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あらゆるものが定額化へ!? 広がるサブスクリプションモデル
 
すぐに分かる! 注目の経営手法や市場の「今」 グリーンレポート

あらゆるものが定額化へ!?
広がるサブスクリプションモデル

2019/07
「所有」から「利用」へサブスクリプション化する経済
利用者にメリットを感じてもらうための仕組み

あらゆるものが定額化へ!? 広がるサブスクリプションモデル

「所有」から「利用」へサブスクリプション化する経済
 サブスクリプションは、従来は売り切りだった物販やサービスを定額化して提供するビジネスモデルです。欧米ではIT関連企業を中心に売り切り型のビジネスモデルから転換する大手企業が急速に増え、日本にもその波が広がってきました。
大手IT企業が加速させるサブスクリプション化
 サブスクリプションモデルの元祖は、米国の雑誌の定期購読サービスといわれています。その後のインターネットの普及とともに、IT分野ではマイクロソフトのOffice製品などのアプリケーション利用をはじめ、データ通信回線などのサービスでは従来の従量課金制からサブスクリプションへの移行が進んでいます。
 音楽ビジネスでは、レコードやCDなどのコンテンツ媒体の物販からネット配信へと抜本的な変化が起き、さらに定額制へと大きく舵を切りました。
 映像コンテンツや電子化された出版コンテンツの定額化にも大きな影響を与えています。ECサービス大手のアマゾンには、ビデオ見放題サービス「プライム・ビデオ」があります。この原型となるサービスは10年以上前に米国で開始しており、アマゾンはサブスクリプションサービス提供企業の先駆けともいえます。教育コンテンツの提供を行う人材教育産業では、オンライン教材のコンテンツの利用し放題やレッスン受け放題サービスなども登場しました。
印刷業界に影響を与えるサービスも
 サブスクリプション化の影響は印刷業界にも密接に関連しています。代表例は、アドビシステムズの製品です。画像編集に欠かせないPhotoshopやDTPソフトとして広く普及しているInDesign。これらは元々パッケージ売りの製品でした。しかし2013年にサブスクリプション契約のCreative Cloudをリリースしてクラウドサービスへの移行を開始し、近年はほぼ完全にサブスクリプションへと移行しました。なお日本語環境では、モリサワやTypeBankのフォントがCreative CloudのAdobe Fonts(旧Typekit)サービスに一部提供されています。
 アドビのサブスクリプション化の影響は大きく、同社の2018年度の売り上げは90億3000万ドル(日本円換算で1兆円超)。前年の2017年度の73億ドルから大きく伸長して、さらに過去数年にわたり年20%以上の大幅増収を続けています。
モノのサブスクリプション化や、法人向けも登場
 サブスクリプション化はデジタル以外の領域でも広がり、リリースラッシュが始まっています。日本では自動車や家電など大手メーカーによる定額利用サービスが昨年から続々と発表され、製造業でもサブスクリプションサービス化が進んでいます。
 トヨタ自動車は新会社を設立して「愛車サブスクリプションサービス」を提供し、アウディ ジャパンでも人気モデルに気軽に乗ることができるサービスを開始しています。これらは従来のレンタカーやカーリースと異なり、メンテナンス料金などの維持費も含むために年間の利用費が把握しやすく、新たな利用方法として注目を浴びています。
 家電分野では、ダイソンが掃除機や扇風機、ドライヤーなどを使用できる定額制サービスを提供中。パナソニックでは、有機ELテレビの定額利用プランを開始し、2020年には冷蔵庫などの幅広い家電製品群への拡大を発表しています。

