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社会保障カード導入と印刷需要〜国民全体に関わる制度変更がもたらすもの〜<第1回>
 
感圧紙の業界の未来を考える グリーンレポート
社会保障カード導入と印刷需要
〜国民全体に関わる制度変更がもたらすもの〜
<第1回>
2009/9/10
1.社会保障カードとは
2.社会保障カードの現状の課題
3.社会保障カードが社会にもたらすもの
1.社会保障カードとは
 社会保障カードとは、「年金手帳」「健康保険証」「介護保険証」の3つの役割を集約させたICチップ付きカードです。年金記録などの確認も可能にするもので、2011年度中の導入を目指し、厚生労働省は「社会保障カードの在り方に関する検討会」を開催し、実現へ向けた政策を進めています。
 まず、社会保障カードを導入する最大のメリットは、これまで年金手帳、健康保険証、介護保険証を、それぞれで交付していたものが一度で行えること、および各制度、各保険者で加入者を管理していた給付の調整がなくなり、事務調整などの「事務経費を大幅に削減」できることが挙げられます。
 2番目のメリットとしては、利用者の「利便性の向上」が挙げられます。自宅のパソコンのカードリーダーに差し込むだけで、簡単に今まで支払った年金の記録や病院でのレセプトなどを見ることができるようになります。それとともに、年金制度などに変更が生じた場合でも給付される金額がわかりやすく、データベースにある自分の情報が不正に改ざんされても、不正内容が発見しやすいなどのメリットが挙げられます。さらに、これから他の電子サービスとの連携が進めば、役所に行かなくても住民票や戸籍謄本などを家の端末から取得できるようになります。
●社会保障サービスの現状
●社会保障カードのメリット
 利用者としては、煩雑な手続きが簡略化されることで手続きが容易となるとともに、自宅のパソコンから情報を閲覧できるため、ミスなどがあっても早い段階で気付くことができるなど、利用者としては大きなメリットを享受できます。
 中でも多くの手続きが必要になる引っ越しや会社の退職時などの事務手続きを減らしワンストップで行えるようにするために、政府は次世代電子行政サービスの基盤を整えていく計画です。これにより、添付書類を大幅にカットすることができ、コストも削減できると見込んでいます。
2.社会保障カードの現状の課題
 社会保障カードを使えば、スムーズな手続きが実現し、簡単に自分の情報を検索・入手することができるようになります。
 しかし、一方では、政府による情報の一元管理に関する個人情報の漏洩やプライバシーの侵害など、利用者の不安などがないわけではありません。
 日本弁護士連合会では、カードのセキュリティーについては本人以外が所持することによる危険性、カードのICチップの中から個人情報が読み取られる危険性、被害を最小限に食い止められる制度の欠如などの問題を指摘し、プライバシーを侵害する恐れがあるとし、導入反対の意見を表明しています。
 政府では、プライバシーの侵害などの課題を極力抑えるために、社会保障カードには安全性の高いICカードを採用し、このカードをアクセスキーの代わりとして、データベースへアクセスする仕組みを検討しています。
●ICチップ付きカード
・社会保障カードには高度なICチップを搭載。このICチップ付きのカードが情報へのアクセスキーとなる。
 このカードに搭載されるICチップには、年金・医療・介護といった現在の社会保障制度の被保険者記号番号などとリンクした本人識別情報(各制度、各保険者をまたがって本人を特定するための情報)だけを入れ、利用者はこのICカードを鍵として、本人情報かどうかを識別してくれる中継データベースへアクセスします。途中、情報の要求者を振り分ける中継データベースを経てから利用者の要求する情報を得ることとなります。
 この仕組みによって、情報の一元化を防げ、プライバシーの保護、個人情報の漏洩を極力抑えることができるようになります。
 また、この仕組みなら、個人の情報を追加する場合でも各保険者のデータベースにリンクを貼るだけで更新でき、いちいちカードを書き換える必要もありません。
●社会保障カードの仕組みのイメージ
3.社会保障カードが社会にもたらすもの
 自宅やオフィスなどさまざまな場所から行政手続ができたり、自分の情報が調べられたり、社会保障カードがもたらす利便性の向上により、とても便利な社会がもたらされるといえそうです。
 超高齢化社会を迎えた今の日本において、医療、介護での事務経費を大きく減らしてくれる社会保障カードは、これからの日本が抱える多くの課題を解決してくれると期待されています。しかし一方で、社会保障カードは、実現までにはまだまだたくさんの壁が立ちふさがっているといえます。
 個人情報漏洩、プライバシー保護をはじめとした問題は、不正アクセスの阻止に向けて、セキュリティーシステムをさらに向上させていかなければなりません。個人情報の問題などさまざまな課題を解決しないまま、行政の効率化のためだけに情報の一元化を推し進めていくことは難しくなってくると予想されます。
 したがって、今後は社会保障カードの周知はもとより、情報への個々人のモラルの向上や国民の理解を求めていく活動が必要となってくるでしょう。同時に、セキュリティー上の不安を抑えるICチップを搭載した高性能のカードの需要もさらに高まっていくと考えられます。
 印刷業界としては、社会保障カードの導入に当たり、契約書類や帳票、ビジネスフォームをはじめ、新しいシステムを国民全体に周知、徹底するための各種PRツールの需要が期待されます。同時に、プライバシーの保護や個人情報の漏洩といった観点からも多くのPRツールの需要が見込めそうです。
 次回は、医療・介護への導入のメリットと課題、そして将来の電子政府サービス全体の構想とともに、印刷業界にどのような波及効果が予想されるかを探っていきたいと思います。
●表:社会保障カードについて
 
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