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「子ども手当」と「高校無償化」による市場の拡大と印刷需要
 
感圧紙の業界の未来を考える グリーンレポート
「子ども手当」と「高校無償化」による
市場の拡大と印刷需要
2010/4/12
1.「子ども手当」とは
2.「高校無償化」とは
3.新たな成長産業の出現
4.今後の印刷需要について
1.「子ども手当」とは
●「子ども手当」制度概要
 1972年より施行されている「児童手当」が金銭面において不十分であることに加え、扶養控除との関係があいまいであるとして、親の所得制限などは設けない給付金制度として創設された「子ども手当」。
 政府によると、経済的理由により就学が困難な家庭を対象に、学用品購入費や給食費などの一部を援助する「就学援助費」の支給を受けている家庭が年々急激に増加(下記図表「就学援助費の推移」参照)していることもあり、「相対的に高所得者に有利な所得控除制度から、中・低所得者に有利な手当制度などへ切り替える」という、比較的所得の低い世帯を優先する施策として、今年度から開始されることになりました。
 また、「次代の社会を担う子ども1人ひとりの育ちを社会全体で応援する」「子育ての経済的負担を軽減し、安心して出産し、子どもが育てられる社会をつくる」ことが政策の目的として明文化されており、生活・教育支援策の大きな柱としての側面を担っています。
 では、今後廃止される予定の旧来制度「児童手当」と、新たに創設された「子ども手当」の違いは、どんなところにあるのでしょうか。
 民主党のマニフェストによると、「中学卒業までの子ども1人当たり年31.2万円(月額2.6万円)」が給付(2010年度は半額支給)されることになっており、支給額は児童手当を大きく上回ることになります。また、支給期間も「小学校修了前」から「中学校卒業まで」と、3年間の期間延長がなされ、支給対象への所得制限についても「制限なし」へと変更されています。これにより、新たに支給の対象者数は約500万人増加し、全体では1,700万人程度に支給されることになります。
 以上の変更点を見てみると、基本的な内容は「児童手当」に準じながらも、手厚い支援制度へと変化したといえるでしょう。
●就学援助費の推移
●「児童手当」と「子ども手当」の違い
●「子ども手当」をめぐる問題
 2010年3月16日、「子ども手当」法案は衆議院で可決されました。その実施には、初年度である2010年度は約2.3兆円、満額支給となる2011年度以降は、年間約5.3兆円もの財源が必要といわれています。
 子育て支援制度としては、旧来の「児童手当」より充実した内容となった「子ども手当」ですが、その支給額の手厚さから、財源確保の問題が連日新聞の紙面を賑わしています。
 財源捻出問題として記憶に新しいのが、当初「子ども手当は全額国庫負担」という前提のもと動き出したものの、廃止する予定であった「児童手当」を並行して存続、その負担分約8,400億円のうち、約4,700億円を自治体に、約1,400億円を事業主へ求めざるをえなくなったことが挙げられます。また、民主党の2009年政権公約でもあった「暫定税率の廃止」を事実上断念せざるをえなくなったこともあり、半額支給分の財源2.3兆円の捻出にも多くの妥協と調整を必要としました。
 その倍額以上となる2011年度の財源に至っては、さらに多くの対処が必要となるのは間違いありません。約5.3兆円というと、財務省による《平成20年度一般会計歳出歳入の内訳》によると、「文教及び化学振興費」の5兆3,122億円、「防衛費」の4兆7,797億円と同規模、もしくはそれを上回るほどの大きな財政負担となっています。
 これに対応するために、政府は扶養控除(財源8,000億円)と配偶者控除(財源6,000億円)の廃止を検討、税収増を見込んでいます。扶養控除と配偶者控除が廃止された場合、子どものいない世帯や中学生以上の子どもを持つ世帯にとっては事実上の増税となるため、今後さらに、国民の理解を求めることが必要となってくるでしょう。
2.「高校無償化」とは
 「子ども手当」と同じく、2010年度から実施されるのが「公立高校の実質無償化政策」で、公立高校の授業料を国が全額負担する内容となっており、マニフェスト発表当初、大変話題になったのは記憶に新しいところです。
 この施策の恩恵を受けられるのは、公立高校に通う子どものいる世帯だけではありません。私立高校の場合は、生徒1人当たり年額11万8,800円(公立高校授業料標準額と同額)の就学支援金を高校側へ支給することで、公立高校相当分の授業料が軽減されることになります。
 また、生徒の家庭が年収250〜350万円未満程度の場合は、標準支給額の1.5倍(17万8,200円)、年収250万円未満の場合には2倍(23万7,600円)と負担軽減の措置がとられ、低所得世帯にはいっそう手厚い支援がなされる制度となっています。
 こうした国の動きを受けて、独自に私立高校の授業料を世帯収入に応じて無償化する自治体も一部現れてきています(下記図表「独自の支援策を打ち出す自治体例」参照)。地方分権化の中で、どこまで授業料を負担するのかは個々の自治体の判断によりますが、近隣の都道府県との間で著しい不平感が出ないよう、地域ブロック間での協議が進むことで、今後この動きがさらに広がる可能性も考えられます。
