CLUB GC
表紙へ グリーンレポートへ 技術情報へ Q&Aへ アンケートへ
営業力を高める
 
すぐに分かる! 注目の経営手法や市場の「今」 グリーンレポート

営業力を高める

2014/01
1.顧客の業務を理解して本質的な改善策を提案
2.自然体で生み出すホスピタリティが信頼をつくる
3.プロの知識、独自の情報を分かりやすく伝える
■コラム
高い営業力を発揮する名企業
コスト削減を入り口に、多業界での実績を基にしたコンサルティング営業を展開
ディーエムソリューションズ株式会社

  ●DMを「診断」し、コスト削減策を提案
  ●営業マンの成功事例を全社で共有
  ●工程の一部でも積極的に受注し、新規のお客さまをキャッチ

[画像]営業力を高める

1.顧客の業務を理解して本質的な改善策を提案
 
株式会社NTTドコモ  第一法人営業部  諏佐 裕也さん(左)、山本 貴之さん(右)
株式会社NTTドコモ
第一法人営業部 
諏佐 裕也さん(左)、山本 貴之さん(右)

 2010年5月、アップル社製タブレットデバイス「iPad」が発売されました。遅れること5カ月余り、NTTドコモではサムスン社製タブレットデバイス「GALAXY Tab」を発売。しかし、画面の大きさでは「iPad」の9.7インチに対し「GALAXY Tab」は7インチ。法人ユースでは、大画面の「iPad」が支持されていました。NTTドコモ第一法人営業部の山本貴之さんと諏佐裕也さんは、主要顧客である金融機関から「10インチの機種が欲しい」と要請されていました。
 「売れる商品がない状態でしたが、少しでもお客さまの声を吸収し、社内やメーカーの方に開発要請をすべく、ドコモの戦略や動向をプレゼンテーションしながら、足しげく通う日々が続きました」(山本さん)  
 その過程で、山本さんたちには、金融機関にタブレットをセールスする際のポイントが見えてきたといいます。
  「タブレットデバイスを導入してもらうには、それを使って何をしたいのかを、お客さまと共有することが重要です。そのため私たちがまずしなくてはならないのは、お客さまの業務を理解すること。何げない雑談からでも、業務の具体的な中身や課題を把握することに注力しました。また、その課題をタブレットで解決するために、タブレット製造メーカーや、金融業界で業務システムを提携している会社とのコラボレーションに積極的に取り組んだこともポイントになりました」(山本さん)  
 結果として、金融機関の大半はドコモと契約したそうです。その要因として、業務を理解した上でのタブレットの効果的な使い方のきめ細やかな提案、それに伴い金融業界にカスタマイズしたセキュリティや付加機能の強化をこちらから提案したことが、評価されたことが挙げられます。
 「新しいタブレットの厳しい差別化競争に勝つためには、タブレットがお客さまの業務の中でどう使われるかを考えなくてはダメなんですね。単なるハードの導入ではなく、業務システムへの提案へと広げています」(諏佐さん)
 さらに、お客さまの満足度を高めるために、提案内容にも気を配っているそうです。
 「例えば、その部署でコスト削減が課題になっている場合には、コスト削減をメインにアピールする提案書を作るなど、提案相手の社内評価が上がることを意識しています」(諏佐さん)  
 お客さまの組織全体はもちろん、直接関わる提案相手の立場にどれだけなれるのかということも、成功のポイントのようです。

  • お客さまの業務や業界を理解することが、本質的な改善提案の第一歩。その上で、そのお客さまがどんな印刷物を作ることで、どんなことが実現できるのかを語ることが大切。
 
2.自然体で生み出すホスピタリティが信頼をつくる
 
アクサ生命保険株式会社  マスター フィナンシャルプラン アドバイザー  手島 秀典さん(左)、  シニア フィナンシャルプラン アドバイザー  松本 敦さん(右
アクサ生命保険株式会社
マスター フィナンシャルプラン アドバイザー 
手島 秀典さん(左)、
シニア フィナンシャルプラン アドバイザー 
松本 敦さん(右)

