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電子帳票の拡大〜保険業界の変遷を追う〜
 
感圧紙の業界の未来を考える グリーンレポート
電子帳票の拡大〜保険業界の変遷を追う〜 2011/3/10
1.保険会社も帳票類の電子化時代へ
2.電子化に拍車をかける法改正
3.保険会社の電子帳票の展開事例
1.保険会社も帳票類の電子化時代へ
 請求書・発注書・売上明細・在庫一覧表など、企業のビジネスプロセスそのものといえる帳票類。それだけに、帳票の管理・活用は、企業経営に大きな影響を与えます。
 矢野経済研究所による電子帳票主要ベンダー15社を対象とした「電子帳票ソリューション市場に関する調査結果2009」によると、2008年の電子帳票ソリューション市場規模は326億9,700万円となっています。リーマンショック後にはやや成長の鈍化は見られるものの、主に製造業界や金融業界への導入が進み、近年では保険会社への導入が目立つようになっています。
 その背景には、保険商品や契約者ごとに非常に多種多様な帳票類を作成・管理しなければならないという保険事業の特殊性があります。つまり、保険商品数の拡充や契約者が増加するほど事務作業の負担は膨大なものとなってしまうのです。保険金の未払い・不払いなどの不祥事が起こるのも、企業モラルやルールづくりが不十分であったことに加え、帳票管理など事務作業の著しい非効率性が一因ではないかとの指摘もなされています。
 保険各社は、そのような状況を打開するため、ITをベースとした事務処理全般のシステム改革に着手しました。2000年以降、徐々に始まった保険事務作業のシステム化は、帳票や冊子の印刷費・管理費・運送費などの削減、WEB上での帳票検索による業務の効率化、機密情報や顧客情報などの安全な管理、さらに顧客に対するサービスレベルの向上など、さまざまな成果をもたらしています。
 このように、保険会社にとってシステムの電子化(帳票の電子化)は単なるコスト削減施策にとどまりません。電子帳票の効率的運用は、すなわち全社レベルでの効率改善をもたらす「IT投資」として捉えられ、「保険業務におけるインフラの再構築」ともいえるほどの業務改革なのです。
主要ベンダー15社による電子帳票ソリューション市場の推移
●電子帳票システム構成イメージ
●保険会社の電子帳票システム導入メリット・デメリット
2.電子化に拍車をかける法改正
 保険業界のIT化・ペーパーレス化が進む背景には、2010年4月1日施行の改正保険法も大きな影響を与えています。同法の施行を控えた保険各社は大幅な業務改定を行いましたが、その取り組みのひとつに「契約者から見て理解しやすい内容の保険証券や約款への変更」が含まれています。それらを実行する上で大きな力を発揮したのが、WEBを活用した電子証券や電子約款なのです。
 WEB媒体は、印刷物のように紙面スペースの限界を気にする必要がありません。また、さまざまなコンテンツへの素早いリンクを可能とするほか、動画や音声を駆使することで、より平易かつ詳細に保険内容の説明を可能とします。
 また、時代のニーズに適合した新しい保険商品が次々と登場していること、規制緩和による銀行窓口での生命保険の販売開始などにみられる販売チャネルの増加により、今や保険各社の競争は激しいものとなっています。そのような状況の中で、電子化によってもたらされるユーザーのメリット、つまり、より顧客視点に立ったサービスを提供していくことは、保険会社にとって不可欠な投資といえるでしょう。
3.保険会社の電子帳票の展開事例

 前述のように、電子帳票をはじめとした「いいこと尽くし」のIT技術の導入でペーパーレス化はますます加速していくことは避けられません。この章では、より保険業界の「今」を知っていただくためにも、電子帳票の活用事例をご紹介します。

【日本生命保険】
2002年から電子帳票システムを構築・活用し、迅速な情報の伝達と関連業務のBPR(ビジネスプロセスの最適化)を推進しています。2012年1月をめどに、保険商品の販売から保険料の収納、保険金などの支払いまでのすべての仕組みを、顧客サービスの観点から見直す「新統合計画」を本格始動。全国約5万人の営業職員に専用PCを配布し、顧客宅などの訪問先でも窓口業務が行える環境の整備に取り組んでいます。

