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印刷業界とデジタルサイネージビジネス
 
感圧紙の業界の未来を考える グリーンレポート
印刷業界とデジタルサイネージビジネス 2009/8/10
1.デジタルサイネージと、その現況
2.新しい広告メディアとしての期待と効果
3.デジタルサイネージの具体例
4.印刷会社におけるデジタルサイネージビジネスの可能性
1.デジタルサイネージと、その現況
 「サイネージ」は、看板や標識などを表す英語で、「デジタルサイネージ」とは、屋外や交通機関・店頭・公共施設などの場所に設置されたディスプレイ端末を使って、映像や情報をタイムリーに発信する次世代型インフォメーションシステムのことをいいます。あらゆる場所でターゲットを絞った広告が訴求できたり、表示コンテンツの切り替えが容易などといった特長を持ち、新たな広告媒体としての可能性が注目されています。
 電子POP、電子ポスター、電子看板、デジタルコンテンツ配信システム、インタラクティブサイネージ、コーポレートコミュニケーションテレビなどと呼ばれている場合もありますが、すべて同等のシステムの呼称です。
 デジタルサイネージは今後、大きな成長が期待される分野ですが、まだ未知数の部分も多く、先行する海外事例のデータも少ないのが現状です。
 デジタルサイネージの見本市「デジタルサイネージジャパン2009」(※1)が、2009年6月、千葉県の幕張メッセで開催されました。これが国内唯一の専門イベントであり、初めての開催でした。出展内容はネットワーク製品からLEDディスプレイ、音響システムなどのハードから、デジタル広告制作、ネットワークサービス、配信システムなどのソフトまで多岐にわたりました。例えば、裸眼で見られる3D映像を映し出すディスプレイや、LEDによる360度の映像表示ディスプレイ、CGを使って画面に写り込んだ人の動きを瞬時に合成加工するシステム等々、新技術を使った商品も多く、将来性のある分野であることが実感できるものとなっていました。印刷関連業者をはじめ、多種多様な分野の方々が3日間で約13万人も訪れ、デジタルサイネージへの期待と関心の高さがうかがえました。
●デジタルサイネージの主な構成
※1:『デジタルサイネージジャパン2009』の概要http://www.cmptech.jp/dsj/、主な出展レポートhttp://itnp.net/category_betsu/20/2637/
2.新しい広告メディアとしての期待と効果
 デジタルサイネージという名前は意識していなくても、交差点に面した巨大な街頭ビジョンや電車のドア上ディスプレイ、小さな物では自動販売機の商品PR画面など、すでに通勤やショッピングなどのあらゆる場面で私たちはデジタルサイネージと遭遇しています。
 こうした普及の背景には、ディスプレイの低価格化が進んだことや、映像や情報の配信ネットワークの多様化と低価格化で、コンテンツ配信も安価になったこと、システムベンダーが使いやすいパッケージソフトを開発したことなどにより、設置コストや運用コストが実用レベルに達してきたためといわれています。
 また、従来のテレビ、ラジオ、新聞、雑誌、インターネットに次ぐ新しい広告媒体としての期待からか、ここ数年、金額ベースで30〜50%の成長ぶりをみせています。今後、その効果が認識されるようになれば、既存のアナログ看板・ポスター・POPなどと競合する可能性は捨て切れません。しかし、デジタルサイネージを提供する側の“広告としての効果測定”は、試行錯誤の途上で、導入する側にためらいがあるのも事実です。テレビやラジオのような視聴率や聴取率といった具体的な指標が提示できる“説得力”が、今後の発展のカギといわれています。
 デジタルサイネージビジネスで最も期待されているのが広告・販促分野で、その市場規模としては2015年には1兆円を超えるとの試算があります。当初はハードウエアや回線費用・配信ソフトなどのハードウエア系の市場比率が高いものの、2015年には市場全体の約60%がコンテンツ・広告・販促などのソフト系、40%がハードウエア系になると推測されています。
●デジタルサイネージの市場比較予測
●デジタルサイネージ市場の未来予測
3.デジタルサイネージの具体例
 デジタルサイネージの代表例に、JR東日本の「トレインチャンネル」があります。2002年、まず山手線から導入され始め、天気予報や漢字の学習、ニュース速報、英語の勉強などのほか、企業の広告などが流れ、話題となりました。一方、屋外にある東京・渋谷の109フォーラムビジョンやスクランブル交差点の壁面ディスプレイは、TVドラマにもしばしば登場するほどメジャーとなっています。
