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農地法改正による農業の未来<第2回>
 
感圧紙の業界の未来を考える グリーンレポート
農地法改正による農業の未来<第2回> 2010/1/12
1.地方行政機関・各種支援機関の取り組み
2.増加する農業法人やNPOの場合
3.今後の印刷需要について(まとめ)
1.地方行政機関・各種支援機関の取り組み
 自然を相手にするうえ、収穫まで時間がかかる農業は、事業としての採算が軌道にのるまでとても時間がかかる産業です。また、農業は技術やノウハウが独特で、しかも地域ごとに異なるため、新規の参入者が習得するのに非常に苦労するといわれています。さらに、農業は地域内の農業従事者との助け合いが重要で、地域の人々の輪に溶け込むには多大な労力も必要とします。
 これから新規就農者の参入を見込んでいる政府や地方自治体にとって、これらの問題を取り除くことは大変重要になります。ここでは、新規就農者が身近な窓口とする県や農林水産省の地方局などの公的機関の取り組みについて考察していきます。

●地方行政機関の対策
 農林水産省では、就農者を支援する窓口を設け、新規就農者の相談などに応じるなど地方の窓口ごとにさまざまなサービスを導入しています。具体的な取り組みとしては、就農者に無利子でお金を貸し付ける就農支援資金などの制度を設けたり、全国の農地情報の提供を行ったりしています。また、技術やノウハウを提供したり、全国の農業法人(※)や地方自治体が行う技術支援や地域の田畑の情報提供を行っています。
(※)農業法人とは、農業を運営するにあたってつくられた組織のことをいいます。農業法人は大きく2つに分けられ、「農業協同組合法(農協法)」が定めている「農事組合法人」と有限会社、株式会社などの「会社法人」に分けられます。
●地方自治体の取り組み
 都道府県など地方自治体では、農業へ参入するための支援金や技術の支援はもちろんのこと、地域のコミュニティーに新規就農者がすぐに溶け込めるように地元の農業従事者との交流の場を設けたり、農業を身近に知ってもらうイベントを定期的に開催したり、農業の地域スクールを開設したりさまざまな取り組みを実施しています。
 農地法人の参入が多い鹿児島県を例に見てみると、県内の各市では、新規で農業に参入してきた企業がすぐに農業を始められるように田畑の状態を整えたり、農地の斡旋やJAを通じた販売ルートを確保するなど、企業が円滑に農業に参入できるサービスを充実させています。
 一方、全国から農業従事者を集めたり、早くから近代的な農業を取り入れるなど農業に積極的に取り組んできた秋田県では、県内で農業法人を育成しようとして、農業技術などを教える農業スクールの創設や就農支援資金の設置、農業研修制度など多彩な施策を設けています。
 このほか大分県をはじめ、企業や団体に向けて積極的に誘致活動をしている自治体はたくさんあります。農地法改正後は、より一層、企業の農業参入が活発化すると予想され、地方自治体の企業へのアプローチもさらに増えていくと期待されます。
●企業の農業参入における行政機関、地方自治体などの取り組み
2.増加する農業法人やNPOの場合
 1992年、農林水産省が農業経営の法人化を推進して以来、農業法人の数は急激に増加しています。農業法人が初めて認められた1962年、全国で114法人にすぎませんでしたが、その後、農業法人は急増し、2008年には10,519法人に達しています。2009年現在、まだ調査が進んでいませんが、近々20,000法人を超えるとも推測されています。また、農業法人の売上高に注目すると、2004〜2008年の過去4年間の売上の統計では、2004年は全体で2億3,280万円、2008年には2億5,203万円を記録し、4年で約1.1倍の成長を示しました。
 農地法改正が施行され、一般企業などが参入し、さらに農業法人数が増大すれば農業の売上額もさらに高まると見込まれます。
 一方、農業法人を地域別で見ていくと、関東がもっとも多く3,301法人、次いで九州、北海道、中国・四国、東北、東海、北陸、近畿の順となっています。関東では、株式会社が362法人、有限会社が2,362法人と農業生産高が国内で最も高い北海道の数値をはるかにしのぐ値を示しています。
●都道府県別農業法人数
●一般企業の場合
 農業に参入する企業は主に2つのタイプに分類できます。地方の中小企業が参入するタイプと大都市圏などの巨大企業が参入するタイプです。地方の中小企業の場合、雇用の維持と農作物の安定供給が農業に参入する大きな動機となっているようです。地方の場合、参入する業態は建設業が圧倒的に多いことから、公共事業が減り、農業が雇用の受け皿となっているケースが見受けられます。建設業は農地の造成や排水などの技術もあり、成功しているケースも少なくありません。それに対して、地方の中小食品産業の参入の場合は、自分たちで持っている販売経路をそのまま活用して利益を上げている、いわゆる「農商工連携」(※)の動きがみられます。
