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顧客満足度の高め方
 
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顧客満足度の高め方

2013/1
1.従業員の専門技能向上でニーズ情報を集める
2.他社がいやがることに徹底して取り組む
3.利用者の声を関係者で共有する空港
4.一人ひとりがお客さまに注目 製造業の目でサービスをカイゼン
  −中部国際空港株式会社−
  ●従業員の誰もが顧客の立場で考える
  ●製造業のサービスポテンシャル

[イラスト]

1.従業員の専門技能向上でニーズ情報を集める

 生活に関わるさまざまな商品の販売を通じて製造業者と消費者とをつなぐ小売業は、時代の動きを敏感に映す主要産業の一つです。中でも、GMS(ゼネラル・マーチャンダイズ・ストア)と呼ばれるチェーン型の総合スーパーは、今や小売業をリードする業態となっています。その中で、大手小売業のイオンリテール株式会社(千葉県千葉市)は、消費者に最も近い場所にいる小売業としてのサービスを充実させるため、独自の社内認定資格制度を導入しています。
 社内認定資格は、現在「イオン鮮魚士」「イオンリカーアドバイザー」「イオン寿司マスター」「チェックアウト」など計30種類あり、6万人強の従業員が何らかの資格を取得しています。この制度は、実践訓練を行いながら専門性の高い人材を育て、売り場に配置することで、顧客満足度を高めることを目指して導入されました。
 例えば、「イオンサイクルアドバイザー」で、自らも趣味でサイクリングを楽しむ「イオンバイク美浜幸町店」(2012年9月分社)の小澤元店長は、「単にモノを売ることより、お客さまの悩みや困りごとのお手伝いをするように意識しています」と、接客時の心構えを明かします。熱心な接客は、顧客満足度向上という成果を生んでいます。
 顧客の質問や相談に的確に応えられる資格者を配置すれば、顧客は商品の特徴や取り扱い方法などの知識が得られ、自分だけで商品を選ぶよりも、より満足のいく買い物ができます。顧客が具体的な相談をしやすくなるため、店に顧客が望む商品やサービスといったニーズの情報が自然に集まるのも大きな利点です。
 同社の資格制度は、仕事に臨む従業員のモチベーションに働きかける効用もあります。「自分の知識や技術が役立ち、 お客さまから感謝されるのは大きな励み」(小澤店長)という声に代表されるように、従業員が感じる顧客満足度の高まりは、それぞれのさらなる接客力向上につながっているようです。

[写真]イオンバイク美浜幸町店の小澤店長(右)。豊富な商品知で顧客からの信頼も厚い

イオンバイク美浜幸町店の小澤店長(右)。豊富な商品知で顧客からの信頼も厚い

2.他社がいやがることに徹底して取り組む

 再生ドラム缶の製造などを手掛ける山本容器株式会社(大阪府大阪市)は、主要顧客である化成品メーカーや製薬会社などの納品への要望に迅速に応えられる一貫生産体制の構築に力を入れています。  同社では、顧客が製品の生産で使う原材料や自社の製品を入れて運搬・保管する際に欠かせない、鋼製ドラム缶の再生品を製造しています。この鋼製ドラム缶は頑丈なので、1回で使い捨てられることなく、8割強が回収、改造を経て再利用されます。
 同社は、再生品の中でも、使用済みの鋼製ドラム缶にポリエチレン製の内袋容器を組み込んだ「ケミドラム缶」で出荷量、売上高ともに国内トップの座にあります。再生品を使うとCO2排出量が約34%減るといわれているため、環境対策上からも一定の需要が見込まれていますが、ケミドラム缶への再生を手掛ける業者は極めて少ないのが実情。それは、ケミドラム缶が構造上、特に加工が複雑で面倒な上、それに伴う設備投資を要するためです。それゆえ回収―再生工程は細分化され、それぞれに専門業者が担っています。
 こうした市場のあり方に一種の「すき間(ニッチ)」 を見出した同社は、大阪府堺市の工場に再生ケミドラム缶専用の加工ラインを構築し、必要な作業を自社で一貫して行う体制を整えています。  顧客にとって、複数社を介さず、すべて自前で対応できる同社の一貫体制は大きな利点。複数の業者が関わることによる移動時間や経費が圧縮できるからです。同社は、再生品の「素材」となる空のドラム缶の回収も、他社のように納品時を利用して回収するのみならず、回収のためだけに訪問するという要望にも快く対応しています。
 納品、回収両面における「顧客本位」のフォローは、同業他社がひしめく業界内にあって長年にわたる安定的な受注確保を促進。堺工場ライン構築の陣頭指揮を執った山本修嗣専務は、「一連のサービスは、顧客の獲得や信頼関係の構築、事業の安定化につながっている」と言います。

