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ビジネスを活性化するネットワークづくり
 
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ビジネスを活性化するネットワークづくり

2013/10
1.小組織での丁寧な啓蒙で業界をレベルアップ
2.高付加価値のものづくりビジネスの創出を目指す
■コラム
「ビジネスを活性化するネットワーク」好事例
同じ志の下、新しさを取り込む学びで
各社を強く変えていく「チャンスの場」  京都試作ネット

  ●学びで刺激し合い、会員の力を底上げする
  ●互いの強みを知り、有機的に受注
  ●共同活動で生まれる「想定外のチャンス」

[画像]ビジネスを活性化するネットワークづくり

1.小組織での丁寧な啓蒙で業界をレベルアップ
体系的な研修で「静脈産業」の理念や技術・技能を業界に浸透
RUMアライアンスの 代表理事を務める  株式会社会宝産業  近藤 典彦社長
RUMアライアンスの
代表理事を務める
株式会社会宝産業 
近藤 典彦社長

 NPO法人「RUM(リ・ユース・モータリゼーション)アライアンス」(東京都港区、近藤典彦代表理事)は、自動車の解体、中古部品の輸出などを行う会宝産業(石川県金沢市)の社長でもある近藤代表理事が中心となり、全国の自動車リサイクル事業者・十数社で運営する組織です。元々は、2005年の自動車リサイクル法の本格施行を見据えた同法の勉強会からスタートしたもので、自動車リサイクル事業が地球環境に重要な役割を担っていることを会員が自覚し、「競争よりも協調」で業界のレベルアップを図ろうと、2003年9月に設立されました。
「車を作る『動脈産業』だけでなく、中古のエンジンや部品を再生し、資源を循環させる 『静脈産業』が確立されなければ、限りある資源はゴミになっていくばかり。私たち静脈産業が『循環型社会の一翼を担う』という共通意識を持ち、技術を磨くことで、単なる解体業や中古材料・部品のブローカーではない、『環境ビジネス』の担い手になろうと考えたのです」(近藤代表理事、以下同)
 こうして設立された同組織は、自動車構成資材の「再資源化」や「環境負荷ゼロ」への取り組みを活動の柱に掲げ、業界全体に理念や知識・技術・技能を浸透させるための「人材育成」に力を入れてきました。
 その具体的な実践の拠点として、2007年には自動車リサイクル技能者育成の研修機関「IREC(国際リサイクル教育センター)」を会宝産業の敷地内に開設しました。カリキュラムは、技能者・管理者・営業担当者の3コースを設置。1週間の講義と実技からなり、環境問題に関するさまざまな理論、事業における環境プランニング、部品輸出時に必要な国際業務といった知識から、車体構造の基本や生産業務、生産設備管理といった実務に直結するものまで、非常に幅広い内容になっています。
 対象者も、新入社員から経営者層まで幅広く受け入れています。また、2010年からはJICA(国際協力機構)と協力して、中南米やアフリカ諸国からの研修生の受け入れも実施し、日本の自動車リサイクル技術・技能を世界に広めようとしています。
 こうした人材育成は、会員企業で働く社員のモラールアップや仕事への誇りにつながるとともに、静脈産業を担う仲間としての一体感や、循環型社会の一翼との意識を強めました。この活動が功を奏し、2012年に開催された「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」への出展とセミナー開催の機会を得るまでになりました。
「RUMアライアンスの連携で、『もったいない(=リユース)』と『あとしまつ(=リサイクル)』という言葉を世界の共通語にするという私たちの夢に、より近づくことができると考えています」

連携体制を基に、地元へのアピールや品質標準化などの取り組みに着手

 一方、国内で年間約350万台にもなる廃車車両を有効活用し、廃棄物の大幅な圧縮に貢献している自動車リサイクル業界の活動は、社会的に有意義でありながら、外からは見えにくいのが実情です。そこで、会員企業が本拠を置く各地の住民に、自動車リサイクルの仕組みを伝え、静脈産業を身近に感じてもらうための「自動車リサイクル祭り」を開催しています。祭りでは、大型重機による自動車解体ショーや工場見学、チャリティーオークション、無料買い取り査定などを実施。今年8月には会員3社がそれぞれの地元で行い、いずれも大盛況でした。今後は会員間で運営ノウハウを提供し合い、組織を挙げた全国縦断型のイベントとして定着させる考えです。
 また、同組織では、各社が抱える課題や取り組みについて情報や意見を交わし、解決のための知恵を出し合う月例会を開催しています。最近では、輸送に関するコスト低減に向けた取り組みや危険物を積んだ車両の処理など、実践的な課題が話し合われました。こうした情報共有により、個々では見えなかった無駄やリスクの迅速な発見、各社のビジネスやリサイクル技術の切磋琢磨につながっています。
 さらに、「日本製自動車リサイクル部品の需要が海外で急増していることを知り、世界に目を向ける会員も増えている」など、ビジネスの視野が広がることも、会員にとってのメリットといえそうです。
 近年は、会宝産業が中核となった新たな取り組みも始めています。一つは、自動車リサイクルの工程・作業手順や部品の評価方法などの標準化です。標準化により、人の命を預かる自動車部品の高い品質を守るとともに、各社で共通する生産工程を一緒に開発することでよりよい手法を効率的に確立し、業界内での差別化を図り、公正な取引につなげることも目指します。会宝産業は、中古エンジンの品質に関してJISとは異なる独自規格「JRS(ジャパン・リユース・スタンダード)」を2010年に開発し、現在ISO化を目指して、そのスタート段階である「標準仕様書」の認証を働き掛けています。
 もう一つは、一部の会員企業で取り組んでいる電気自動車の製造です。使用済み自動車のエンジンを取り外し、電気モーターを組み込む「コンバートEV」という手法で製造された電気自動車は、政府も後援する電気自動車イベント「JAPAN EV Festival」のレース出場で上位に入るなど、優れた性能を実現しています。
 こうした活動は、同組織の共同活動で培った連携体制があるからこそ可能になった挑戦だといいます。

