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「子ども手当」と「高校無償化」による市場の拡大と印刷需要
 
感圧紙の業界の未来を考える グリーンレポート
最新ブックストア事情 2010/5/12
1.数値で見る書店の現状
2.書籍へのRFID(ICタグ)導入
3.「本を買う」から「本と過ごす」へ
4.今後の印刷需要の可能性
1.数値で見る書店の現状
■全国の書店数と総売場面積の推移
 若い世代を中心とした活字離れが取りざたされて久しい今、経済不況の影響もあり、非常に厳しい状態に置かれている出版業界。なかでも、書籍を消費者へ販売する役割を担う書店、特に小規模の書店への打撃は深刻なものとなっています。
 公正取引委員会の公開資料によると、2001年には全国に2万店以上あった書店が、2008年には約1万6,000店に減少。10年弱でおよそ5,000店近くもの書店が廃業している一方で、全国の書店の総売場面積は増加の一途をたどっていることがわかります(下記図表参照)。
 また、同資料には、2001〜2008年の間に開店を迎えた書店と、閉店した書店の平均売場面積も掲載。その資料によると、2008年の開店書店の平均面積は「約220坪」、閉店書店の平均面積は「約50坪」となっており、書店の「大型化・集約化」の傾向がうかがえます。
 現状の推移でいくと、総書店数は今後10年のうちに1万店舗を割るのではないか、との予想もなされています。小規模書店の経営者にとっては、しばらく厳しい時代が続くといえるでしょう。
●書店数および売場面積の推移
●新規店と閉店それぞれの総面積および1店舗あたりの平均面積の推移
■書籍販売における問題点
 「書店経営は儲からないビジネス」といわれます。その主な原因として挙げられるのは、書籍の販売におけるマージンの低さと、「再販制度(再販売価格維持制度)」という独自の販売制度が影響しているのではないか、との指摘もなされています。
 再販制度とは、出版社が設定した書籍の価格を、取次業者や書店が維持しなければならない制度です。書籍がディスカウント販売されることがないのは、この制度により出版物の定価が守られているためです。
 書店は、「売れる商品」を自ら開発することができず、価格面で差別化することができない以上、「ポイントカードの導入」という間接値引き以外には、売上向上のための施策展開が非常に困難な業態です。再販制度は、安売り競争による価格の下落を抑える機能がある一方で、販売促進策の選択肢を狭める原因にもなっているのです。
 日経MJ紙調査による「2009年度書籍・文具業の総売上経常利益率ランキング(※)」(下記図表参照)を見ても、業界トップテンにランクインする大手書店でも、総売上経常利益率は1%台が多くを占める結果となっています。リスト外の中・小規模書店においては全国平均で0.6%となるなど、総じて利益率の低い業界であることがわかります。
 また、「万引き」による経営への圧迫も深刻です。大手14書店1,161店舗へのアンケート調査から試算した数値によると、万引きによるロス率は1.41%にものぼり、全国平均の利益率0.6%の2倍以上の損害を被っていることになります。これは、経営体力に乏しい小規模な書店はもちろん、大型書店においても致命的な打撃といえます。
※総売上経常利益率…総売上経常利益率=会社の全利益(経常利益)を百分率で算出したもの。この値が10%であれば、100円の商品を販売した場合、10円の利益が出ている計算となります。
●2008年度 書籍・文具業の総売上経常利益率ランキング(トップ10)
2.書籍へのRFID(ICタグ)導入
 万引きによる書店経営への打撃については前章でもふれましたが、現在、その問題を解決するために着々と進行しているのが、書籍へのRFID(※)、通称ICタグを導入するプロジェクトです。
 これは、日本書店商業組合連合会、日本出版取次協会などの5団体が2002年に設立した「一般社団法人日本出版インフラセンター(JPO)」によって推進されており、全体の70%にものぼる新古書店への換金目的で行われる「万引き犯罪の抑制」を主目的としています。
 具体的には、次の3点の新たな書籍流通システムを構築することとしています。
①「書店で清算済み」かどうかを示すフラグを設けたICタグを、書籍の背表紙に埋め込む。
②書店に入荷したすべての書籍のフラグを「未清算」に設定し、購入時に「清算済み」に書き換える。