[写真]山本容器の再生ドラム工場

山本容器の再生ドラム工場

3.利用者の声を関係者で共有する空港

 2005年の開港以来、「CS世界ナンバーワン空港の実現」を掲げる中部国際空港株式会社(愛知県常滑市、通称・セントレア)は、国際空港のサービス品質を評価する世界的に権威ある調査「ASQ」※において、「年間旅客数500万〜1500万人」級の施設の部門で、開港時からの4年間と、2011年に世界首位を獲得しています。
 同社は、空港内に設置した「ご意見箱」や「案内所」のほか、「公式ウェブサイト」「テレホンセンター」「各担当部」などに寄せられた声や対応内容をデータベース化し、空港会社とグループ会社の全社員が閲覧できる仕組みを取り入れています。
 また、空港内の官公署・航空会社・商業テナント・清掃会社など、全35事業体がそれぞれ実施した改善事例や、顧客からの要望などの情報を共有する「CS空港連絡会」を設けているのも、中部国際空港の独自の取り組みです。オープンな場での情報共有は、課題解決に向けた各事業体の積極的な取り組みを促し、顧客の声を基にした改善策のスムーズな実現につながっています。
 そのほか、スタッフ部門を含めた全従業員がCS意識を醸成するための仕組みも構築しています(詳しくは下の囲みと左面「顧客満足度向上の名企業」で紹介)。
 顧客満足度を高めていくためには、サービスを提供する側の一方的なお仕着せではなく、顧客の声に耳を傾け、改善を進めていくという双方向での取り組みがカギになりそうです。

[写真]旅客ターミナルビルなどを巡回する案内ボランティア。

旅客ターミナルビルなどを巡回する案内ボランティア。従業員や地域住民が行っている。
そのほか、各部署の役職者は毎日ターミナル内などを回り、顧客の状況の変化をチェックすることを習慣にしている。
さまざまな関係者が顧客の声を集める。

4.一人ひとりがお客さまに注目 製造業の目でサービスをカイゼン
  −中部国際空港株式会社−

 利用者を最優先に考えた、顧客満足度で世界ナンバーワンの空港を目指す」―。中部国際空港の初代社長を務めた、トヨタ自動車出身の平野幸久氏が開港当時に掲げた基本姿勢は、相談役となった今も変わりません。同社が心を砕いたのは、日ごろの営業活動や商談、接客などから得られた顧客の苦情や提案を、従業員一人ひとりが漏らさず取り込み、それを社内で共有することでした。
 その仕組みの一つが、顧客の声の「データベース化」です。顧客から苦情や要望などを受けた従業員が細大漏らさずシステムに入力し、全社的に共有して問題解決に当たるもので、寄せられた声は集計され、意見の多いものは解決策を検討して実行に移されます。
 「たまたまある店舗で、私の妻が販売員に漏らした意見が、すぐにデータベースに記録されているのを見て驚きました。システムが従業員の隅々にまで行き渡っていることを実感しました」(平野相談役)。
 現場が聞いた顧客からの要望や苦情、提案を生のままその場で残し、共有するための仕組みといえます。顧客満足度を高める第一歩は、このように顧客の声を謙虚に受け止めることではないでしょうか。

[写真]空港に訪れた誰もが利用できる展望風呂「風(フー)の湯」(上)、無料で開放され、毎日にぎわう「スカイデッキ」(下)

空港に訪れた誰もが利用できる展望風呂「風(フー)の湯」(上)、
無料で開放され、毎日にぎわう「スカイデッキ」(下)

平野 幸久 相談役
平野 幸久 相談役

●従業員の誰もが顧客の立場で考える
 「データベース化」と並び同社が力を入れるのは、従業員が常に顧客の立場を意識する活動です。
 「Be Columbus!」制度の狙いの一つは、顧客満足度向上のための方策を、経験に縛られず自由に発想するよう、従業員に促すこと。「万一うまくいかなくてもOK。お客さまのためにチャレンジすることが大事である」と意識づけるための取り組みです。
 また、スタッフ部門も含めた全部署から担当者レベルの社員が1年間、所属部の代表者として集まり、「CSワーキンググループ」を運営。各現場から持ち寄った困りごとなどを共有して、顧客の便宜を高めるための改善策を考えています。
 このように、あらゆる部署の従業員が、常識に捉われず知恵を絞る企業姿勢を持つ同社では、「スカイデッキ」のフェンスを、航空ファンがカメラのレンズを楽に通せるようワイヤー式に改良したり、伊勢湾を望む国内空港初の展望風呂を作ったりといった試みを実現。また、それまでの空港にはなかったホールやイベントプラザなども設け、会議やさまざまな発表会、「国際航空宇宙展」の開催など、空港を、新たなビジネスの機会を提供する場としても変貌させました。


●製造業のサービスポテンシャル
 空港には長年磨きをかけたサービス手法がありますが、「製造業の視点で見ると、空港業にはまだまだ改善の余地があることが分かりました」と平野相談役は率直に振り返ります。
 セントレアグループが直営するお土産店や免税店などでは、トヨタ自動車の「かんばん方式」の考え方を生かして、商品在庫数の管理を徹底することで、最新の顧客ニーズを把握し、無駄な在庫を減らして品揃えの充実につなげています。また、QCサークル活動で、事業体間のチームワークを高めたり、「PDCA」の意識を定着させたりといった効果を挙げています。
 そのほか、。垰の型で、利用者の移動距離を抑える旅客ターミナルビル⊆蟆拱搬送設備に検査装置を組み込み、国際線チェックイン時の手荷物受託による混雑を解消する日本初の方式の採用―などには、作業の効率性を追求する製造ラインの構築にも似た視点が感じられます。
 「業務の合理性や生産性を突き詰める日本の製造業の努力は素晴らしい」と平野相談役は製造業のポテンシャルの高さをたたえます。その努力を目の前の顧客の視点から突き詰めることが、慣習に捉われない顧客満足度向上のアイデア創出につながるのではないでしょうか。

 
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