 また、ユニークな場所に設置されているのが、2008年末に登場した羽田空港の女性トイレ個室のデジタルサイネージです。7インチの液晶ディスプレイに、15秒のコマーシャル7枠と15秒の空港の情報1枠がリピートして流されています。
 さらに、今年の6月からはスーパー各社が店頭に薄型テレビを設置して、商品や特売・地域情報などを提供するデジタルサイネージの本格的な導入・拡大を図っています。「イオン」は日立製作所のシステムを採用して、「ジャスコ」に1店舗当たり32型ディスプレイ10台を設置。本部から無線データ通信で情報を提供するタイプで、店舗や曜日・時間帯などに配慮したタイムリーな映像情報が提供されます。「マルエツ」はワイン売り場で、ワイン情報やおすすめ料理の紹介を、「ライフ」は野菜や精肉などの売り場に設置して、それぞれの商品に合うメニューなどの紹介をしています。
 「イオン」や「マルエツ」によると、紹介した商品の売上が、導入後には2倍前後の伸びを見せ、“販促効果は大きい”と期待以上の効果を上げているようです。今後は、流通業界でデジタルサイネージ導入の動きが加速するものと思われます。
■デジタルサイネージの実例
・デジタルピラー(富士フイルムイメージテック株式会社)
デジタルピラー(富士フイルムイメージテック株式会社)   既存の丸柱を抱き込む形で設置する簡易型デジタルサイネージ例。プリント装飾+電子ディスプレイを融合した訴求力の高いコンテンツ表示システムで、駅構内の柱などにも短時間で設置が可能。
・アドリサーチシステム<反応型・調査型>(富士フイルムイメージテック株式会社)
アドリサーチシステム<反応型・調査型>(富士フイルムイメージテック株式会社)   <反応型>電子ディスプレイの前を通るお客様の顔を自動的に検出し、そのお客様に適したコンテンツを表示するシステム。
<調査型>ディスプレイに興味を持ったお客様の顔を自動検出し、表示されているコンテンツの広告看板面の視覚的認知調査や媒体価値調査などに応用可能なシステム。
4.印刷会社におけるデジタルサイネージビジネスの可能性
 印刷会社もデジタルサイネージに注目し、ビジネスの可能性を模索し始めています。例えば、凸版印刷では2009年6月、UQ WiMAX(※2)を採用した次世代ネットワーク型デジタルサイネージを開発。また、大日本印刷(DNP)も6月に、42インチの大型ディスプレイを12台連動させてデジタルコンテンツを配信するデジタルサイネージシステム「トールビジョン」を開発し、2009年8月より販売を開始すると発表しました。このように、大手の印刷会社は、豊富なコンテンツ(ソフト)とハードを含めた、ネットワークによるデジタルサイネージビジネスへ参入し始めています。過渡期であるハード市場もビジネスチャンスとしてとらえているようです。
 今後、デジタルサイネージが普及するにつれ、ディスプレイに表示するコンテンツが多数必要となるのは必然で、将来的にはコンテンツ産業を目指しているという印刷会社にとっても将来性のあるビジネスといえそうです。特に、地方都市の印刷会社は、そのエリアの広告の主導権を握っているケースも少なくないので、プリント用に作成したデータを最大限に活用して、デジタルサイネージコンテンツも一括して請け負う総合的なコンテンツ制作ビジネスとしての強みを発揮する方向性に向かえば、デジタルサイネージビジネスは印刷会社の射程範囲内に入り、大きな期待が持てます。
 また、一般の印刷会社にビジネスチャンスがあるのは、スタンドアローンタイプ(<1>参照)ともいえる電子POPタイプでしょう。現在進行中の紙POPやチラシ・パンフ用の印刷データをアレンジすることでも、デジタルサイネージ用のコンテンツが制作可能です。「Adobe Photoshop CS4」からは現データをFlashフォーマットに書き出すこともできるようになったことから、訴求力のあるコンテンツを現状のシステムのままで実現でき、初期投資も抑えられるため、印刷会社にとっては身近で参入しやすいビジネスとなっています。
 デジタルサイネージは、何も大手印刷会社だけのものではありません。敷居は低いとはいえ、それでも冒険ができないという印刷会社の場合でも、強力なパートナー(コンテンツ制作会社など)と組むことなどで、実現性はかなり高まります。アイデア次第で、有望なビジネスとして確立できる可能性を秘めているといえます。
※2:UQ WiMAXとはWorldwide Interoperability for Microwave Accessの略で、IEEE(電気電子学会)標準規格802.16eをもとに規格化された高速ワイヤレスインターネットの愛称。カフェなどスポットで利用される無線LANとは異なり、広いエリアで利用でき、外出先や移動中も高速インターネット(通信速度、下り最大40Mbps)を楽しむことが可能。
 
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