③新古書店に持ち込まれた書籍に対して、「清算済み」でない書籍に関しては買い取りを行わない。
 発足当初はICタグの読み取り精度などの基礎実験(2003年)に始まり、実際の製本ラインでのICタグ装着実験と流通プロセスでの有効性の検証実験(2004年)や、業務処理と消費者への新しい付加価値提供サービスの実証実験(2005年)、低価格ICタグ「響タグ」を現状の製本ラインでの装着実験と、流通の効率化についての実証実験(2006年)など、2002年の始動から現在までにさまざまな実験がなされ、実用化へ向けて着々と進行しています。
 本プロジェクトは、万引きの抑制効果をはじめ物流や在庫管理、マーケティングの効率化など、出版流通業界全体に恩恵をもたらす技術として、大きな期待が寄せられています。
※総売上経常利益率…総売上経常利益率=会社の全利益(経常利益)を百分率で算出したもの。この値が10%であれば、100円の商品を販売した場合、10円の利益が出ている計算となります。
●ICタグによる書籍の販売・買い取りシステム構成図
3.「本を買う」から「本と過ごす」へ
 現在、書店業界は一部の大型店の独壇場となっています。しかしその一方で、従来の書店とは一線を画す「新しいタイプの書店」が次々にオープンするなど、都心部を中心とした新たなムーブメントが見受けられます。
 書籍以外にも、生活雑貨、衣類、食品、ミュージックCDなど、多彩な品揃えで成功した「ヴィレッジヴァンガード」を筆頭に、カフェ機能も備えた「ブックカフェ」、特定の書籍ジャンルに特化することで支持を得る「特化型書店」、地元の歴史に関する書籍を豊富に取り揃える「地域密着型書店」、独自の書籍レイアウトで、顧客にさまざまな関連書籍を積極的に提示する「提案型書店」など、各店が非常に個性的な店づくりを行っているのが特徴です。
 また、自宅用や店舗用の本棚制作、本を使ったディスプレイデザインの制作など、売場空間を超越し、多方面にビジネスを拡張していく書店も見られます。
 これら新世代書店の多くは、個人経営による比較的規模の小さい書店ですが、本の売上に加え、飲食その他の商材での利益回収が望める点や、店内で長い時間滞在してもらうことで、より消費の機会を増やすなどの一般書店にはない仕掛けが見られ、高い客単価を実現する理由にもなっています。
 このように、新世代書店は「本そのものの楽しみ」に加え、「本と多彩なカルチャーの融合」によって、さまざまな付加価値とライフスタイルを伝え、共有する場となっているのです。
●個性的な新世代書店一例
4.今後の印刷需要の可能性
 書店業界全体が過渡期にある現在、それぞれの店舗の規模やコンセプト、顧客層を生かした多彩なプロモーションが展開されています。
 たとえば、東京・青山ブックセンター本店では、各種ワークショップやアートギャラリー企画、ピアノライブなど、店舗空間の広さを生かしたイベントを定期的に開催しています。
 東京・国立の益田書店本店では、「書店×デザイン=∞(無限大)」と題し、書店の中にさりげなく地域のデザイナーの作品を展示するなど、外部と連携したプロモーションを展開、書店空間に付加価値をもたらすことに成功しています。
 一方、小規模書店では、複数の書店が連携したキャンペーン展開などが見られます。なかでも注目されたのが、「京都府書店商業組合」(府内約200の書店組合加盟店により運営)が2009年末から2010年初頭にかけて行った「本屋さんへ行こうキャンペーン 龍馬本フェア」。組合加盟店全体でキャンペーンを企画することで、地域書店の全体の活性化を促すことに成功しています。
 このような多種多様な書店の販促活動が活性化していくなかで、チラシ・ポスター・DMの需要、プログラムやワークショップ教材の需要、キャンペーンリーフレットや応募用紙、応募シールの需要など、さまざまな印刷ニーズが発生しており、このような動きはますます拡大していくことも予想されます。
 さらに、今後注目されそうなのが、電子書籍端末「キンドル」や、マルチメディア端末「iPad」などの電子書籍メディアです。これらの普及・拡大により出版コンテンツ全体の刷新が行われ、販促ツールをはじめとした大規模な印刷需要が発生する可能性も十分に考えられます。
 現在の業界動向をはじめ、関連商品の最新情報をいち早く入手し、予想されるニーズに備えておくことが、大きなビジネスチャンスをつかむ近道といえるでしょう。
●書店にかかわる印刷需要
 
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