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期待される観光産業の今とこれから<第2回>〜地方の魅力が高まる観光振興策〜
 
感圧紙の業界の未来を考える グリーンレポート
期待される観光産業の今とこれから<第2回>
〜地方の魅力が高まる観光振興策〜
2010/11/10
1.観光客を集めるための創意工夫
  ●柔軟な姿勢で観光資源を発掘、観光振興に本腰を入れる地方
  ●地方独自の食で観光客を集める

2.ニューツーリズムの登場で広がる観光メニュー
3.国内のインフラが整い、さらなる観光需要の拡大へ
1.観光客を集めるための創意工夫
●柔軟な姿勢で観光資源を発掘、観光振興に本腰を入れる地方
 今、多くの自治体では観光関連部門に旅行会社などの民間企業から人材を採用したり、観光に対する行政予算を増やすなど、観光振興に努めています。元から観光資源に恵まれている地方はもちろんですが、そもそも観光資源に乏しく、また、地理的な要因などもあり、これまで観光振興を積極的に行ってこなかった自治体も、力を入れ始めているのです。
 埼玉県のケースを見てみましょう。埼玉県は、東京のベッドタウンとしての要素が強く、これまでは観光のイメージが薄かったといえます。さらに、観光に対する行政予算が他の自治体と比べると比較的低い方に位置するといいます。しかし、2年ほど前から、県の職員が知恵を絞ってさまざまな施策に取り組み始めました。そして、「県民に夢と希望を与えたい」との思いから、県知事が2010年初めに「海なし、温泉地なし、世界遺産なしの埼玉県は、常に新しい観光プログラムで大胆に勝負します」といった宣言文を掲げ、“埼玉「超」観光立県宣言”を発表。プログラムには、アニメの舞台・ゆかりの地を盛り上げる施策やオリジナルキャラクターを使ったイベント、B級ご当地グルメの紹介など、斬新で、若い層に受ける企画が多く含まれています(写真1)。
 埼玉県が、固定概念にとらわれない新しい観光資源を発掘し、それらをPRすることに決めたのには、埼玉県鷲宮町(現久喜市)での地域おこしの成功体験が大きく影響しています。鷲宮町は、2007年4〜9月というわずかな期間に深夜放送されたアニメ「らき☆すた」の放映後、多くのファンが訪れるようになった町です。鷲宮町では、現地でしか体験できないイベントを実施したり、現地でしか手に入らない特別住民票の作成を行うなど、ファンに何度も町を訪れてもらえる仕掛けをしました。そうこうするうちに、アニメファンは町自体にも興味を抱き、今年3月、鷲宮町が久喜市に合併する際のイベント「鷲宮町卒業式」には、全国からたくさんの人が集まりました。また、舞台となった鷲宮神社は、このアニメによって関東最古の神社であることが知れ渡り、アニメ放映前の2006年に9万人だった初詣での人数が2010年には5倍の45万人になりました(写真2・図1)。
 テレビなどのメディアからわき起こったブームは番組終了とともに過ぎ去ってしまうものがほとんどです。しかし、地元の人々がブームをうまく活用し、同時に地元の良さをきちんと伝える努力を継続的に行うことで、地域は活性化していく――鷲宮町の例は、ブームの中にその可能性が潜んでいることを実証したものといえます。
●ダミーダミーダミーダミー   (写真1)
埼玉県ゆかりのマンガやアニメの舞台を紹介するマップとご当地キャラクターを紹介するチラシ(いずれも埼玉県産業労働部観光課作成)
●ダミーダミーダミーダミー   (写真2)
「らき☆すた」関連グッズのチラシ(鷲宮商工会作成)
●ダミーダミーダミーダミー
●地方独自の食で観光客を集める
 どの地域においても、観光客を惹き付けるものといえば、「食」が挙げられるでしょう。最近では、地方ごとの郷土料理だけでなく、道の駅や高速道路のパーキングエリア、サービスエリアなどで売られる新鮮野菜や手づくりの食品、限定名物料理なども人気を集めています。また、首都圏に設置された各県のアンテナショップや、インターネットによる地方の食のお取り寄せもブームとなっています。
 そして、今、多くの人の関心を集めているのが、B級ご当地グルメです。B級ご当地グルメ日本一を決める「B-1グランプリ」の様子は、ここ数年、テレビのニュースなどで全国的に伝えられ、人気の料理を提供する地方には多くの観光客が訪れるようになりました。
 静岡県富士宮市は富士宮やきそば(写真3)で知られるようになり、市内の焼きそば店の年間客数は2004年に29万人だったところ、2009年には52万4千人に増加(図2)しました。この間、富士宮やきそばが、「B-1グランプリ」の第1回(2006年2月)、第2回(2007年6月)でグランプリを獲得、その後、3〜4年たっても客数が減っていません。この富士宮やきそばの場合は、「食」が地域おこしに大きく貢献した一例といえます。
 なお、富士宮やきそばの名称を使用したい企業は、特定のNPO法人にロイヤルティーを支払い、市内の特定の製麺所と仕入れ契約を結び、市の歴史などをきちんと勉強し、市のPR活動もしなければいけないという条件が課せられています。単に、富士宮やきそばを売って利益を得ようという考えではなく、富士宮やきそばで地元を活性化させるという地元有志の目的がこういった契約条件の中に盛り込まれているのです。
