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ITを活用した紙媒体管理ビジネス〜ナレッジマネジメントとプリンティングビジネス〜<第2回>
 
感圧紙の業界の未来を考える グリーンレポート
ITを活用した紙媒体管理ビジネス
〜ナレッジマネジメントとプリンティングビジネス〜
<第2回>
2009/7/10
1.「ナレッジマネジメント」の現状
2.バーコードとICタグによる紙資料管理システム
3.「ナレッジマネジメント」の将来と今後の取り組み
1.「ナレッジマネジメント」の現状
 数々の日本企業がナレッジマネジメントに本格的に取り組み始めたのは、1990年代後半です。ただ、当初は「社員の協力が得られない」「成果がなかなか出ない」といった反応が多く、失速する企業が相次ぎました。一方で、中長期的な展望に基づいて地道に取り組んできた企業では、ナレッジマネジメントの効果が実を結び始めるなど、企業によって明暗が分かれています。
 例えば、ある金融機関では、顧客への報告資料を組織内で共有する体制を整えたことにより、経験の浅い社員でもベテラン社員と引けをとらないほどの資料作成が可能となりました。また、ある中堅ITベンダーでは、入社5年足らずの社員が社内の専門家や想定クライアントと親しい社員を探し出し、ほとんど自力で新規ビジネスを立ち上げたという事例もあります。いずれも蓄積された“知(ナレッジ)”を活用したからこそ実現できたものです。
 印刷業界でもナレッジマネジメントの導入が進んでいて、さまざまな導入効果が上がっています。 東京都内にある中堅の印刷会社では、製造経費の数値化や営業業務の生産性向上、オペレーターの能力把握とモチベーションの向上、人事評価の定量化などを目的にナレッジマネジメントを導入しました。営業担当者が持っていたスキルを全員で共有することができて、営業担当者の得意、不得意がなくなり、社員全員のレベル向上につながりました。また、オペレーターについてもノウハウの共有化により、作業スピードのアップやクオリティーの向上などの効果を上げています。
 同じく都内のある製版会社では、製版需要の変遷により業態変化を模索する中、ナレッジマネジメントに、ロジスティックスやサプライチェーンマネジメントを組み合わせて導入したところ、顧客満足度の向上や省力化・低コスト化を実現しました。さらに、クリエイティブ事業の開拓、媒体別カラープロファイルの設計など、新規業務へもチャレンジしました。その結果、みごと受託加工業からシステム供給業への転換を達成。さらなる付加価値の高いサービスづくりにも取り組んでいます。
■ナレッジマネジメントを導入している企業の一例
※ジャストシステムのナレッジマネジメントシステム「ConceptBase」の導入会社事例より
http://www.justsystems.com/jp/km/case/
2.バーコードとICタグによる紙資料管理システム
 ナレッジマネジメントを構築するためには、IT環境とさまざまなソフトウエアが必要です。一般的な例では、イントラネット(情報ネットワーク)、グループウエア(情報共有ソフト)、文書管理システム(仕様書・図面などの蓄積書類管理)、エキスパートシステム(人工知能・自動判断)、データマイニング(データ分析)などで構築されています。小規模なものでは、これらの機能が統合されたソフトウエアが数多く開発され、販売されています。
 この中で、帳票類を扱う印刷会社と関係が深いのが「文書管理システム」です。前述したように、契約書・申込書・帳票などの紙媒体も、いずれはデジタルデータ化されると予想され、印刷需要減少の逼迫感はつのるばかりでした。しかし、昨年12月、大日本印刷(DNP)により新たな技術が開発され、デジタルデータと紙媒体との共存の道が一歩開かれたのです。
 静岡銀行が導入したのは、バーコードとICタグを用いた「書類管理システム」で、伝票や帳票などの書類の貸し出しや返却、保管、廃棄などを確実に行うシステムです。従来は、各営業店舗から日々送付されてくる伝票を、営業店別・取引日別などに製本し、それを保管箱にまとめて保管棚に収める方式で、人海戦術に頼っていました。大日本印刷(DNP)が開発した本システムでは、営業店舗別・取引日別などに束ねたバーコード付き伝票綴り用表紙を、保管箱と保管棚にはデータの一括読み取りが可能なICタグを、それぞれに印字・貼付して管理するもので、効率的な入庫や貸し出し、棚卸しなどの作業が行え、同時に情報漏えい防止も実現できます。また、保管状況はリアルタイムで確認することが可能です。
