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社会保障カード導入と印刷需要〜電子政府サービスによる新たな社会へ〜<第2回>
 
感圧紙の業界の未来を考える グリーンレポート
社会保障カード導入と印刷需要
〜電子政府サービスによる新たな社会へ〜
<第2回>
2009/10/13
1.医療・介護・年金分野への導入のメリットと課題
2.将来的なサービス、電子政府サービス全体の構想
3.予想される帳票を含む印刷需要
1.医療・介護・年金分野への導入のメリットと課題
1−1 医療におけるメリット
 はじめに、社会保障カードの導入によって大きく転換が図られると推測される、医療分野におけるメリットを探っていきます。
 政府は、社会保障カードの導入により、今後は医療機関が各保険者へ月ごとに作成しているレセプト(診療報酬明細書)の発行作業を大幅に削減でき、さらにレセプトの転記ミス・過誤調整なども抑えられると見込んでいます。
 一方、利用者は、パソコンで手軽に情報を閲覧できるため、医療保険の資格取得漏れなどに気付きやすく、そのことが原因で発生する医療機関の未収金の問題も解決できる、レセプト取得時の手続きのロス時間を減らせる、などのメリットがあるとしています。
 また、レセプトのオンライン化が実現すれば、頻発する医療機関の水増し請求や架空請求が抑止できると予想されています。さらに、レセプトには医療機関を受診した際の履歴が残るので、複数の医療機関による検査や薬の投薬の重複などが避けられ、医療費を削減できると期待されています。
●オンラインによる医療保険資格確認のイメージ
1−2 医療における今後の課題
 レセプトなど機密性の高い情報にオンラインでアクセスする場合、最も問題となるのは、プライバシーの保護や個人情報の漏えいといった点です。レセプトには、患者氏名、性別、生年月日、そして患者の健康保険加入情報、疾病名、請求元の医療機関名、診察料、さらには病歴などの機密性の高い個人情報が記録されており、万が一、情報が外部に漏れてしまうと被害が甚大なものとなってしまいます。
 そうした中、政府は、レセプトを非開示として自由に閲覧できないようにするなどの案を検討し、セキュリティーの面に関しては、今後さらなる検討を進めていくとしています。

1−3 介護分野へのメリット
 一方、政府は介護保険へのメリットとして、利用者側としては他の自治体に引っ越しても介護保険被保険者証を保険者に返す必要がない、介護サービスの費用を簡単に確認できる、などを挙げています。
 また、事務上のメリットでは、所得の低い人の施設サービスの居住費、食費を手助けする介護保険負担限度額認定証を別途に発行する必要がない、介護サービス事業者が介護給付費明細書へ資格情報を転記する際のミスがなくせる、保険者と審査支払機関の過誤調整が軽減される、などの利点も挙げられます。

1−4 介護分野における課題
 介護保険のサービスを実際に利用するのは、基本的に65歳以上の高齢者(※)がほとんどです。利用者の中にはさまざまな機関から送られてくる情報を使いこなす能力や判断能力などについて、大きな差があることから、さまざまなケースを想定しながら、高齢者でも利用できるシステムの開発や教育への取り組みが求められています。また、個人情報が悪用され犯罪に巻き込まれるケースが頻発する可能性もあります。そのような被害をなくすためにも、今後は希望者だけにカードを配布する、一部地域で先行して導入し、具体的にどのような問題が発生するかなど検証を重ねていく必要がありそうです。

※40〜64歳までの特定疾病病(がん(がん末期)、関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症、後縦靭帯骨化症、骨折を伴う骨粗しょう症、初老期における認知症など)の人も介護保険サービスを受けられます。

