り量が一目瞭然。印刷が安定し、技術力アップへ
 明文舎印刷商事では、2019年10月より減感インキ専用の「盛り過ぎチェックペン」も使い始めました。製造本部グループ長の二階堂 一也さんは、確実な指導ができるようになったといいます。
 「今までは適切な量を、透け具合とか、手触りとか、感覚的な言い回しでしか指導ができませんでしたが、チェックペンを使えば盛り過ぎた所は白くなるのでひと目でわかります。指導する側もオペレーターも納得しています」

 チェックペンで盛り量がわかるようになってオペレーターの傾向も把握でき、それぞれに合ったアドバイスを送れるようになったことも収穫です。

製造本部 印刷/ロール丁舎 グループ長
二階堂 一也さん
 「良くなったことは、ノーカーボン紙に字輪でバーコードを印刷する際、発色汚れ防止のため減感インキを使って印刷するのですが、このとき適正な盛り量が容易に確認できることです。以前は、盛りが厚いとバーコードがグレーになったり、ひどい時は消えてしまいました。チェックペンを使えば適切な指導ができます。
FN-LP300で薄盛りできるようになった効果に加えて、さらに印刷が安定しました。これは当社の技術力アップにつながっていると思います」(二階堂さん)
 A3など広範囲な減感印刷の盛りムラも、チェックペンをスーッとひと筋引くだけで一目瞭然。誰でも判断できます。若いオペレーターは盛り量のチェックを職長に相談することもあったそうですが、チェックペンで自己判断ができるようになり、従業員の方のモチベーションアップにも結び付いていったようです。
 常に業務改善を考え、さまざまなチャレンジを続ける明文舎印刷商事。FN-LP300と盛り過ぎチェックペンは、成長する同社の確かな戦力として、今後もビジネスフォームの印刷現場を支えていくことでしょう。
「インキもチェックペンも、ほんまにやって良かったです」と笑って話す八若本部長。その笑顔が何より今回の導入の成果を物語っているようです。
明文舎印刷商事株式会社
本社:滋賀県長浜市森町字中久保386
代表取締役社長:中村彰男
http://meibun.com/
1949年(昭和24年)設立。各種ビジネスフォームの印刷に豊富な実績を持つほか、近年は接着技術に注力し、付加価値のある提案を行い、難易度の高い印刷物の制作も請け負っている。
 
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