 このシステムは、現在、在庫管理が主体です。しかし、将来的には紙書類の内容をICタグに書き込み、その情報まで管理できるようになれば検索性も高まり、さらに有用性の高いナレッジマネジメントに発展していくことが期待できるでしょう。また、伝票に記載された情報を読み取り、バーコード化した情報をその伝票に透かし印刷するような技術ができれば、同様に帳票類の中身までも検索可能となり、情報価値はより高まり、帳票類の印刷需要はさらに伸びると期待されます。いずれにしても、電子データと紙媒体の共存は、印刷業界にとって今後も大きなテーマとなっていくことは間違いないでしょう。
「書類管理システム」の参考URL:
http://www.dnp.co.jp/jis/news/2008/081219.html
■ナレッジマネジメントを支援する情報技術
3.「ナレッジマネジメント」の将来と今後の取り組み
 企業がナレッジマネジメントを導入する際に障壁となっているのは、効果が見えにくく、導入費用が安くはないところです。しかも、いったん導入すると、プログラムによっては固有の電子データとなって蓄積され、気軽にシステム変更しにくいところや、それぞれの企業によって経営課題や扱うべきナレッジのタイプが異なるため、システム構築がオリジナルメイドとなり手間がかかる点があります。
 そうした理由で、費用と効果が比較的わかりやすいグループウエア(情報共有)導入でとどまっている会社が少なくありません。グループウエアは前述したようにナレッジマネジメントを構成する一部の機能ですが、メールやスケジュールの共有、掲示板、会議室予約、経費精算などといった日々役立つ機能が簡単に使えるため、導入担当者はIT化が一気に進んだように感じるかもしれません。
 しかし、グループウエアではいくら有用・有益な情報が蓄積され続けても、情報の交通整理がされていないため、“知”を活用できません。ナレッジマネジメントでは、どこからどんな“知”を吸い上げて、どんなユーザーに活用させるのかといった“知の蓄積・共有” を交通整理する組織と体制づくりが重要となり、これがナレッジマネジメントの生命線なのです。
 高速LANが一般化し、画像や映像などの大きなデータも情報蓄積対象となり、ナレッジマネジメントで扱えるコンテンツは無限に広がっています。トップ営業マンの成功体験のインタビューを映像で配信したり、言葉に表すのが難しい“熟練の技”や“営業テクニック”などのノウハウをデジタルビデオで記録し、ストリーミング配信することで若手社員に伝えていく、という事例も増えてきています。ナレッジマネジメントは使い方次第で、無限の可能性を発揮するツールといっても過言ではありません。
 デジタルワークフローが主流となった印刷業界では、印刷機の直前まではフルデジタル環境が整いつつあり、ナレッジマネジメントを極めて導入しやすい環境にあるといえます。
 低成長時代の現在、印刷会社が発展していくには、特化した技術(パテントなど)や特徴を持っていない限り淘汰の道は避けられません。これからは印刷のみにこだわらず、デザインや企画、そして映像、Webなど印刷周辺の業務まで取り組める、ワンストップ体制が可能な“総合印刷会社”が有望視されています。
 例えば、企業の広告担当者にとって、企画会社、広告制作会社、印刷会社、Web制作会社などに対して、各々に資料を揃え、仕事を発注し、仕上がりもチェックする作業はとても煩わしいもので、工数もかかります。関連業務を一気通貫にこなせる会社があれば依頼したいと考えるのは当然の成り行きです。その点、さまざまな業種との関わりがある印刷会社にとって、取引関係にある会社は大きな財産となります。これらの会社とのつながりをより太くする業務拡大の道こそが、成長への第一歩となり得るのです。
 そのためにもナレッジマネジメントを導入し、今まで築き上げてきたノウハウの統合と活用、新たにチャレンジする業務内容のテクノロジーやノウハウの蓄積など、企業資産を構築することが重要になってきます。さらに、従業員が世代交代しても、常に均質でクオリティーの高い商品を提供するためには、作業手順の標準化や熟練者のノウハウの共有化を強力に推進することも必要です。印刷業界のより豊かな将来を展望するとき、ナレッジマネジメントを活用して新陳代謝を絶えず繰り返していくことが必要不可欠となっていくことでしょう。
 
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