[写真]会宝産業で行われた「自動車リサイクル祭り」。自動車解体ショーなどの実演も人気

会宝産業で行われた「自動車リサイクル祭り」。自動車解体ショーなどの実演も人気

  • 優れたノウハウや技術を持つ中小の印刷会社で知恵を出し合い、課題に当たることは、組織として業界内でビジネスを優位に進めることにつながるのではないか。印刷会社でも、産業廃棄物のリサイクルや化学薬品の処理といった環境対応、デジタルコンテンツへの技術的対応など、同業者が力を合わせることで効率よく進められるものはある。
  • 体系的な人材育成はもちろん、地元住民とのコミュニケーションを図り、事業内容や社会的な意義をアピールするためのイベントの企画・開催についても同業者同士が組織的に行う取り組みは、印刷会社にも有効。
2.高付加価値のものづくりビジネスの創出を目指す
ものづくり企業が「試作」で連携スピードと高付加価値の技術を提供

 京都に本拠を置く中小のものづくり企業でつくる京都試作ネット(京都市、竹田正俊代表理事)は、ウェブによる受注で、顧客の製品開発における試作・加工の技術とソリューションを提供するネットワークです。
 切削、板金、表面処理のほか、デザインや電子回路設計、プリント基板、ソフトウエア開発などの96社(2013年8月現在)が参画し、各社の得意な加工分野における付加価値の高い技術を提供しています。
「開発工程で最も大切なのは、コストではなく時間」(竹田代表理事、以下同)との考えから、同組織では顧客からの相談や問い合わせに原則2時間で応える仕組みを整えています。具体的な流れは次のようになっています。
(1)依頼者(顧客)がウェブサイトやFAXで試作を依頼
(2)コア企業が依頼内容を見て、最も適格な会員企業の担当者にメールを発信
(3)指名された企業が依頼者に連絡し、2時間以内にレスポンス
 こうしてもたらされる案件は月平均70件を数えます。 多様な技術を持つ京都の企業が、スピードと技術力を強みに「試作」ソリューションを提供するというコンセプトが伝わり、同組織は今や、国内外の半導体や精密機器などの大手メーカーが自社で解決できない開発の課題を持ち込む「駆け込み寺」として、なくてはならない存在になりました。そして、これらの企業が少しずつ開発拠点を京都に移転するまでに至っています。

[写真]京都試作ネットのウェブサイト。顧客はここから問い合わせや発注をする

京都試作ネットのウェブサイト。顧客はここから問い合わせや発注をする

「京都のものづくりを支える」という志を原動力に、強みを磨く

 「京都を試作の一大集積地にする」―。同組織の目標は明快です。当初より行政主導ではなく、京都の産業の未来に危機感を持った企業の自主的な集まりという点が、多くの共同受注組織とは異なっています。 「京都に根ざした長期的なビジネスを育てるために、各社が強みを磨き、どこにも負けない独自性を持つための挑戦・実験の場が、京都試作ネットだと思っています」
 そのため、入会に当たっては、経営者の同組織の目標・理念への賛同と人格が厳しく問われます。 「たとえ現在の会員にはない高い技術を持っていたとしても、目の前の利潤を追求するだけの企業は入会することができません」
 また、当初からの集まりの目的が、P・F・ドラッカーのマネジメント理論を基にしたさまざまな勉強会を中核としているのも大きな特徴です。
「受注が主な目的になると、目先の仕事を受けることに集中し、仕事の取り合いになってしまいがちです。しかし、志と学びを核とする私たちは、会員の技術革新や京都での新しいビジネスの創造に焦点を置くことができ、仕事の配分にかかわらず、強いつながりができています」
 会員同士の固い信頼関係は、大手企業の開発プロジェクトに参画するといった会員企業の成功例を深くまで学び合うことにつながっており、各社の強みとなる「技術力・ソリューション力」の進化を促しています

