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クラウドサービスで変わる印刷ビジネス
 
感圧紙の業界の未来を考える グリーンレポート

クラウドサービスで変わる印刷ビジネス

2012/4/10
1.「クラウド」とは?
 ●保有から利用へ。IT環境を変える「クラウド」
 ●コストの低減とスピード対応が魅力

2.印刷業界でも活用が進むクラウドサービス
 ●ファイル送信から印刷フローの一元管理まで

3.オンライン校正システムに期待が高まる
 ●煩雑な校正作業を一気に効率化
 ●校了データの電子書籍・デジタルサイネージへの運用も支援

4.今後の印刷業界におけるクラウドコンピューティング
 ●クラウドの利用で生まれる余力をサービス強化に
 ●震災で高まった危機意識でさらに伸張

1.「クラウド」とは?

●保有から利用へ。IT環境を変える「クラウド」
 最近、新聞やテレビで頻繁に見聞きするようになった「クラウド」。クラウドとは、「クラウドコンピューティング」あるいはそのサービスのことを指しています。
 従来のコンピューティング環境は、自分のパソコン(あるいは会社のネットワーク上)にソフトウエアやデータがあり、個人や会社で保有・管理していました。これに対してクラウドコンピューティングの場合は、システムやソフトウエア、データはインターネット上のサーバー、つまり“クラウド(雲)”の中にあり、その所在を意識することなく、インターネットを介して必要なときに必要なだけ利用する仕組みです。例えば、メールやソーシャル・ネットワーキング・サービスの「Facebook」、動画共有サービス「YouTube」なども広い意味でクラウドサービスの一種といえます。パソコンでも携帯端末でも、インターネットに接続できる環境さえあれば、最新のサービスを利用することができます。

●コストの低減とスピード対応が魅力
 利用者にとってのメリットは、IT運用のコストダウンとスピードアップにつながること。最新のIT環境を導入しようとすると、従来の企業向けシステムは、構築に1年以上かかることも珍しくありませんでした。膨大な設備投資も保守・管理費用も必要です。しかし、クラウドサービスなら、既に稼働しているサーバー群の一部を「間借り」するので、すぐにでも利用が可能です。事業の都合(規模や期間)に合わせて、受けるサービス内容を自在に拡大・縮小することもOK。コストが最小限で済みます。ITを使ったサービスを、チャンスを逃さずスピーディーに立ち上げることができ、そのためのサーバーを自社で保守・管理する必要もないので、将来の予測が難しい新規事業用のシステムを運用する場合にも適した手法といえるでしょう。
  調査会社のIDC Japanによると、国内のクラウドサービス市場は急速に拡大を続け、2015年には2010年比5.6倍の2,550億円になると予測しています。

■図々馥皀ラウドサービス市場セグメント別売上額予測:2010年-2015年

2.印刷業界でも活用が進むクラウドサービス

 ●ファイル送信から印刷フローの一元管理まで
 では、クラウドコンピューティングは具体的にどのような使い方をされているのでしょうか。印刷ビジネスに役立つクラウドの事例を見てみましょう。
 富士フイルムイメージングシステムズ株式会社が提供する「SECURE DELIVER」(セキュアデリバー)は、企業間のファイル転送をクラウド上で安全・確実に行うことができるサービスです。シンプルな操作でありながら、全データのウイルスをチェックし、暗号化して保存するなど、強固なセキュリティー対策が施されています。発行までに情報漏えいなどが許されない印刷データのやりとりや、クライアントからの個人情報データの受け取りなども安心して行えます。

富士フイルムイメージングシステムズの「SECURE DELIVER」

富士フイルムイメージングシステムズの「SECURE DELIVER」
http://fujifilm.jp/secure_deliver/

 富士ゼロックス株式会社の「SkyDeskサービス」は、中小企業を対象としたクラウドサービスです(現在はサービスの大部分を無料で提供)。ユーザー登録をするだけで、メール、名刺共有、カレンダー、タスク管理、文書作成、表計算シートなど10以上のアプリケーションをクラウドで提供します。スマートフォンやタブレット端末にも対応。組織メンバーの活動が集約されて表示されるホーム画面には、本人による簡易コメントやメンバー間でのアプリケーション操作の自動通知により、一人一人の活動がリアルタイムに反映され、どこにいてもメンバーの情報を共有できます。
 印刷会社の営業担当者の場合、例えば、上司や同僚との間で商談の進捗やお客様の情報をリアルタイムに有効活用することができます。また、複数の企業間で活用することも可能で、例えば、外部の企画・デザイン制作会社とチームで広告制作をしている場合、クライアント企業から日々得る情報をチームに伝えることで、スピーディーな企画提案、制作に結び付けたりするといった使い方もできます。

富士ゼロックス「SkyDeskサービス」のホーム画面

富士ゼロックス「SkyDeskサービス」のホーム画面
http://www.skydesk.jp/ 
http://www.skydesk.jp/about/

 株式会社博報堂と株式会社博報堂プロダクツが提供する「Production Cloud®」は、販促物の制作・印刷・配送管理をウェブブラウザ上で一元的に把握・管理できるサービスです。クライアント企業、制作会社、印刷会社など複数の関係者が、進捗状況の確認や素材のやりとり、オンライン上での校正、納品の連絡などを共有して行うことができます。例えば、店舗ごとに異なるチラシを作成するとき、クラウド上にある基本デザインを基に各店舗が商品や価格を掲載し、本社でチェックしてから印刷・配送するといった制作フローを効率的かつスピーディーに行うことができます。