 一方、大企業の場合は食品産業を中心に、化学メーカー、流通サービス業、エンターテイメント業など幅広い業態で参入が広がっているのが特徴です。合わせて、大々的に消費者へ農業参入をPRし、食の安全を訴えている企業が目立っています。自社スーパーの食の安全をさらに促すために、2009年7月、流通大手のイオンが農業に参入すると発表、野菜のプライベートブランドを自社のグループ店舗で販売すると表明したのも、その一例でしょう。
 また、最近では、単に食の安全として農業への参入をPRする材料としてだけではなく、農作物の生産量を増やす企業も生まれています。そのような企業では、食の安全性を確保するために、大部分は有機野菜などを生産する傾向にあります。通常、それらは農薬などを使わない分、生産量が落ちるといわれていますが、大規模農業と近代化された機械を豊富に導入することで生産力を高めています。
(※)農商工連携・・・「農林漁業者と商工業者が通常の取引関係を超えて協力し、お互いの強みを活かして売れる新商品・新サービスの開発、生産等を行い需要の開拓を行うこと」です。
J-NET21 農商工連携パークウェブサイトより引用
●農業法人の推移
●農業の新しい担い手
 農業に対するイメージが変わったことや食の安全性が見直されていること、昨今の経済不況による就職難などから農業に目を向けはじめる人たちが増えています。なかでも、若い世代を中心に農業への関心が高まっています。農林水産省の2008年の調査によると、他の世代で就農者数が減る一方で、39歳以下の農業の新規参入者だけは14,430人とわずかな数ではありますが上昇しました。
 また、「機会があれば農業をやってみたい」という人たちも多くなってきました。ボランティアとアルバイトの中間の通称“ボラバイト”といわれる人たちもいます。さらに、農業の技術を学びながら農家のお手伝いをする“援農”をしたいという人たちも増えています。地域によっては、そのような人たちに向けてボランティア講座の開設や市民農業大学などを開設しているところも増えてきています。
 農地法改正によって、個人でも農業に参入しやすくなり、今後、農業に新たな活路を見いだす人たちも多くなると予想されます。
●ポラバイト、援農の仕組み
3.今後の印刷需要について(まとめ)
 2009年春、都心のビル群のど真ん中にある代々木公園に、突如、田んぼが出現し話題を呼びました。これは、食の大切さをPRするために催されたイベントで、「渋谷通り商店街」が協力したものです。また、“ギャル社長”といわれる藤田志穂さんが「若い人たちが食や農業に興味を持つキッカケをつくる」をコンセプトに、農業に参入。若者うけする農業ファッションや若者が気軽に参加できる農業体験ツアーなどを企画して、若者が農業に興味を持つきっかけづくりを行っています。2009年1月には、人気タレントを擁する総合エンターテイメント会社も農業に参入すると発表しました。同社はテレビ番組などを通じて、食の大切さを呼びかけたいとテレビ番組を制作しました。一方、2009年6月には若者をターゲットに絞った季刊農業雑誌「アグリズム」(農業技術通信社)が創刊されるなど、今や農業が一種のブームとなっています。
 農地法改正により企業の農業参入が増えると予想される今後、情報がとても重要な役割を担うことはいうまでもありません。そのためにも政府・地方自治体は、農地法改正施行後、本腰を入れて広報活動を行うといっています。政府から地方自治体、地方自治体から企業、企業から一般市民へ情報が円滑に流れなければ、地方自治体が企業誘致を積極的に行っても見過ごされてしまうということもあるからです。
 一方、消費者が農作物に対して正しい知識を持っていなければ、農業に参入した企業が安全な農作物を作っても認知されません。このようなことを防ぐためにも、例えばトレーサビリティ(2009年1月、2月号参照)が重要視される有機農作物などは消費者への正しい情報は必要不可欠であり、その周知への手段として印刷物を使ってPRすることは有効な方法といえるのではないでしょうか。
 実際、全国農業会議所や鹿児島県、大分県をはじめとする地方自治体の多くは、企業の誘致用などに法施行後もパンフレットなど広報物を積極的に制作していくと表明しています。各公的機関が発行するパンフレットやチラシ、企業をはじめとした農業法人が催すイベントや講演会、広告、パンフレット、チラシなどは増加を示すと考えられ、今後、農業を取り巻く印刷需要はさらなる高まりを見せていきそうです。
●消費者向け販促
●業者向け販促
●農業を取り巻く広報イベント・印刷物の今後の動き
 
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