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文具開発最前線 〜文具はアイデアで勝つ時代へ〜
 
感圧紙の業界の未来を考える グリーンレポート
文具開発最前線 〜文具はアイデアで勝つ時代へ〜 2012/2/10
1.文具市場最新動向
 ●好況に見える文具業界の実情は?
 ●パーソナルユース向け商品にプラス成長の兆し

2.パーソナルユース向け文具のヒット商品
3.印刷会社による文具開発の可能性
1.文具市場最新動向

●好況に見える文具業界の実情は?
 近頃、デパートや大手文具店には、カラフルなノートやペン、個性的なデザインやアイデアの多種多様な文具が豊富に陳列されています。一方、高価な筆記具や手帳など、従来、一部の高所得者向けだった高級・こだわり文具に人気が集っており、売り場はにぎわいをみせています。
 この盛況ぶりをみると、さぞかし文具業界は景気がいいのだろうと思えますが、そう単純な状況ではありません。
 矢野経済研究所が2011年11月に発表した2010年度の国内文具・事務用品市場規模は、前年度比1.5%減の4,805億円と推計(図①)。景気回復のめどが立たない中、オフィスの事務用品在庫削減のための買い控えや、PCなどデジタル機器の普及によるペーパーレス化、少子化による学童需要の減少などにより、ここ数年の文具・事務用品市場はマイナス成長が続いています。

■図表①国内文具・事務用品市場規模推移

●パーソナルユース向け商品にプラス成長の兆し
 売り場の活況と相反する文具・事務用品市場の縮小――なぜ、こうした状況が起きているのでしょうか。
 文具・事務用品市場は、「納品」と呼ばれる事業所向け市場と、「店頭」と呼ばれる個人向け市場の2つに分かれ、その規模はほぼ半々です。まとまった数を企業に販売する「納品」市場向け商品は、各社で機能やデザインに大きな違いはなく、低価格競争に陥りがちです。一方、「店頭」市場向け商品は、趣味雑貨というように嗜好性が強く反映され、「納品」市場に比べて高単価での展開が可能です。今、文具・事務用品メーカー各社は、技術力やアイデアで勝負できる「店頭」市場向け商品、いわゆるパーソナルユース向け商品を市場の救世主ととらえ、商品開発を促進させています。
 また、従業員に支給する備品を節約する企業が増える中、「自分で買うのなら気に入ったものを」と文具にこだわる人が増えていることも追い風になっており、近年、特にノートやペンの分野でヒット商品が多数登場するなど、市場を分野別にみるとプラス成長が顕在化し始めているのです(図②・③)。

■図表②国内ノート市場規模推移
■図表③国内ボールペン市場規模推移
2.パーソナルユース向け文具のヒット商品
 ノート分野でのヒット商品といえば、イタリアの新興ブランド「モレスキン」です(写真参照①)。これは、「ゴッホやピカソに愛された伝説的ノートの継承者」という神話性を打ち出し、彼らが愛用していたノートの特徴(長方形の形状、ゴムバンド付き、インナーポケットを装備など)を再現し、ビジネスマンやクリエーター、学生を中心に大ヒットしています。メモ帳サイズの商品でも2,000円近くと高価でありながら、直近5年間、売上を年平均26%増とするほか、同商品の「活用術」を紹介した書籍が出版されるなど、今ではすっかり定番商品として浸透しています。
 また、コクヨS&Tが2008年に発売したノート「ドット入り罫線シリーズ」(写真解説図参照②)は、従来のノート紙面の横罫線に、等間隔の点を入れただけのシンプルなものでありながら、「美しく、見やすく、機能的にノートがとれる」と大ヒット。同商品は、年間1億円の売上でヒット作といわれる文具市場で、発売からわずか半年で10億円以上(約1,000万冊)を販売し、東大合格生の3人に1人、国公立大学合格生の半数以上がドット入り罫線ノートを使用していたという調査結果もでています。

「モレスキン」は、豊富なサイズバリエーションのほか、無地タイプ、方眼紙タイプ、ダイアリータイプなど、多彩なラインアップも魅力。
▲「モレスキン」は、豊富なサイズバリエーションのほか、無地タイプ、方眼紙タイプ、ダイアリータイプなど、多彩なラインアップも魅力。