  • 京都試作ネットのように、特定分野に強みを持つ中小の印刷会社がインターネットを通じてつながることで、顧客の注文を効率的に受け、スピード対応と安定した品質が武器の印刷サービスを適正価格で提供する仕組みには一考の価値がある。付加価値の高い印刷技術を持ち寄り、生産や営業面で有機的に連携することで、高品質印刷を求めるエンドユーザーや大手印刷会社からの信頼が高まる可能性も。
  • 例えば、地元の町おこしを図るという同じ志を持つ各地の印刷会社が、「学び合い」によって互いの成功事例を詳細に共有し、強みを磨き合う取り組みも有効ではないか。
■コラム
同じ志の下、新しさを取り込む学びで
各社を強く変えていく「チャンスの場」 −京都試作ネット−
京都試作ネットの 代表理事を務める 株式会社クロスエフェクト  竹田 正俊社長
京都試作ネットの
代表理事を務める
株式会社クロスエフェクト 
竹田 正俊社長

 京都試作ネットの前身は、機械金属を中心とするものづくり企業の若手経営者による、ドラッカーのマネジメント理論勉強会の集まりでした。ITバブルがはじけた2000年、各社の仕事が激減。「作るものの付加価値を高めなくては、京都のものづくりは生き残れない」と考えたメンバーは、「京都を開発品の試作で唯一無二の拠点にする」という目標を立てました。そのために2001年、従来の「学び」に加え、その実践としての「共同受注」、1社では難しい大企業への営業を共同で行う「実験場」という3つの活動で成り立つ京都試作ネットを立ち上げたのです。


●学びで刺激し合い、会員の力を底上げする
 同組織の基本は、「学び」です。入会する企業の経営者はまず、以前からの会員との差をなくすため、ドラッカーのマネジメント理論の真髄を全6巻のDVDを使った講習で学びます。また、会員は、開発ノウハウや効果的なウェブサイトの構築、社員教育といった多様な経営課題に関する勉強会で毎月のように集まります。
 これとは別に、毎月1回の理事会で、コア企業25社が自社ビジネスの状況をプレゼンし、それを互いにベンチマークすることが貴重な学びの機会になっています。「いわば自慢合戦。経営手法や技術の優れたところを聞き、刺激をもらいます。工場見学もし、よく知る仲間がブレイクスルーしたりする様子もそばでじっくり見られるので、得るものが大きいんです」(竹田代表理事、以下同)

[画像]理事を務めるコア企業25社が集う、月1回の 理事会の様子

理事を務めるコア企業25社が集う、月1回の 理事会の様子

●互いの強みを知り、有機的に受注
 「共同受注」には、コア企業が順に当番となり、問い合わせを受けるとその週の当番が会員各社の強みを見て、仕事を受ける会員を選びます。同組織では、技術を細分化して強みを評価した技術マップで、各社を差別化しています。会員は、同組織の中で「強み」を明確にアピールしなくては受注を獲得できません。会員同士のベンチマークや勉強会で日々強みを育て、大きく成長していく企業も多いといいます。
 また、受注した会員は、同組織の仕事を最優先し、自社の仕事もしながら、組織の品質・コスト・納期のレベルに傷を付けないことが義務になっています。

●共同活動で生まれる「想定外のチャンス」
 「実験場」と呼ばれる営業活動は、コア企業25社から選りすぐられた約40人が、京都試作ネットとしての展示会への出展を企画、会場で名刺交換をした大企業へ共同で戦略を立てて訪問、商談するまでを行っています。
「顧客企業への訪問では、顧客が興味を示した業種だけでなく、違う業種を含む4社で訪問するのがポイント」。ある開発課題を解決したい顧客が1社の技術を求めて話を詰めていくと、別の課題も見えてきたり、違う案件の話が出たりします。「隠れていた顧客のニーズに、他の企業の技術がマッチして思わぬ受注を得ることがよくあります。『4社営業』は、チャンスを逃さないための工夫なんです」
 こうして、同組織の試作の相談実績は、4000件を超えました。しかし意外にも、会員各社の売上に占める組織からの仕事の割合は、数パーセント程度だといいます。
「それよりも、単独では不可能だった気付きや仕事の機会が得られることこそ、京都試作ネットにいる最も大きな意味。新しい風が少し入るだけで、企業は変われるからです」と竹田さんは実感しています。工業品の3Dモデルを作っていた竹田さんが経営するクロスエフェクトも、医療系の企業から思わぬ声が掛かり、臓器の組織内部までを再現した3Dモデルの生産という新しいビジネスが生まれました。
 中小の印刷会社がネットワークをつくり、京都試作ネットのような団結力の高い学びや営業活動で、独自技術やノウハウを磨く新しいチャンスに真剣に取り組むことは、大手印刷会社に伍した力を持つための一つの方法になるのではないでしょうか。

[写真]株式会社クロスエフェクトの「心臓シミュレーター」は、患者の心臓の3D画像から内部の血管までを再現した3Dモデル。医療現場で手術前のシミュレーションなどに使われる。精巧でありながら製造コストを抑えた画期的な製品として注目される

株式会社クロスエフェクトの「心臓シミュレーター」は、患者の心臓の3D画像から内部の血管までを再現した3Dモデル。
医療現場で手術前のシミュレーションなどに使われる。
精巧でありながら製造コストを抑えた画期的な製品として注目される

 
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