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少子化でも伸張する教育ビジネス
 〜デジタル化と印刷物の併用〜
 
感圧紙の業界の未来を考える グリーンレポート

少子化でも伸張する教育ビジネス
 〜デジタル化と印刷物の併用〜

2012/3/12
1.少子化と教育ビジネス市場
 ●生涯に産む子どもの数は1.39人

2.需要が高まる幼児・児童の教育ビジネス
 ●子ども向け英会話教室の活況

3.教育のICT(情報通信技術)化の進展
 ●学習ツールはデジタル化へ
 ●デジタルとアナログの補完関係

4.印刷業界の取り組みと可能性
 ●ICT化に重要なコンテンツ制作
 ●印刷会社の活躍の場は?

1.少子化と教育ビジネス市場

●生涯に産む子どもの数は1.39人
 一人の女性が一生に産む子どもの数(出生率)は、2010年は1.39人でした(厚生労働省・人口動態統計)。2005年の1.26人を底に若干回復しているものの、依然として少子化の傾向は続いています。
 少子化によって、子ども向けのマーケットは必然的に縮小する……と考えられそうですが、現実は違います。というのも、両親に加えて、孫をかわいがる両祖父母までもが財布の紐を緩め、少ない子どもに対して集中的にお金をかけている状況があるためです。
 教育に関する消費もその一つです。最近では、高学歴の親が増えたこともあって教育への熱意が強いこと、受験の低年齢化などが要因になり、家計における子どもの教育関係費の割合は年々増加しています。さらに、2010年から「子ども手当」の支給が始まったことに加え、小学校の算数・国語などの内容が難しくなってきていること、小学校で英語の授業が必修化されたことなどが、多くの子どもが学習塾や習い事に通う動機になっているようです。

■図表①夫婦と未婚の子ども世帯の教育関係費割合の推移
2.需要が高まる幼児・児童の教育ビジネス

 これらの動向を受けて、教育ビジネス業界もさまざまな試みを始めています。中でも活発なのが、小学生以下を対象とした幼児・児童教育ビジネスです。

●子ども向け英会話教室の活況
 2011年4月から小学校5・6年生で英語の授業が必修化されたことは、子ども向けの英会話教室・英語教材の市場拡大につながると予測されています。
「ベルリッツ」「NOVA」「イーオン」「ECC外語学院」「シェーン英会話」「Gaba」など主な英会話スクールは子ども向けのコースを相次いで設けています。また、「東進ハイスクール」「第一ゼミナール」などの進学塾でも、子ども向けの英語学習に力を入れています。
 例えば、「東進こども英語塾」は、3〜6歳までの幼児を対象に、音や映像、ダンス、ゲームなどを通して楽しく英語を身に付けていくレッスンを展開。「ベルリッツ・キッズ」でも、4歳から小学6年生までを対象に、英語によるコミュニケーション力を伸ばすことに重点を置いたレッスンを行っています。中学・高校の学校での英語教育が語彙や文法を重視した“受験英語” 化しているのに対し、これらのスクールで共通しているのは、生きた英語や国際感覚の体得を目指していることです。小さいころから英語に親しみ、身に付けた英語の自己表現力を、中学・高校の読解中心の英語教育と融合することで、総合的な英語力へと発展させることを狙いとしています。国際化の時代に子どもの将来の選択肢を広げてあげたい、という親の思いに応えたものでもあるようです。
3.教育のICT(情報通信技術)化の進展
●学習ツールはデジタル化へ
 こうした幼児・児童英語教育をはじめ、教育の現場で大きな潮流となっているのが、ICT化です。先述の「東進こども英語塾」では、インターネットで授業の最新コンテンツを各教室に配信するほか、専用のタッチパネル式のモニターを使ってパズルやゲームを楽しみながら英語を学ぶレッスンなどが行われています。ネットを通じて講義を受けるスタイルで業績を伸ばしてきた東進ならではの手法です。
 一方、政府としても教育現場の情報化を進めていく方針で、総務省は2010年度から「フューチャースクール推進事業」を実施しています。具体的には、超大型テレビのような「電子黒板」の教室への導入、電子黒板とつながる「タブレット端末」、そして、タブレットで読む「電子教科書」の3つのデジタル化が軸となっています。

 教育のICT化の進展によって、教育ビジネスはどう変わるのでしょうか。
例えば、タブレット端末は、文部科学省が2020年に電子教科書をすべての小・中学校の全生徒に配布することを目標としていることもあり、今後需要が急拡大する見通しです。(株)シード・プランニングによれば、2015年には教育用のタブレット端末の市場は1,000億円規模になると予測しています。
 また、野村総合研究所は、ICTによる教育用コンテンツ・各種サービス(指導・添削)の市場について、「今後3,800億円にまで成長するポテンシャルがある」とみています。

■図表②学習関連市場の変化

●デジタルとアナログの補完関係
 このような教育のICT化は、「コンピューターに頼った、画一的な教育を進める」「コンピューターでは読み書きをしなくなる」……と危惧する声もあります。しかし、必ずしも「デジタル化」=「紙の教科書・ノートをなくす」という流れではありません。教育ビジネスでポイントになるのは、デジタルと紙の補完関係。教育の目的に合わせて、デジタル・アナログ、それぞれのメリットを生かして最適な使い方をすることです。
 ベネッセコーポレーションが中学生向けに提供するネット講座「EVERES(エベレス)」は、ネット経由のライブ授業を自宅で受け、生徒からの質問などにはチャットを活用しています。自宅に届けられる紙のテキストとネット講座が連動し、どちらか片方に取り組むだけでは学習が完結しない仕組みです。例えば、回答や解説はテキストに載せず、ライブ授業で提供されることもあります。ライブ授業だけで出される問題もあります。紙のテキストで予習・復習をすることで知識がしっかりと身に付き、ライブ授業では限られた時間内に問題を早く解くことで受験への応用力を養います。一見、不親切にも思える仕組みですが、アナログとデジタルの併用が、子どもたちの自立学習を促すことにつながっています。

