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期待される観光産業の今とこれから<第1回>〜外国人観光客を魅了する日本へ〜
 
感圧紙の業界の未来を考える グリーンレポート
期待される観光産業の今とこれから<第1回>
〜外国人観光客を魅了する日本へ〜
2010/10/12
1.成長分野として国が力を入れる観光
2.日本国内における最近の観光動向
  ・社会の動きに影響される国民の旅行への意識
  ・増える訪日中国人観光客

3.中国人観光客などに向けたさまざまなサービス
1.成長分野として国が力を入れる観光
 2006年に「観光立国推進基本法」が成立し、2008年には、国土交通省の外局として観光庁が発足するなど、国を挙げて観光立国実現に向けた施策を推進する基盤ができました。また、2009年12月に閣議決定された政府の「新成長戦略〜輝きのある日本へ〜」においては、「観光立国・地域活性化戦略」が成長戦略の一つとして位置づけられています。さらに、国土交通大臣を本部長に全府省の副大臣などで構成する「観光立国推進本部」も設けられました。この「観光立国推進本部」では、海外からの観光客の誘致はもちろん、自然環境や歴史文化などに触れ、それらの保全へとつなげるエコツーリズム、農村漁村に滞在して、地域の自然や人々と触れ合うグリーンツーリズムなど多彩な観光メニューの振興策や休暇取得の分散化の検討・調整などをすでに行っています。
 そして、政府は、各国間および企業間で開かれる国際会議も経済効果や地域の国際化・活性化などへの影響が大きいと捉え、国際会議の誘致を2011年までに従来の5割以上増やすことも目指しています。
 観光庁では、これらビジネスでの訪日も含め、年間訪日観光客を3,000万人にすることを目標とし、本年度から「尽きることのない感動に出会える国、日本」という意味を込めた「Japan. Endless Discovery.」というキャッチフレーズを使って、海外へのプロモーションを行っています。
2.日本国内における最近の観光動向
●社会の動きに影響される国民の旅行への意識
 「レジャー白書2010」の日本人の余暇活動参加人口ランキングを見ると、昨年は、ドライブが1位、国内観光旅行が2位に位置していることから、国内観光の人気が高いことがわかります。ただし、現実としては昨年の1人当たり年間国内宿泊観光旅行数は、1.42回(暫定値)で、対前年度比で6.0%減となっています(図1)。ドライブや国内旅行に出向いたものの、宿泊をしないで、賢く、消費を控えて旅行をした人が多かったのではないでしょうか。
 そして、今年になってからは、高速道路料金の休日割引制度(上限1,000円)の継続や、高速道路無料化実験などの恩恵を受け、5月のゴールデンウィークや7・8月の夏休みには多くの人が観光を楽しみました。また、サービスを提供する側からは、旅行する人を満足させるサービスが登場。例えば、予約が埋まりきらない平日の稼働率を上げるため宿泊料をディスカウントする宿泊施設や、格安で上質な車内空間を提供する高速バスなど、さまざまな工夫が見受けられます。
 生活における旅行の位置づけ調査(観光庁調べ・2009年度)では、71.8%もの人が「旅行は余裕があるときに趣味として行うものである」と回答しているため、景気回復を待って、国内の観光需要は増えていくことと考えられます。
●図1:国内宿泊観光旅行数の推移
●増える訪日中国人観光客
 一方、日本を訪れる外国人旅行者数は、2003年の「ビジット・ジャパン・キャンペーン」開始以来、上昇傾向にありましたが、昨年は、長引く世界的な経済不況および円高、新型インフルエンザの影響などにより、2008年を大きく下回り、679万人にとどまりました(図2)。
 経済産業省は、海外では評価が高い「クール・ジャパン」と呼ばれる日本独自の文化も、国内ビジネスには必ずしも結びついていないとみています。それらも外国人旅行者数の伸び悩みに影響している要因の一つになっているかもしれません。ちなみに、日本を訪れる外国人旅行者数の多い国は、韓国、台湾、中国、アメリカ、香港などと距離的に近いアジア諸国が中心となっています。
 訪日外国人旅行者数が減る中、中国人観光客は経済や社会的な影響を受けることなく、2008年に100万人を突破し、右肩上がりで増え続けています(図3)。2010年は、早くも1〜7月だけで約87万人(日本政府観光局調べ)に達し、過去最高を記録することが予想されています。
●図2:訪日外国人旅行者数の推移
●図3:過去10年における訪日外国人旅行者数の推移(上位5位まで)
3.中国人観光客などに向けたさまざまなサービス
 政府は、今年7月に中国人観光客のビザ発行要件を緩和しました。これまでは団体旅行しか認めていなかったものを、添乗員付きの家族旅行まで拡大し、観光客の年収制限も従来の約1/4まで引き下げ、富裕層だけでなく中間層も多く日本を訪れやすくしました。このビザ発行要件の緩和は、大きく訪日中国人の数を増やし、今年1〜7月累計で前年同期比59.2%増となっています(日本政府観光局発表)。
 主に、中国人観光客の訪日増加に伴い期待できるのが、日本国内の消費の活性化です。観光、宿泊、輸送、飲食はもちろんのこと、中国人らの旺盛な消費意欲が小売店の売り上げ向上につながることはいうまでもありません。
 中国人観光客の多くは、現金のほかにキャッシュレス決済できる銀聯(ぎんれん)カードを保有しています。この銀聯カードが使える場所は、首都圏のデパートや家電量販店をはじめ、地方のショッピングモール、大型スーパー、ドラッグストアなどで、訪日する中国人観光客の数と比例して増え続けています。
 全国各地の観光地や駅などでは、案内表示の中国語併記も増えました。関西国際空港では、空港内の店で中国人観光客から詳細な商品説明を求められた際などに利用できる電話通訳案内サービスを開始。ホテルチェーンの東横インでは、北海道に中国人専用ホテルをオープンしています。また、観光ビザ緩和に伴い急増した中間層が、手ごろな価格のクルーズ船を選ぶケースが増え、その寄港地となっている福岡では、街を挙げて中国人観光客を歓待。中国語で書かれたパンフレットや店のスタッフが使う指さし会話集の発行、中国語による街角の看板・標識の設置、中国人留学生を中心としたボランティアガイドの派遣などを行っています(下表、写真参照)。
 8月に行われた日中韓相互観光大臣会合時には、前原誠司国土交通大臣(当時)が声明発表後の会見で「日本国内の通訳、案内標識の充実、銀聯カードの導入拡大、ホテルのテレビで中国語衛星放送を視聴できるようにする」ことに言及しました。
 政府は2016年にアジア地域から1,635万人、そのうち中国からは600万人(09年実績101万人)の観光客を日本に呼び込む考えです。今まさに、中国人観光客誘致のための社会的な整備を急いでいるところです。