博報堂と博報堂プロダクツの「Production Cloud®」

博報堂と博報堂プロダクツの「Production Cloud®」
http://pbu.jp/organize/procloud.html

3.オンライン校正システムに期待が高まる
●煩雑な校正作業を一気に効率化
 オンライン校正システムは、印刷会社にとって最も身近なクラウドといえるかもしれません。
 オンライン校正は、インターネット上のサーバーに置かれたファイルにアクセスして行う校正で、々酸技罎魄刷して運ぶ必要がない ∧数の関係者が同時に校正を行うことができる 修正指示がリアルタイムに反映されるため重複がない す酸気陵歴が残る ズ絞表示が可能、といったさまざまなメリットがあります。煩雑な校正作業を一気に効率化し、工程の大幅な短縮を実現します。また、校正履歴や差分表示ができるため校正漏れなどのミスも防げるほか、進行管理が明確化され、状況をリアルタイムに把握できることから、クライアント企業に安心感を与えます。
 このようなオンライン校正をクラウドで提供するシステムベンダー企業のサービスも登場しています。クライアントと広告代理店や制作会社、印刷会社などに対し、校正指示とそれに付随する承認管理や進捗管理を汎用のウェブブラウザを使って簡単に行うことのできる環境をクラウドで提供するというものです。クラウドのため、特定の制作プロジェクトに必要な期間のみサービスを契約することも可能なのが魅力です。

●校了データの電子書籍・デジタルサイネージへの運用も支援
 凸版印刷株式会社は、タブレット端末を含むさまざまな通信型デジタルサイネージ端末にコンテンツを配信できるクラウドサービスを提供しています。サービスの利用者は、販促映像や会員向け情報など、配信したいコンテンツの一元管理がクラウド上で行えます。特定エリアや時間帯で配信するコンテンツを変えることも可能で、販促効果を高めることができます。今後は、チラシやカタログなどの印刷データを生かしたコンテンツの配信も計画しています。
 また、従来のオンライン校正に、電子書籍やウェブカタログへのデータ運用機能を付加したクラウドサービスも登場してきています。校了データの活用を促進するサービスとして、印刷会社の強力なビジネスツールになるかもしれません。

4.今後の印刷業界におけるクラウドコンピューティング

●クラウドの利用で生まれる余力をサービス強化に
 宝印刷株式会社(東京都豊島区)は、金融庁が上場企業等に電子提出を義務づけている有価証券報告書等をオンラインで作成するシステム「X-Editor」を提供しています。その処理量は四半期ごとにピークを迎えることから、ピーク時に合わせた大規模なシステム設備が必要となり、コストが増加していました。
 そこで、クラウドサービスの導入を検討し、2009年8月より検証システムの開発に着手しました。その結果、従来どおり高いセキュリティーを保ったまま、処理量の変動に柔軟に対応でき、導入以前よりもコストを圧縮した効率的なシステム運用を実現できたといいます。宝印刷では今後も、ピーク時に安定的なパフォーマンスを発揮できるクラウドを活用し、ディスクロージャーという分野で、さらに利便性の高いツールを提供していきたいとしています。

「X-Editor」のクラウドアーキテクチャ

「X-Editor」のクラウドアーキテクチャ

 また、町田印刷株式会社(東京都中央区)も自社で構築してきた社内ネットワークシステムが複雑化・老朽化してきたことからクラウドを導入。サーバー群をはじめ保守・管理をシステムベンダー企業に委託しています。システムのメンテナンス作業や障害対応に追われる心配がなくなり、業務効率の向上、セキュリティーとコンプライアンスの強化も実現したといいます。その効果をさらに高めるために、情報システムの全面クラウド化を推進していく方針です。

●震災で高まった危機意識でさらに伸張
 このように、事業展開のスピードアップやコスト削減、業務改善、営業力の強化策などとして、クラウドの活用は幅広い企業で拡大しています。さらに、東日本大震災で高まった危機管理意識もその普及を後押ししています。実際、震災直後の混乱期や計画停電時でも、国内外にサーバーを分散できるクラウドを利用したサービスの多くは、停止することがなかったといいます。事業継続、貴重なデータのバックアップの仕組みとしてもクラウドは高く評価されているのです。
 印刷会社にとっても、オンライン校正をはじめとした各種のクラウドサービスは、重要な戦略ツールになると思われます。校正作業の軽減や納期のスピードアップ、プロジェクト管理の透明性は、クライアント企業の利益に直結します。これら顧客サービスの向上によってクライアント企業との結びつきも一層強くなるでしょう。さらに、時間と距離による作業制約もぐっと減ることから、地方の印刷会社が首都圏のクライアント企業から業務を受注することも容易になるでしょう。
 クラウドは、まだまだ発展途上の技術です。まさに雲をつかむような捉えどころのなさから、導入をためらう企業もあるようですが、印刷業界におけるメリットは比較的明確です。サービス向上、企業力強化、そしてビジネスの発展のために、今最も注目したい技術ではないでしょうか。

■図中堅・中小企業がサービス関連投資を増やす理由 

東日本大震災後にIT投資について聞いたところ、震災とは関係なく業務改善やコスト削減のために必要との回答が最も多かったものの、節電や災害時対策としてのクラウドへの期待、意識の高まりが見られます。

 
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