定番のCampusノートの「ドット入り罫線シリーズ」。ドットを目印にすることで、機能的にノートがとれる。
▲定番のCampusノートの「ドット入り罫線シリーズ」。ドットを目印にすることで、機能的にノートがとれる。
 一方、ボールペン分野もノートに負けず好調です。
 三菱鉛筆が2006年に国内で発売した油性ボールペン「ジェットストリーム」は、油性インクの粘り気を減らし、水性ボールペンのような滑らかな書き味を実現。2011年に世界で年間約1億本の販売実績を記録しました。
 また、書いて、消して、その上からまた書けるパイロットの「フリクションボール」も、2007年3月に国内で発売後、東京の大手文具店では品切れが1カ月続くなど大ヒット。発売1年間で世界累計4,000万本を販売しています。

 このように、近年のノート、ペン市場では大ヒット商品が多数生まれ、これまで文具にこだわりを持たなかった人々も、デザインの独自性や機能性に関心を持ち始めています。また、アイデア文具を紹介したムック本や、文具通のおすすめアイテムを特集する雑誌が続々と出版されているほか、テレビなどでも特集番組が組まれています。
 今や文具はただの日用品ではなく、個人のこだわりを反映するアイテムとしての役割や、より優れた機能性が求められる時代となりつつあります。

■近年のアイデア文具一例

LIHIT LAB.(リヒトラブ)のツイストリングノートは、一見、普通のリングノートでありながら、とじ具が開閉する機構を搭載。バインダーのように「編集できるノート」となっている。
▲LIHIT LAB.(リヒトラブ)のツイストリングノートは、一見、普通のリングノートでありながら、とじ具が開閉する機構を搭載。バインダーのように「編集できるノート」となっている。
レイメイ藤井のファスナーで全体を閉じられるノートカバー「ダブルファスナー カラーマルチカバーノート」。数本のペンや定規、付せんなどのツールをノートと合わせてバッグのように収納できる。
▲レイメイ藤井のファスナーで全体を閉じられるノートカバー「ダブルファスナー カラーマルチカバーノート」。数本のペンや定規、付せんなどのツールをノートと合わせてバッグのように収納できる。
トンボ鉛筆の加圧式油性ボールペン「エアプレス」。ノックのたびに圧縮空気を作り、芯の中のインクに圧力をかけることでインクを出やすく工夫。上向きで書いたり、湿った紙にも書くことができる。
▲トンボ鉛筆の加圧式油性ボールペン「エアプレス」。ノックのたびに圧縮空気を作り、芯の中のインクに圧力をかけることでインクを出やすく工夫。上向きで書いたり、湿った紙にも書くことができる。
サカモトの「リラステ ロールアップペン」は、仕事や勉強の合間に顔や首筋、腕などマッサージできるローラー付きのペン。リラクゼーション効果が得られると、幅広い年齢層の女性に人気。
▲サカモトの「リラステ ロールアップペン」は、仕事や勉強の合間に顔や首筋、腕などマッサージできるローラー付きのペン。リラクゼーション効果が得られると、幅広い年齢層の女性に人気。
キングジムの「ポメラDM10」は、メモ機能に特化した小型・軽量のデジタルツール。写真のようにコンパクトに折りたたまれた小型PCのような本体を開けば、約2秒で起動できるスピードが売りとなっている。
▲キングジムの「ポメラDM10」は、メモ機能に特化した小型・軽量のデジタルツール。写真のようにコンパクトに折りたたまれた小型PCのような本体を開けば、約2秒で起動できるスピードが売りとなっている。
3.印刷会社による文具開発の可能性
 このように、単に「書けるもの」「書くもの」というだけでなく、より優れたデザイン性や機能性が求められるようになってきた文具に、異業種とのコラボレーションも広がってきています。
 2011年8月、レンタルビデオチェーンTSUTAYAは、文具売場を設けた店舗をオープンさせたほか、文具売場の提案やオリジナル文具の開発を行う新会社「TSUTAYA STATIONERY NETWORK株式会社」を設立。アパレルメーカーのユナイテッドアローズは、文具大手の伊東屋と共同で、文具セレクトショップ「イトーヤ ウィズ ユナイテッドアローズ」を東京・有楽町の阪急メンズトーキョーに出店しました。