 9割を超える世帯加入率を誇る日本の生命保険業界では、国内生保から外資、さらに最近ではインターネットで営業活動を行う会社まで、40社以上がひしめいています。その中で、インターブランド社のグローバルブランドランキングにおいて、保険会社の分野で5年連続世界第1位の評価を獲得しているのがアクサ生命です。個人向け営業のトップセールスマンとして活躍しているマスターフィナンシャルプランアドバイザーの手島秀典さんとシニアフィナンシャルプランアドバイザーの松本敦さんにお話を伺いました。
  「アクサ生命での営業活動は、とにかくお客さまと会う回数、アポイントのためにかける一日の電話の数を増やすことに注力します。お客さまと接する際、『成果を挙げよう』という気持ちはありません。保険の話をするのではなく、自己研鑽などを通じて知った知識を提供して、お客さまに役に立つこと、よい影響を与えることを心掛けています。そのため、お会いしたときとお別れするときではお客さまの表情が変わります」と手島さんは、自身が貫くお客さま本位の姿勢について語ります。初対面のときから声のトーンや口調、表情やしぐさなど、全てをできるだけソフトにして話すことを心掛けているそうです。お客さま個人の資産や収入という非常にセンシティブな情報を扱うだけに、不安な気持ちにさせることがないようにとの配慮です。
 「お客さまの疑問点や不安点を引き出し、解消するための知識や方法論・スキルをもっていれば、自然と契約はついてきます。お客さまが将来の不安以前に、目の前にお悩みがある場合は、その解消のために、弁護士などの専門家をご紹介するなど、保険の契約に結び付かないサポートをすることもあります。こちらから保険を勧めるのではなく、入っている保険に疑問や不満がある方だけに、プロとしてライフプランニングを提案し、それを解決する方法になる場合に保険をご紹介します」 
 このように自然体で接することを心掛けている手島さんは、接客時に余計な力みが出ないように、トップセールスマンとなった今でも、基本的なトレーニングであるロールプレイングを欠かすことがないそうです。
 一方、お客さまからの紹介による成果が9割を占めるという松本さんは、紹介を受ける秘訣を次のように語ります。
 「ただお願いだけをしても紹介してくださる方はいません。ライフプランニング等を通じて非常にご満足いただいたお客さまに丁寧にお願いして、ようやくお名前とご連絡先を教えていただくケースが多いですね。また、紹介された方にアポイントの電話を入れる前には、失礼にあたらないよう、必ず手書きで自己紹介のレターを書くことにしています。こちらからまずは自己開示をすることでスムーズにお会いすることができるのです」(松本さん)
 営業活動におけるファーストインプレッションは、その後の営業活動と成果を決める重要なポイントです。そのためには、お客さまの視点に立った、自然体とホスピタリティが重要だと、二人はいいます。

  • お客さまへの最初のアプローチは、自分の成果を考えず、「どうしたらお客さまの役に立てるか」に気持ちを集中して臨むことで、自然体で接することができる。お客さま視点に立ったホスピタリティが、その後の営業活動をスムーズにする。
 
 
3.プロの知識、独自の情報を分かりやすく伝える
 
ディーエムソリューションズ 株式会社   企画戦略課 大丸 雄矢さん
ディーエムソリューションズ
株式会社 
企画戦略課 大丸 雄矢さん

 幅広い業種にわたる企業や学校など、4000法人との取引実績を誇る、DM発送代行会社のディーエムソリューションズ。DMを中心とする販促物を月間1500本請け負い、ヤマト運輸のメール便で月間300万通のDMを発送しています。同社の企画戦略課の大丸雄矢さんに、テレアポ後、見込み客先でどのようにキーマンを発見し、効果的にセールスを展開するのか、ポイントを伺いました。
  「何らかの回答が必要になる質問を投げ掛け、その場の方々が誰の方を向くかで、決裁権を持ったキーマンを見極めます。しかし大切なのは、キーマンだけでなく、関わる方全員が満足することです。窓口の方、実際の作業を担当される方の負荷を最小限にすることに注力しています」(大丸さん、以下同)  
 そのために同社では、各見込み客の社内発送数量の基準に合わせて、分かりやすい換算価格表や業務フローをオリジナルで作成。担当者が社内の決裁者に説明しやすい地盤を作ります。これによって、お客さまが個々で抱える事情に応じ、同社が柔軟に対応できるということをアピールします。  
 今はインターネットなどで、発送物の1個当たりの単価など、基礎的な知識は持っているお客さまも多いのが実情。だからこそ同社では、営業マンが新人のうちから、DMに関わるあらゆる専門知識を徹底的に教育したり、広い範囲の決裁権を持たせたりすることで、お客さまの質問に極力その場で即答できるようにしています。近年、お客さまが業者を選ぶポイントは、価格だけでなく、営業マンの知識や対応力が重要になっているからです。  
 さらに、満足度を高めるために気を付けているのが、ほかでは聞けない情報を提供することだそうです。 「雑談の中で、発送代行業界にいるからこそ知り得た情報を、笑い話になるレベルで提供するだけでも、お客さまとの距離はぐっと近づきます」  
 最近は特に、営業マンが足で稼ぎ、現場で感じたことを基にした、その人ならではの情報が求められているそうです。
 「お客さまと同じ業界の企業の施策について話すのはもちろんNGですが、全く違う業界で効果を挙げた施策を具体的にお話すると、『うちでもできるかな?』と検討の俎上に上げていただくことが多いです。さまざまな業界のお客さまとの取引で得る販促ノウハウや、ウェブ広告などDM以外の効果的なツール、業界情報など、日々得られるちょっとした情報を自分なりにキャッチし勉強しておき、提供することが大切だと感じています」(同社の営業活動のポイントは、次面の囲みでもさらに詳しく紹介します)