特徴的なサブスクリプションサービスの例

 法人向けサービスの世界でもサブスクリプション化は進んでいます。建設機械最大手の小松製作所では、建設機械の管理だけでなく、測量・施工・保守といった土木作業全体もデジタル化し管理して、サブスクリプションのクラウドサービスとして提供。建設機械の製造からマネジメント領域へと拡大を図っています。
経営を安定化させるサブスクリプションモデル
 サブスクリプションモデルは、顧客の利用頻度を高め継続的、包括的な価値提供をしやすく、サービス提供側にとって一定の利益予測がしやすいため、経営を安定させやすいメリットもあります。旧来のビジネスモデルに行き詰まりを抱えている業界や企業にとり、次なる展開への橋頭堡としての可能性も期待されています。
 一方で、AOKIホールディングスによるスーツレンタルのサブスクリプションサービスが、会員の増加に伴い品ぞろえを増やすなどの運用コストが大きくなったことが一因で、一年たたずに終了するなど、うまくいかなかったケースも出てきています。
 このように、特にモノをサブスクリプションで提供する場合は、在庫管理や流通といったコストとのバランス、また、例えば定額制の利用をきっかけに既存や別の事業でも新規顧客が増えるといった波及効果があるかなどがポイントになります。もちろん利用者側にとって料金を支払い続けるだけのメリットを感じてもらえるサービスになっているかどうかも、考えるべきポイントとなります(詳しくは下の囲みで解説)。なお、サブスクリプションは「使い放題」だけでなく、「○○回で月○○円」と上限を設けたり、毎月の利用者数の上限を設けたりしているものもあります。
  • 顧客の利用状況などのデジタルデータを蓄積、分析することで、今後の戦略に生かしやすい利点もあるサブスクリプションビジネス。中小企業向けにそのためのアプリや決済といったプラットフォームを提供する企業も現れてきています。また、自社単独だけでなく、複数企業でサービスを提供するモデルも増えており、敷居はさらに低くなっていくと見られます。印刷会社に有効なビジネスモデルも見つかるかもしれません。
利用者にメリットを感じてもらうための仕組み
  • ランチテイクアウトのサブスクリプションサービス「ポットラック」は、アプリを使って持ち帰りランチを予約注文、ネット決済で前払いすることで、人気店でも並ぶことなく、すぐに受け取れるというサービス。複数の店舗が参加しており、さまざまなメニューが利用できるのが特徴で、サブスクリプションで利用頻度が高まっても、飽きられずに利用してもらえるメリットがあります。
     カフェや居酒屋などが自社単独で行っているサブスクリプションサービスの中にも、お酒やコーヒーなどの飲料を定額制にし、これまでは訪れなかった新規顧客を呼び込みつつ、飲み物を安価に楽しめる分、料理の注文が増えるといった好例も生まれています。
  • 「ウェルノート」は、アプリを使って、クラウドに無料で家族の写真や動画を保管し、家族間で共有できるサービスです。さらに毎月540円などの定額を支払うことで、写真プリントなどが自動で制作され、おじいちゃん、おばあちゃんなどに発送してくれるサービスが利用できます。
  • ウェルスタイル株式会社
    代表取締役社長 谷生 芳彦さん
     サービスを運営するウェルスタイル株式会社の代表取締役社長・谷生芳彦さんは、「自分の子どもの写真を離れた土地に住む祖父母にたくさん見せたい」という自らの欲求から、2010年にいち早くサブスクリプションを取り入れました。「子育てで忙しいお客さまが、サブスクにより、毎回いちから注文いただく手間が省けるなど、便利を提供できます」と話します。サブスクリプションは新しい仕組みであることから、特に顧客とのコミュニケーションが重要だといいます。ウェブデザイナーやエンジニアと協力し、サービスを分かりやすく伝えるサイトづくりにこだわったほか、メールでの問い合わせに丁寧に応える体制を整えています。
  • 大人のプログラミングスクール「テックキャンプ」は、月額約15000円で、ウェブサービス開発、AI(人工知能)入門などのコースがeラーニングで学び放題というサービスです。ネット環境とパソコンがあればどこでもeラーニングで学習できますが、東京を中心に複数設置されている教室やネットによるビデオ通話を使い、分からないことが出てきたらすぐにメンター(指導員)に聞けることで、学ぶスピードを速められることを売りにしています。学生や社会人を中心に会員を増やしています。
 
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