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守り抜く!製品のクオリティー
 
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守り抜く! 製品のクオリティー

2012/10
1.高度経済成長を支えたTQC活動
2.改善活動には終わりがない
3.自ら原因を発見し改善する意識を促す
4.品質管理の名企業
  「全員参加」と「率先垂範」に徹する −ゼロ精工株式会社−
  ●測定器も及ばぬ人間の力
  ●従業員も機械も健康が第一

[イラスト]

1.高度経済成長を支えた TQC活動

 かつて、日本のさまざまな製品が海外市場に進出し始めたころ、日本製品は「品質の良さ」で群を抜いていました。日本の製造業が戦後いち早く立ち直り、その後の高度経済成長期に活躍の舞台を海外にまで広げられたのは、国の後押しを受けて各社が品質改善活動に真剣に取り組んだからだといわれています。
 品質の安定化に狙いを定めた日本の取り組みを代表するのが、TQC(Total-Quality-Control:全社的品質管理)です。同活動の中心は、QCサークル活動という現場の数人単位による小集団活動。現場の監督者と作業担当者が、品質管理のための具体的な活動のアイデアを出し合い、実行するものです。TQCはもともと、製品の品質向上に照準を合わせたものですが、生産部門だけでなく、営業・総務・経理なども含めた全員参加型であることが大きな特徴。上からの押し付けでなく、ボトムアップによる自主的な改善活動です。その進化形で、経営全般にわたる質の向上を目的とするTQM(Total-Quality-Management:総合的品質管理)は今日、国内外の製造業の多くが取り入れています。

2.改善活動には終わりがない

 暖房器具、キッチン関連機器、学校体育機器などの製造を手掛ける羽生田製作所(新潟県南蒲原郡)は、製品の品質向上を目指す熱心な改善活動を続けたことが評価され、日本科学技術連盟の「日本品質奨励賞」の2011年度「TQM奨励賞」を受賞しました。
 「TQMはボトムアップによる全員参加型の活動であるため、会社を一つにする手法としても役立った」。同社の窪田和司社長は、参加者全員の力がモノを言うTQM活動の成果をそのように振り返ります。
 同社では、本社事務所と工場とをつなぐ通路を「QCサークルストリート」と名付け、QCサークル活動の成果や改善提案の内容などを掲示しています。

 活動の「見える化」といえるもので、基本的に職場単位で6〜12人が一つのサークルとなり、現在13サークルが取り組んでいます。全員参加ということで、社員はもちろん、パート社員や派遣社員も加わっています。
 通路の壁面は、各サークルの掲示板と改善提案「グッジョブシート」の紹介コーナーとなっています。安全対策・品質向上・生産性向上など、提案内容はどのようなものでも構いません。その中で、特に優秀と社長が認めたものは、MVG(Most Valuable Good-job)として、毎月1〜4件が選ばれます。
 窪田社長は「一人一人の経験と勘とコツに寄りかからず、組織的で活力ある職場をつくるのに効果的」と、従業員が一体で臨む活動のメリットを強調します。
 また、製造業の現場でよく用いられる5Sでは5番目に位置付けられる「しつけ」を先頭に並べ替えた、独自の「NEW5S活動」を推進。『職場の教養』という小冊子を従業員が1段落ずつ音読し、最後に当日の担当者が感想を述べる「輪読」や、挨拶の実践、基本理念・行動指針の斉唱などを行う「朝のモラールアップ訓練」を職場単位で毎日行っています。「良質のものづくりをするためには習慣付けられたしつけが大切」(窪田社長)であるという考えによるものです。
 油圧機器など各種精密部品加工で定評があり、ロールス・ロイス社などを顧客に持つゼロ精工(兵庫県尼崎市)は、品質管理の手法として、誰でも一目で分かる加工作業の「手順書」を生産技術部と現場の作業者が話し合って作成。作業者が変わっても工程を滞らせたり、不良品を出したりしないようにし、顧客である発注先に見せたときに「そこまで詳しく規定しているんですね」と逆に驚かれるほど、品質管理の「見える化」にアグレッシブに取り組んでいます。

