社員が主体者になる! 山田製作所の情報共有
1.全ての経理情報を社員に分かるまで解説
同社では、役員報酬、接待・交際費など、社員の報酬を除いた年間・毎月の決算結果を全て社員に公開。月に1回、全員が参加する「YMS(ヤマダマネジメント)会議」で、月決算を発表、対前年比などを経営陣が説明します。「こうした数字には不慣れな社員がほとんどでしたが、
会社の現状を知り、経営を自分ごとにしてもらいたくて始めました」。全員が月替わりで必ず質問担当になり、数字に対する質問、用語の意味や時事ニュースへの素朴な疑問なども口にします。「中でも、
社員がどれだけ付加価値を生んだかが分かる粗利率については、丁寧に解説します。これを始めて、自分たちの成果として数字を意識してくれるようになり、仕事の工数目標、効率化について自ら考えてくれるようになりました」。
2.30分の朝礼で進捗・課題・対策を明確に
同社には、全ての案件ごとの進捗と現場一人ひとりの進捗を、全員が把握・共有できる、独自開発の「工程管理ボード」があります。これを見ながら行う毎朝30分の朝礼が、「P(計画)・D(実行)・C(評価)・A(改善)を毎日回すための大事な時間」です。計画どおりの進捗か、そうでなければなぜか、残業・外注・他の社員のフォローなど何で解決するのかなど、課題・対策を共有します。
朝、全員のやるべきことが明確になれば、その日の作業に集中できます。
また、同社では毎回作る製品が変わるので、「生産前会議」にも時間をかけます。事前にチームで最適な手順を議論し、困難な箇所・問題の起きそうな箇所の対策を練ることでトラブルを防ぎ、品質を確保します。
3.経営計画、職場ルールも全員で決める
「方針策定会議」は、年に1度、1月に1泊2日で開催。経営陣が前年の決算結果を解説、その年の経理計画を発表するのを受けて、全員が議論して3カ年の経営方針とその年の経営計画を決めます。さらに、社員がチームを組んで「情報の共有化」などのプロジェクトを作り、12カ月の行動計画を決定。これらの進捗・繰り越し課題は、毎月のYMS会議で検証、行動改善につなげます。
また、3S開始当初は経営陣が職場のルールを決めていましたが、現在は、社員が事あるごとに、「ここをこうしたら?」と提案し、皆で決定しています。例えば、現場が持つべき技術を定めた「スキルマップ」について、現在271ある項目内容も社員が定めています。
4.お客さまに好評!「加工進捗お知らせサービス」
個々のお客さまのみが見られるウェブサイトに、作業中の現場の進捗と納品予定を現場写真付きで3日ごとに発信するもので、納品後も履歴が残ります。「お客さまからは、納品までの状況が分かってとても安心だと好評です。もしお客さまの想定と違うものを作ってしまった場合も、早く気づいて修正できます。また、お客さまに生産現場の今を見ていただけることは、社員の品質意識の高まりや自信にもつながりますね」。
5.現場が作る作業標準書で作業方法を統一
同社では全員があらゆる工程をこなす多能工。学校を卒業したての人からベテランまでが、OJTをしながら一緒に仕事をします。以前は、前社長がその都度、作業概要を各社員に指示していましたが、作業する人の思い込みが入り、順番や仕上がりのバラツキや失敗が出ていました。現在は、誰もが同じやり方と品質を実現できるよう、若手の現場社員が中心になって、
詳細な「作業標準書」をデジタルデータで作成、全員がすぐ見られるようにしています。「標準書は教わる人ではなく、教える人のためにあると考えています。A先輩とB先輩のやり方が違うことはよくあるけれど、それを一つにしたい。標準書に書かれた全てを完璧に伝えなくても、意識しながら教えるだけで効果があります。もちろん日々方法は改良しますが、必ずYMS会議で公開して変えます」。
また、給与につながる社員の評価項目と評価のウエイトを数値で示した「成長シート」を公開。社員は自分の評価も各項目の数値で把握でき、「どこを向上すればいいか」を自ら考えることができます。