  • 決裁権のあるキーマンが誰なのかは、回答が必要な質問をすることで判明する。
  • 高い評価を受けるためには、お客さまから求められるレスポンスを早く正確に返すことや、独自情報の提供がカギになる。
■コラム
高い営業力を発揮する名企業
コスト削減を入り口に、多業界での実績を基にしたコンサルティング営業を展開
ディーエムソリューションズ株式会社

 2005年の設立以来、毎年成長を続けるディーエムソリューションズ。DM発送代行業を基盤に、カタログや会社案内などの販促物、ウェブページの作成・検索エンジンを通した集客対策などのソリューションを提案しています。営業活動のポイントは、「いかに新規のお客さまを開拓するか」にあるといいます。

●DMを「診断」し、コスト削減策を提案
 同社の営業マンには、地域や業界などの担当分けがなく、一人ひとりが多様な業界のお客さまと接しています。その営業活動は、主に新規のお客さまへのテレアポから始まります。お客さまが現在までに作ったDMや販促活動をプロとして無料診断し、コスト削減や、より効果的な訴求の仕方を提案させてほしいと伝えます。
 「まず、営業マンは、お客さまの業態から現在の課題をあらかじめ想定するなどの準備をしてテレアポに臨むことが大切です。次に初めてお会いするステップでは、お客さまのこれまでの販促物を見せてもらいます。最初にコスト削減の方法をご提案すると伝えてあるので、ほとんどの方は見せてくださいます。拝見した販促物に対し、われわれがさまざまな業界にご提供してきた施策実績を基に、良い点・改善すべき点を診断し、そこからお客さまにマッチする仕掛けやデザイン、発送方法などの提案へと結びつけ、期待できる効果を語っていきます」

●営業マンの成功事例を全社で共有
 同社には、30人弱の営業マンがいますが、アポイントを取った後、基本的に一人で顧客対応をするため、ともすると営業のノウハウが属人化してしまいます。
  「ですから当社では、全社的な会議を月1回、各事業部の役職者の会議と各課のミーティングは週1回開催し、各営業が提案して受注につながった成功事例が全営業マンに共有されるようにしています。それにプラスして、各営業マンの成績も公開しています。数字が伸びるとすぐに周囲に分かり、『そんな案件、どうやって獲得したの?』と営業マンが集まってくるんです。全員が自然と切磋琢磨できるようになっています」
 また、各営業マンは、売上ではなく利益ベースで評価されます。
 「DMで無理な価格競争に陥るようなら、1件当たりのコストが低いウェブ広告のほうがお客さま、当社双方に効率的な場合もあり、そうした提案もしています。薄利多売の商売ですから、利益ベースの評価の方が合理的です。営業マンのモチベーション対策にもなっています」

[写真]営業マンが一堂に会す本社。「営業の仕方はさまざま。例えば大手ハウスメーカーの場合、本部へのアプローチは難しいですが、1支店のDM案件を一括受注し、そこから他の支店に採用される形で全国的に拡大するケースもあります」

営業マンが一堂に会す本社。「営業の仕方はさまざま。例えば大手ハウスメーカーの場合、本部へのアプローチは難しいですが、1支店のDM案件を一括受注し、そこから他の支店に採用される形で全国的に拡大するケースもあります」

 

●工程の一部でも積極的に受注し、 新規のお客さまをキャッチ
 同社の営業力の強さを支えているのは、発送物の企画からデザイン、印刷、発送代行まで、一貫で受注しても、いずれかの部分だけを受注しても評価される体制です。
 「発送代行でアプローチをかけたら、デザインだけ受注できたというようなこともあります。営業マンはどの部分を受注しても評価されます。アプローチがしやすい部分からその企業に入り込み、徐々にアカウントを拡大していけるので、営業活動がしやすいと思います」  
 さらに、効果的なワンストップサービスの提供を目指し、2013年の10月には、ウェブと紙媒体を合わせてお客さまごとに最も効果的な販促戦略を立てる新部署を作りました。
 「今後、当社の営業マンは、ウェブを合わせたより幅広い戦略、知識を持つ必要があるので、成功事例を共有するチーム営業がますます大切になると思います」  
  4000法人以上から信頼を得ている同社の実績は、さまざまな業界での成功事例を属人化させることなくしっかりと共有し、多彩な表現方法の中からそれぞれのお客さまのゴールの実現に最適なものを提案してきた結果でした。

[写真]コスト削減だけでなく、新しいDM手法の提案がお客さまに喜ばれるそうです。「バリアブル印刷によるワン・トゥ・ワンのデザインのDMなどは、とても反応がよいです。大手マーケティング会社とすでに付き合いのあるお客さまの切り替えに成功したこともあります」

コスト削減だけでなく、新しいDM手法の提案がお客さまに喜ばれるそうです。「バリアブル印刷によるワン・トゥ・ワンのデザインのDMなどは、とても反応がよいです。大手マーケティング会社とすでに付き合いのあるお客さまの切り替えに成功したこともあります」

 
back
Copyright(c) FUJIFILM BUSINESS SUPPLY CO., LTD. All Rights Reserved.