【プルデンシャル生命保険】
2009年7月6日から「ご契約のしおり・約款」の電子版(e-約款)の交付を開始。同社のライフプランナーが携帯電話から電子ファイルを消費者に直接送付するほか、同社ホームページから電子ファイルのダウンロードを可能にしました。これにより、従来の冊子の保管スペースの削減や、契約者が知りたい情報をPCで簡単に検索できるようになりました。また、e-約款の利用実績に応じて全国の各環境保護団体に寄付を行い、環境の保全にも貢献する考えです。

【アフラック(アメリカンファミリー生命保険)】
2008年1月28日から契約する生命保険商品が顧客のニーズに合致しているかを確認する「意向確認書」の電子化を開始。これにより、契約手続きの迅速化や書類の記入漏れの防止、書類コストの削減などを実現しています。2003年より申込書と告知書の電子化を実施しており、契約に必要な書類手続きをペーパーレスで完結できる体制を確立しています。

【損保ジャパン】
「紙使用量総合管理計画」を推進する同社は、火災保険のオンデマンド約款や自動車保険のWEB約款の導入、手書き申込書の一部廃止、パンフレットの電子化などの取り組みで、2009年の紙使用量を前年度比マイナス12.1%に削減しています。また、2009年よりITを中心としたサービスや業務のシステム化を推進。2010年2月には、主力の自動車保険の更新手続きのすべてをインターネットや携帯電話で可能とするシステムを導入しています。

【日新火災海上保険】
顧客の視点から損害保険事業の再構築を推進すべく、「インターネット約款」を2006年より展開。「保険証券ガイド」「シーン別簡単説明」などのコンテンツや動画などを活用し、わかりやすく解説しています。また、自動車保険においては、「ご契約内容確認マップ」や「事故体感シミュレーションゲーム」など、契約前の理解促進を目指したWEBコンテンツを充実させています。

●日新火災海上保険インターネット約款ホームページ
▲日新火災海上保険インターネット約款ホームページ
 ご紹介した事例にもあるように、保険各社は業務システムのIT化を基本としたペーパーレス路線を明確な経営ビジョンとして推進しています。
 また、2010年8月12日、野村総合研究所とトッパン・フォームズが生命保険向け「約款トータルソリューション」を共同で提供開始するなど、保険業界の動きに合わせた各種ソリューションサービスも充実させています。今後も次々と保険会社の電子ソリューション導入は進んでいくことでしょう。
 印刷会社も印刷需要が減少していく中、新たなサービスの提供が必要となってきます。たとえば、電子化されたコンテンツをトータルにシステム化しながら整理・管理するビジネスこそ、印刷会社の役割のひとつといえるでしょう。また、電子化が当たり前になる近い将来、今後は「なにを」「いかに」「どのような見せ方で」電子コンテンツ化するかといった、コミュニケーションの「質」を高める提案にも踏み込んでいく必要があるかもしれません。
 さらに、主にPCに対する苦手意識の高い高齢者など、電子化を歓迎しないユーザーの存在を忘れてはならないでしょう。今後、ますます増加する高齢者のユーザーや保険代理店のスタッフに対して、「わかりやすく」「操作しやすく」「興味を生み出す」コンテンツの提案は、ひとつの大きな可能性をはらんでいるとも考えられるでしょう。
 いずれにせよ、印刷業界にとって、保険業界における帳票類の電子化は避けられないという厳しい現状を十分認識し、そのうえで保険会社とユーザー双方のメリットとなる新しい取り組みを考えていく必要があるのではないでしょうか。
●紙でなければならない分野とは?
 帳票類の電子化が進んでいるとはいえ、すべてにおいて印刷物が不必要となっているわけではありません。たとえば、証書・約款などにおいては、PCを持っていない、操作できない、形で残らないと不安というユーザーに対しては、電子化はかえって不便さを生みます。その場合には、従来の紙や冊子による証書・約款の提供が行われるケースが多いようです。契約者が電子証書を希望すると、契約時に料金が若干割り引かれるなどの推進策が講じられているものの、今後しばらくは電子と紙の併用が続くとみられています。
 
 
 
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