ベネッセコーポレーション「EVERES」
▲ベネッセコーポレーション「EVERES」
 日本公文教育研究会(KUMON)では、英語のリスニング・音読学習にE-Pencil(イーペンシル)を使用しています。E-Pencilは、英文やイラストが掲載されたストーリー教材をタッチすることで、聞きたい単語や英文の発音を聞くことができる電子文具。視覚とともに音から学習することで、英語特有のリズムやイントネーションが楽しく自然に頭に入っていくそうです。従来の「読む」「書く」プリント教材と、「聞く・まねる・読む」E-Pencilを活用した相乗効果で、英語力を総合的に高めることができます。KUMONのプリント教材は、E-Pencil用教材をはじめ多彩に揃い、子どもたちの学習スタイルに合わせて改定が重ねられています。
4.印刷業界の取り組みと可能性

●ICT化に重要なコンテンツ制作
 教育・教材のデジタル化に合わせて、出版社、教科書会社の対応も始まっています。教科書会社45社が参加する教科書協会は、学校教育の情報化対応プロジェクトを2010年に立ち上げ、デジタル教科書・教材に関する調査・研究を行っています。
 東京書籍は、2006年に中学校向け英語のデジタル教科書『NEW HORIZON』を発売して以来、デジタル教科書の充実を図っています。先生が教科書の写真や図を自由に置き換えたり、テキストを修正したりといったカスタマイズが可能な点や、映像やアニメーションを活用していることが特長です。

東京書籍のデジタル教科書
▲東京書籍のデジタル教科書

 光村図書出版は2005年に、電子黒板に教科書をそのまま大画面で表示し、クラス全員が大事なところに注目しながら学習できるデジタル教科書を販売しています。視覚的に分かりやすく、みんなで教科書に書き込みを入れることもでき、授業でのクラスの一体感も生まれるといいます。

光村図書出版のデジタル教科書(1)
光村図書出版のデジタル教科書(2) 光村図書出版のデジタル教科書(3)
▲光村図書出版のデジタル教科書。
電子黒板に映し出して、大事な箇所をマーカーで色付けしたり(写真上)、
部分の拡大表示(写真下左)、吹き出しをつけて書き込んだりできます。

●印刷会社の活躍の場は?
 一方、ある大手印刷会社は、iPadなどのタブレット端末で学べるeラーニングシステムを開発しています。このシステムを使えば、教師は問題の作成や編集から、採点・成績管理までを行え、生徒は学びながら解答や成績の確認ができます。コンテンツとしては、NHK教育テレビの科学教育番組を活用するなど、学習効果の高いマルチプル電子図鑑を想定しています。
 このように、大手の印刷会社はその企業力を生かして、iPadなどのタブレット端末向けのデジタル教材アプリを制作・配信したり、電子書籍店の運営を行ったり、印刷業の枠を超えた取り組みを行っています。では、中小の印刷会社にはどのような可能性があるのでしょうか。ポイントはやはり、既存のコンテンツを生かした提案力にありそうです。
 印刷会社は出版物や印刷物の最終データを管理しています。電子書籍・デジタル教科書の制作に際して、既存のデータを利用することは、コストの削減や制作期間の短縮に大いに役立ちます。さまざまな教材コンテンツの中身を知っている強みを生かし、印刷物と連動したデジタルのコンテンツづくり、デザインの提案などを含めたトータルなアプローチをしていくことが、これからのチャンスを広げていきそうです。
 デジタル化ばかりではありません。通信教育や塾の現場では、依然として紙のテキストも重要な役割を担っています。例えば、首都圏で学習塾を展開するSAPIXでは、授業のたびに教科書が配られます。あえて予習をさせないことで、子どもの即応力を鍛える狙いです。教科書は一冊20ページほどの少ないボリュームですが、カラー写真も掲載した本格的なもの。学年・教科ごとにテキストが作られ、さらに、受講生数に合わせて部数もバラバラです。必要なときに必要な数を印刷したり、小ロット印刷にも対応できたりなど、小回りの利く中小の印刷会社の力が求められる事例といえるでしょう。

SAPIX教材
▲予習をさせず、受験への対応力を身につけるという教育方針から、
授業ごとに配られる「Daily SapiX」などSAPIXの豊富なプリント教材。

 参考書や学術書などの教材を印刷している平河工業社(東京都新宿区)では、特殊な数式や記号などを含む教材も組版から制作しています。教材は小ロットのものが多くなる傾向にありますが、印刷機器など体制の強化により、オフセット印刷でも低コスト・短納期を実現。また、インターネット上で顧客が校正できる「ウェブ入稿・校正システム」を導入。紙の出力を最小限に、人と物の移動を最低限に抑え、環境に負荷をかけない合理的・効率的な仕組みを構築するなど、お客様のニーズにきめ細かく応えています。

平河工業社(1)
▲さまざまな教材や技術書の実績。
平河工業社(2)
▲印刷機80台で小ロット、短納期、低コストを実現。

各種教材
http://www.hirakawa-kogyosha.co.jp/0102textbook/

環境への取り組み
http://www.hirakawa-kogyosha.co.jp/environment.html

 
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