 文具市場への参入の動きは、印刷会社でも始まっており、文具商品や関連サービスを提供する会社が現れています。
 有限会社スガワラ印刷(東京都荒川区)は、長年培った事務用帳票印刷のノウハウを生かして、タイヤメーカーの販促品として製作したのり付きの複写伝票を活用し、ノーカーボン紙の裏にふせんのりを付与した複写式ふせん紙「コピめも(R)」を発売しました(写真参照③左)。複写伝票のように、一度の筆記で同内容をふせん紙に複写できるという商品です。
 商品開発のきっかけとなったのは、高次脳機能障害のご家族をお持ちのパートナー会社との打ち合わせの過程で、患者がメモを書き、家族や医療スタッフが控えとできるリハビリツールとして有効ではないかという発想が生まれたことでした。現在では、大手量販店や通販でも販売されるほか、製薬会社の医療現場向けノベルティとしても採用され、病院関係者に広く使用されています。2011年には東京都中小企業振興公社のニューマーケット開拓支援事業にも採択されました。
 オフセット印刷に独自のニスを使い、艶とともに独特の手触りも実現した「ウルシ印刷技術」を持つ欧文印刷(東京都文京区)では、同技術を使って紙表面にニス加工を施し、市販のホワイトボードマーカーで書いては消せる文具「消せる紙」を開発。A1、A3、A4などサイズも豊富に販売しています(写真参照③)。紙のため貼ったり柱などに巻いたりもでき、持ち運びも容易なことから、企業や学校のほか講演や研修、店頭でのPOPやメニューボードなど、さまざまなシーンで使われています。2008年10月の発売から2010年までに2万5,000セットを販売しました。
 自社製品を持つメリットも大きく、「消せる紙」を応用し、漢字練習帳などの教材といった機能性のある出版物や、オリジナル性の高いノベルティの提案にもつながっています。欧文印刷では、そのほかにも、複数のニスの組み合わせでさまざまな質感を表現し、デザイン性を高めた紙製のブックカバーなども展開しており、今後もラインアップを増やして文具事業を同社の柱の一つに育てたいとしています。

 これらの例で注目すべき点は、印刷会社としての強み――特殊な印刷や紙の加工などの知識をベースに、優れたアイデアで文具を開発し、ビジネスフィールドの拡大に成功している点にあります。また、自社に印刷機があり、開発に当たって試作品を低コストですぐに作れるということも強みになります。
 一見畑違いのように思える印刷業界と文具業界ですが、文具店からスタートした印刷会社や、印刷だけでなく事務用品販売も行う会社も多いほか、顧客企業の事務用品や備品、ノベルティグッズなどの販促ツールの企画・製作を請け負う印刷会社も少なくありません。こうした印刷に対する豊富な技術と経験は、文具を開発する上で大きなアドバンテージといえます。
 言い換えれば、印刷会社は文具を開発するノウハウをすでに保有しているともいえ、他業種より文具市場に参入しやすいポジションにいるとも考えられます。
 ヒット文具を開発するためには、企画力が不可欠です。商品の流通経路の開拓・確保など、クリアすべき課題が多いのも事実でしょう。
 しかし、ちょっとしたアイデアで、大きな成功を生み出すことが可能な文具市場は、印刷会社にとっても大きなチャンスが潜むビジネスフィールドといえるでしょう。

複写式ふせん紙「コピめも(R)」は、書いた情報を複数の相手に伝達する際に便利。同内容のメモが第三者用としても残せるため、記憶障害の方や認知症などの方の日常生活や仕事のサポート用品としての利用も想定。写真右は、2枚複写専用の「ダブペタ」。
▲複写式ふせん紙「コピめも(R)」は、書いた情報を複数の相手に伝達する際に便利。同内容のメモが第三者用としても残せるため、記憶障害の方や認知症などの方の日常生活や仕事のサポート用品としての利用も想定。写真右は、2枚複写専用の「ダブペタ」。

「消せる紙」シリーズは、手書きPOP用途などに人気のブラック、会議で意見の色分けなどに便利なパステルもある(左・中)。さらに、A4ノートタイプのホワイトボード「NUboard(ヌーボード)」も発売。筆記面は「消せる紙」と半透明シートの2層(全8セット)で、それぞれに書いたものを重ねたり、書き込みしたくない書類を下に挟んで上書きしたりができる(右)。
▲「消せる紙」シリーズは、手書きPOP用途などに人気のブラック、会議で意見の色分けなどに便利なパステルもある(左・中)。さらに、A4ノートタイプのホワイトボード「NUboard(ヌーボード)」も発売。筆記面は「消せる紙」と半透明シートの2層(全8セット)で、それぞれに書いたものを重ねたり、書き込みしたくない書類を下に挟んで上書きしたりができる(右)。
 
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