●ダミーダミーダミーダミー   (写真3)
富士宮やきそば(キャベツ、ネギ、肉かすが入っていて、上にはイワシの削り粉。ソースのブレンドは各店で異なる)
●ダミーダミーダミーダミー
2.ニューツーリズムの登場で広がる観光メニュー
 アニメの舞台やB級ご当地グルメだけでなく、視点を変えることで地元にあったものを観光資源化する取り組みはほかにもたくさんあります。地元の人にとっては、身近過ぎて気づかなかった豊かな自然環境や、地元ならではの日々の生活などが、今、観光資源になりつつあり、これをニューツーリズムと呼んでいます。
 ニューツーリズムは、政府の「ニューツーリズム創出・流通促進事業」のもと各地で実施されており、従来型の、見たり、味わったりという受動的な旅のスタイルではなく、テーマ性が強く、能動的に「体験・交流する」要素が含まれています。たとえば、ニューツーリズムのひとつグリーンツーリズムは、人々が都市と農山漁村を行き交い、お互いの地域の魅力を分かち合うことを目的とし、北海道での酪農、静岡でのお茶摘み、長崎の離島における島の生活など、さまざまなプログラムが地方ごとに用意されています(写真4)。ほかにもニューツーリズムには、環境に配慮しながら自然と触れ合うエコツーリズム、地方の自然に触れ、温泉や食を通じて健康につなげるヘルスツーリズム、地域に伝わる技術を学ぶ産業観光などがあります。
 ニューツーリズムは、これまでのレジャーや休暇としての旅行に比べ、観光客一人ひとりが一層社会への関心を高めることができ、地域社会とのつながりを実感できる、その名のごとく新しいタイプの旅行といえます。こういった取り組みは、まだ始まったばかりで課題も多いようですが、地域活性化へのひとつの切り札となることと思われます。
(写真4)農業体験の例
●ダミーダミーダミーダミー   ●ダミーダミーダミーダミー
写真左:田植え体験(千葉県鴨川市)(写真提供:財団法人 都市農村漁村交流活性化機構)
写真右:茶摘み体験(静岡県伊豆の国市)(写真提供:財団法人 都市農村漁村交流活性化機構)
3.国内のインフラが整い、さらなる観光需要の拡大へ
 今後も国内各地域では、その土地ならではの個性を生かし、地域との絆を大切にしながらオリジナリティーの高い観光資源を生み出していく試みが続きます。そして、今までにない新しい体験を得られる機会が増えることで、国内の観光需要が一層上向くことも予想されます。また、今年から来年にかけて、国内インフラが一層整備される点も観光需要アップへの追い風となると考えられています。
 今年の12月には東北新幹線が全線開通し、新青森駅から先の青森県内、北海道南部、秋田県北部などへのアクセスが高まります。来年3月には九州新幹線の博多〜新八代間が開業し、新大阪から鹿児島中央までが一直線につながります。10月21日には、羽田空港(東京都)に新滑走路と新国際線旅客ターミナルが完成し、海外との定期便が就航し、2011年までに世界17の都市と結ばれます(9月21日発表時点)。これにより国内線・国際線の乗り継ぎがスムーズとなり、海外の観光客が地方を訪れる機会も増えることでしょう。さらに、全日本空輸ではLCC(格安航空会社)を設立し、2011年度より国内・国際線の運行を開始する予定です。前号でものべましたが、良心的な価格の高速バスなども登場しています。来年の3月までは全国にて高速道路無料化実験も実施、来年4月末には北関東自動車道が全線開通する予定です。
 これらの国内インフラの整備に伴い、観光パンフレット、観光マップ、観光地や飲食店などを賑わすのぼりなど、印刷物も多数必要となります。地域の魅力を伝えて、多くの人に列車や飛行機、高速道路を頻繁に使ってもらおうと交通機関が旅の情報誌を作ることもあるでしょう。そうすれば、その地を訪れた人だけでなく、出発地となる首都圏や主要都市の人々にも広く配布されます。また、目的地となる地域では、従来どおり自治体が観光パンフレットを作るだけでなく、多様化する観光客のニーズに合わせ、季節ごとの景色や見どころをリーフレットにしたり、商店街が食事所や買い物ガイドを作ったりと、きめ細かく対応することで多彩な方面から地域をPRできます。
 印刷業者自らがアイデアを出し、交通機関や自治体などに提案すれば、一層印刷業界の裾野は広がるのではないでしょうか。
■東北新幹線新青森駅開業に向けて印刷された青森の観光パンフレット例
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写真左:(社)青森県観光連盟発行のガイドブック
写真右:青森市と(社)青森観光コンベンション協会発行の青森市総合観光ガイド
■青森県内の観光パンフレット抜粋。地域ごとに独自で制作している
●ダミーダミーダミーダミー
 
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