1−5 年金分野におけるメリット
 2007年の「年金記録問題」から政府に対する国民の不安は一層高まっています。そうした中で、政府は、社会保障カードを導入することで国民の不安を解消できると大いに期待しています。社会保障カードを使えば、自分の年金記録をいつでも手軽に閲覧でき、入力ミスなどがあっても利用者が早期の段階で気付きやすいなどのメリットがあります。従って、年金記録問題の原因のひとつである記入ミスが解決できると期待されています。さらに、医療費、介護費を年金から自動で天引きできるシステムをつくれば、事務費用を大きく削減できると見込んでいます。
 今後、厚生労働省の推計では、2015年度には年金給付額は116兆円と国民所得比で25%を上回ると推計されています。政府が行う年金対策の柱として社会保障カードは、さまざまな点から期待できそうです。
2.将来的なサービス、電子政府サービス全体の構想
 政府は今後、社会保障カードがつくるネットワークを、年金・健康保険・介護保険の統合だけにとどまらせず、そのネットワークをさらに拡大させようと試みています。計画では、さまざまな分野の行政機関や銀行などの民間企業の参入を期待しており、実現すれば、利用者が持つID(専用口座)を入力するだけで、自分だけの膨大な情報を活用できる巨大なネットワーク網が出来上がることになります。その構想は、「電子私書箱」(仮称)構想と呼ばれ、将来に向けて着々と準備が進められています。

2−1電子私書箱の現状
 インターネットを介して、医療機関や保険者などが保有するレセプトや年金情報など個人が持つ情報を閲覧・入手・統合できる専用の口座を、国民一人ひとりに提供するサービスが「電子私書箱」です。2007年10月に発足した「電子私書箱による社会保障サービスなどのIT化に関する検討会」において、現在、そのあり方や課題が検討されています。
 電子私書箱を適切に利用すれば、民間機関などの第三者からのアドバイスなどのサービスを受け取ることが可能になり、今後電子私書箱が拡大すれば、続々と新規機関が参入すると期待されています。
 しかし、電子私書箱について明るい展望を描く一方で政府は、社会保障カード・電子私書箱を活用して事務費用をいくら削減できるかなどをまだ具体的に算出できていない段階です。また、これから社会保障カード・電子私書箱を具体的にどのように活用していくのかについても明らかにしていません。政府は、今のところ、「社会保障カード」に「住民基本台帳カード」など、すでにある仕組みを採用し、費用を削減していくということのみ表明しています。
●電子私書箱のメリットのイメージ
2−2 実現への基盤の整備
 国民全体が不自由なく使える巨大なシステムを構築することは、容易なことではありません。
 そこで政府は、電子私書箱を実現するには、3つの柱を立て、政策を推進していくとしています。
 まず1つ目としては、国と地方自治体が一体となって推進できる体制づくりを整備すること。2つ目は、電子政府全体を統括する役割の、政府CIO(chief information officer =最高情報責任者)を設置すること。そして3つ目は、インターネット側からサービスを受け取るクラウド技術(※)などを活用した地方における共同利用通信基盤をつくることです。

※クラウド技術/クラウドコンピューティング…Webブラウザーを起動し、インターネット上にあるWebサービスを利用するだけで、パソコンで実行しているような処理や機能がすべて利用できるようになるという考え方。米・グーグルのCEOであるエリック・シュミット氏が2006年11月に提唱した。インターネットで図を表現するとき、ぼんやりとした雲(クラウド)のような形を描くことが多いことに由来する。

出典/日経パソコン用語辞典 日経BP社
●国民本位の新しい電子政府・自治体の推進
3.予想される帳票を含む印刷需要
 高齢化がさらに進むといわれる今後、社会保障カードの役割は、医療・介護の分野でますます重要になってきます。また、電子政府が進展していくなかで、さまざまな行政分野が電子私書箱のネットワークに参入してくると期待されています。
 しかし、現状では社会保障カードの仕組みについて明確に整理されたものがなく、その狙いや基本的な考え方が国民に伝えきれておらず、必ずしも十分な理解がされてきませんでした。利用者への配慮としては、今後十分な周知期間を設ける必要があると思われ、国民に対して、利用方法の認知拡大を図っていくことが重要になってくるでしょう。
 以上のように、社会保障カードが本格的に施行するまでには、まだまだ多くの課題を抱えています。しかし、印刷需要に関しては、「ねんきん特別便」「定額給付金事業」などの例を挙げるまでもなく、制度が本格的に動き出す前の助走期間から大規模な印刷特需が見込めると予想されます。政府の推進策をビジネスチャンスととらえ、その動向をしっかりチェックしていくことが大切になってくるでしょう。
●考えられるツールの需要
 
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