羽生田製作所社内の「QCサークルストリート」

羽生田製作所社内の「QCサークルストリート」

作業を詳細に規定したゼロ精工の作業費

写真やイラストを入れ、作業を詳細に規定したゼロ精工の作業費。
ある部分を製造する一工程のほんの一部を抜粋。

3.自ら原因を発見し改善する意識を促す

 日本が世界に品質を誇る製造業の代表格である自動車産業でも、やはり多くの企業が高い品質を維持するための活動に熱心に取り組み、不良品を出さない仕組みづくりに不断の努力を払っています。  例えば、ある自動車部品メーカーでは、製造ラインの一角にスチール製の「やり直し棚」を設けることで、品質に対する従業員の意識が日常的に高まるように工夫しています。「不具合の原因と改善方法を自ら見つけ出すことの大切さ」を常に忘れないために導入された仕組みです。
 この会社の管理者は、製造工程で作業者のミスを発見すると、すぐには叱らず、その不良品を黙って「やり直し棚」の本人の区画に置いておきます。この棚は全員が目にするので、「彼が社内クレームを起こした」ということが一気に知れ渡ります。
 半ば名指しをされたことで、その不良品は彼が自分で解決しなければならない「個人の問題」となります。彼は「どこに原因があったのか、同じ過ちを二度としないためには、どうすればよいのか」を必死に考え、不具合が起きないような答えを自ら導き出します。やり直し品が不合格であれば、試行錯誤を繰り返すことになります。自分で考え抜いた解決策は必ず身につくはずです。
 この仕組みの背景には「失敗はただ単に叱るのではなく、どこがなぜいけなかったのか、本人に発見させることが大切」という考え方があります。実際、「やり直し棚」を取り入れたことで、この会社では、不良品の発生につながるうっかりミスが激減したそうです。これは、より良い品質での納品が求められる印刷の世界でも、参考になる手法ではないでしょうか。
 これらの会社に共通するのは、良質の製品提供による顧客満足を目指して、全員参加で改善活動を重ねていることです。部門担当者だけが分かるのではなく、誰にでも理解できるようなツール類の整備も、全員が情報共有するための手段といえるでしょう。
 これらの事例は印刷業界でも応用できます。自社の顧客が製品やサービスに何を求めているかを具体的に規定し、それを「守るべき品質」としてしっかりとつかむことを従業員が習慣化できれば、健全な競争に打ち勝つためにも有効な手立てとなるはずです。

4.品質管理の名企業
 「全員参加」と「率先垂範」に徹する −ゼロ精工株式会社−

 「溜息3秒」―。精密部品加工メーカーのゼロ精工が開発してコンシューマー市場に送り出し、話題となっているボールペンとスタンドの名前です。無垢の金属から削り出したような美しいボールペンを差し込むと、まるで深い溜息をつくように、ゆっくり3秒をかけてスタンドに吸い込まれていきます。
 この動きは、ペンの重みで押されたスタンド内の空気が小穴から静かに抜けることで生じる摩擦の力によるもの。ペン本体とスタンドの穴との隙間は、ぴったり1000分の3ミリ。同社の圧倒的な加工精度を利用したものです。高品質への要求が格段に厳しいといわれる最新鋭旅客機「ボーイング787」にエンジンを供給するロールス・ロイス社の「ベストサプライヤー」に選ばれるなど、その実力は国際的にも認められています。

文具市場でヒットを呼んでいる「溜息3秒」

文具市場でヒットを呼んでいる「溜息3秒」。
ボールペンもペンスタンドもゼロ精工の精緻な技で作られている

文具市場でヒットを呼んでいる「溜息3秒」

品質の高さで世界的に評価を受けるゼロ精工の金属部品

岡本 仁会長
岡本 仁会長

●測定器も及ばぬ人間の力
 同社の最新鋭工場は、材料投入から完成品の測定まで自動化されています。ところが、最終工程では、なんと人の手による全品検査が行われています。活躍するのは、1000分の1ミリの凹凸を見極める指先を持ったマイスターと呼ばれる熟練者。現場作業ばかりでなく、その技を後進に伝える役目を委ねられています。
 「品質を高いレベルで継続的に保つためには機械任せではなく、測定器も及ばない人間の五感がモノを言う」。品質に対する思いを岡本仁会長はそう語ります。
 「人間の力」を尊重するために同社が心掛けているのは、社員本位の職場環境づくりです。「会社は社員のもの。だから、全員が製造や経営の改善に関わる意識を持つことが大切」という岡本会長の考え方が社内に浸透。「大切なのは、上からの押し付けではなく、自分の仕事や毎日使う設備を愛し、意識を傾けること」。そこへと導く手立てとして同社が取り入れているのが、全員参加の「改善提案制度」です。
 例えば、これまで業者に委託していた清掃を従業員が手分けするようにして、業者への支払い分を福利厚生に充てるという提案は、社員から自発的に出されたものでした。
 この制度は、製品の品質をはじめ、製造設備、職場環境など、仕事に関わるあらゆるものへの意識付けを促すのが狙い。提案の内容や方法は不問で、数行の走り書きでも、写真を添えた書面でも構いません。優秀提案には、社員全員の投票が行われ、それを踏まえた上で役員が評価する「ベスト社員賞」として、年度初めに表彰されます。


●従業員も機械も健康が第一
 「全員参加」と「率先垂範」を重視する姿勢は、上下の別なく、徹底的に論議するという社内風土を育みました。例えば、若い社員が「上司の度重なる喫煙時間が作業を滞らせる」と直訴。その勇気は「喫煙は時間と場所を決めて1日4回」という残業時間軽減策に結び付きました。これを機に喫煙者は半減し、週末の定時退社を根付かせたそうです。また、各部署で毎朝、現状に問題がないかを話し合う「朝会」では、1年目の社員も意見をぶつけ合います。
 併せて同社が重視しているのは、「健康管理」です。これは、「心身共に健康な状態が品質の安定的な維持につながる」という岡本会長の信念に基づくもの。熟練者の指先がささいな傷を見逃さないのも健康の支えがあるからこそでしょう。
 社員の体も健康で、誰でも自由にモノが言えるという空気も健全な職場は、同じ社員が辞めずに長く働き続けられる環境をつくり、熟練者の輩出や品質の安定を導きます。実際に、同社では途中で辞める社員はほとんどいないといいます。「全員が経営者」の意識で重ねる地道な努力が、高いレベルの品質を保ち続ける秘訣であることを物語っているようです。

 
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