 今回は政府の基本方針に始まり、国および企業が取り組んでいる、中国人を中心とする外国人観光客への誘致・対応についてご紹介しました。次回第2回目では、日本人向けに行われている国内での観光施策を取り上げます。従来、存在しなかった新しいスタイルの旅行などもご紹介し、観光分野における印刷ビジネスの可能性を探っていきます。
■表 訪日中国人観光客に向けたサービスの一例
関西国際空港 電話通訳案内サービス(空港内に通話端末190台設置・中国語、韓国語、英語に対応)
東横イン(ホテル) 北海道に中国人専用ホテルをオープン
銀座三越(百貨店) 外国人観光案内所を設置(中国語、英語に対応)
福岡観光コンベンションビューロー 外国人の接客用指さし会話集ダウンロードサービス(中国語、韓国語、英語に対応)
ワタミ(居酒屋チェーン) 中国語メニューを用意
HIS(旅行代理店 ) 中国語、英語、韓国語の宿泊予約サイト設置
ベネフィット・ワン(福利厚生アウトソーシング企業) 日本旅行の各種手配および中国系企業インセンティブツアーの手配サービス、10月開始予定
■福岡市内で入手できる中国人観光客向けパンフレット例●福岡市内で入手できる中国人観光客向けパンフレット例
①「天神ショッピングガイド」
発行元:We Love 天神協議会、協力:(財)福岡観光コンベンションビューロー、福岡市
クルーズ船で福岡を訪れる中国人観光客および中国で行う福岡の観光PR時に配布。今年7月に発行。

②「中国語ビジターズガイド」
発行元:(財)福岡観光コンベンションビューロー
岡市の公式観光ガイドブック。2010年の発行部数は、中国語(簡体字)版6万部 中国語(繁体字)版2万部、韓国語版4万部、英語版6万部、日本語版32万部(年1回発行)。
※中国語(簡体字)は一般に中国本土、中国語(繁体字)は一般に台湾・香港で使用されている文字のこと。
   
③「Now map」
発行元:(有)Fukuoka Now
福岡在住外国人向けのフリーペーパー「Fukuoka Now」編集部が発行する福岡市内のマップ。写真は、クルーズ船客向け(英語・中国語)で、今年66回寄港予定の中国発客船対象に10万部発行(通常のNOW mapは英・中・韓併記)。
 
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