 いずれにしても高校への進学率が98%にまでのぼる今、高校教育の「準義務教育機関」という側面はさらに強まることは必至です。そのような中にあって、国や自治体による積極的な支援策展開は、親や保護者にとって教育と経済の両面において、大きな後押しとなるでしょう。
3.新たな成長産業の出現
 新聞・テレビなどでは、連日「子ども手当」をめぐる財源問題に大きな関心が寄せられていますが、政府の方針に呼応して、市場に新たな活気が生まれていることも忘れてはならないでしょう。
 現在、少子化の影響から、子ども1人に費やす教育費の割合は増加している傾向がみられます。そのため、学習塾、学習教材、eラーニングなどの教育分野でのビジネスをはじめとして、保育所・幼稚園、妊婦向け商材、幼児向け商材など、子育ての分野におけるビジネスが今後の成長産業として注目を集めています。
 電通総研の試算によると、中学生以下の子ども1人当たり月額1万3,000円の「子ども手当」の支給(2010年度を想定)が丸1年続いた場合の経済波及効果は2兆4,377億円にのぼり、塾や学習教材の購入などによる消費押し上げ効果は、1兆2,889億円にのぼるという結果が出ています。中学生までを対象とする「子ども手当」に、高校生を対象とする「高校無償化」がリンクしていくことで、幼児から高校生まで、「子どもたちの学びの場」と「子育て世帯の消費の場」を増やす大きなきっかけとなることが期待されています。
 また、「子ども手当」の使いみちに関する親へのアンケートによると、54%以上の回答者が『貯蓄へまわす』と答えているものの、『使う』と答えた回答者の30.6%が、子どもの教育費(学習塾や習い事、学費など)としての利用を検討しているとの結果になりました(下記図表「子ども手当の使いみちは?」参照)。
 世帯年収別による「子ども手当」の使いみちを見てみると、年収の高い世帯ほど子どもの教育、主に学校教育以外の学習塾や習い事などへの利用を考えており、逆に年収の低い世帯では、36%の世帯が生活費の補填にまわすというアンケート結果もあり、年収の違いによる「子ども手当」の使い方がはっきりと分かれていることがわかります。
 今後しばらく、教育関連ビジネスが成長産業であることは十分に考えられ、これらのビジネスにとって、子育て世帯への「子ども手当」の支給と「高校無償化」は、さらなる追い風になることは間違いないでしょう。
●子ども手当の使いみちは?
●世帯年収別子ども手当の使いみち
4.今後の印刷需要について
 「子ども手当」支給における窓口業務を担当する各自治体は、政府からの具体的な指針が提示されていない現在、インターネット上での簡単な案内を行うにとどまるなど、広報活動に移れていないというのが実情のようです。とはいえ、制度実施のために不可欠なツール、例えば、政府から各自治体へ配布する周知徹底のための内部マニュアルや教育マニュアル、自治体から国民への広報ツールとしてのポスター、パンフレット、チラシ、利用ガイド、そして、申請時に必要な帳票類や封筒類など、行政関連のツール類だけをみても多くの印刷物需要が見込めることは間違いありません。
 また、前章で紹介した教育・育児関連などの成長が著しい産業に加え、「子ども手当」と「高校無償化」を当て込んだ多くの民間企業が、自社商材のアピールを強化させるために、さまざまなツールが発生することも考えられます。例えば、情報システムの設計・開発・保守を行うアイネスは、旧来の児童手当のシステムを30以上の自治体に向け提供しており、今後、「子ども手当」に関連するシステム開発で、さらに自治体へ向けたビジネスを拡大していくことが予想されます。
 回転寿司チェーン「くら寿司」を展開するくらコーポレーションは、ターゲットを家族連れに設定し、子どもが喜ぶメニューやデザートなどに注力。低迷する外食産業の中で既存店売上高が計画を上回って推移しており、「子ども手当支給でさらに恩恵を受ける可能性が高い」という投資判断を受けるなど、さらなる業績増加に期待が寄せられています。
 また、いちよし経済研究所によると、アミューズメント施設を展開するラウンドワンも2011年には経常利益が回復傾向に転ずると予想。設備関連のリース料の期間満了、広告による収入の増加と並んで、「子ども手当」がファミリー層の集客に寄与すると分析しています。
 さらに、「子ども手当」支給に伴う所得増効果が大きい年収580万円程度までの世帯を中心に、自動車購入が18%程度増加する可能性があるとの投資情報も飛び交うなど、自動車産業にとっても追い風となる可能性があります。
 今のところ、これらの見解は予想の域を出ないとしても、「子ども手当」と「高校無償化」の影響が幅広い産業に及び、多方面からの印刷需要を刺激しやすい状況といえ、大きなチャンスとなり得るはずです。
 
 2011年度以降、特に「子ども手当」が当初の計画のまま進行していくかは定かではない状況ですが、今後の行政の動きを見極め対応し、新たなニーズを探っていくことが必要となってくるでしょう。
●制度実施の流れと広報ツール需要
※掲載情報は、2010年3月16日現在のものです。
 
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