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ITを活用した紙媒体管理ビジネス〜ナレッジマネジメントとプリンティングビジネス〜<第1回>
 
感圧紙の業界の未来を考える グリーンレポート
ITを活用した紙媒体管理ビジネス
〜ナレッジマネジメントとプリンティングビジネス〜
<第1回>
2009/6/10
1.ナレッジマネジメントとは
2.ナレッジマネジメントの役割
3.ナレッジマネジメントの新たな可能性
1.ナレッジマネジメントとは
 「ナレッジマネジメント(knowledge management)」は、会社組織でいえば、社員一人ひとりが持つ知識(ナレッジ)を収集して、組織として共有・活用を目指す活動のことです。日本語では一般的に「知識管理」などと訳され、「KM」とも表現されています。
「ナレッジマネジメント」は、1991年に一橋大学の野中郁次郎教授が「知識経営」の観点から発表した論文で、日本発の経営理論です。当初は、人材の流動性が高く、社員のノウハウが社内で蓄積されにくいアメリカで注目され、その後、日本でも広まりました。
「ナレッジマネジメント」で共有化する知識には「暗黙知」と「形式知」があります。「暗黙知」とは、人間の頭の中に存在する“知”で、言葉や絵などでは表現しづらい主観的な知識を指します。例えば、自分の中で整理できていない漠然としたアイデアや培ってきたノウハウなどがこれに当たります。
一方、「形式知」とは、誰もが共通に認識できる形になった客観的な知識で、具体的なマニュアルや改善策、新製品の企画・提案書などが挙げられます。
個人の「暗黙知」を共有化するためには「形式知」化する必要があります。その方法としては、「暗黙知」を、文章、図表、マニュアルなどで文書化。誰もが理解でき、活用できる「形式知」とすることで組織としての財産となります。この「形式知」を社員が共有・実践することで、個人の頭の中に一段階上のレベルの「暗黙知」が芽生え、それが次の「形式知」化へつながり、さらに高い価値を生むようになります。このように「暗黙知」と「形式知」の変換が繰り返されることによって、新たな知識が生み出されていきます。このような手法が 「ナレッジマネジメント」です。
北海道札幌市にある従業員50名規模のある印刷会社では、2005年3月に「ナレッジマネジメント」システムを導入しました。紙媒体からデジタルに移行したことで大きな変化をもたらしたもののひとつとして挙げられるのが営業日報です。以前は営業部の管理職にのみ提出されていたものが、現在では営業部全員、そして他部署の上長にも提出するように変更され、他営業マンの商談内容を誰もが自由に閲覧できるようになっています(情報の共有化)。自分の日報には多くのコメントが寄せられ、それを基に新たな営業施策を実施したり(「形式知」の実践)と、営業マンの刺激になっているといいます。また、製造担当者や工場にも、現場のお客様の声を届けることにより(情報の共有化)、良いことも悪いことも社内にフィードバックされ、商品のクオリティ−アップ(「形式知」の実践)にもつながっているようです。
CO2削減プロジェクトの一例
野中教授は、この理論を進展させ、各プロセスの頭文字をとったSECIモデルと呼ばれる4つの知識創造変換モードが考えられるとしています。
(1) 「共同化(Socialization)」:個人の暗黙知からグループの暗黙知を創造する
(2) 「表出化(Externalization)」:暗黙知から形式知を創造する
(3) 「連結化(Combination)」:個別の形式知から体系的な形式知を創造する
(4) 「内面化(Internalization)」:形式知から暗黙知を創造する
CO2削減プロジェクトの一例
2.ナレッジマネジメントの役割
 「ナレッジマネジメント」を導入することで期待されているのは、個人の能力の育成や組織全体の生産性の向上、意思決定のスピード化の実現、業務効率の改善などです。
大企業のように、組織が大きくなると上下のつながりだけでなく、横の連携も希薄となりやすく、個々人が日々収集し続けている情報やノウハウが組織全体に生かされない状況が発生して、収益の伸び悩みや組織の停滞感などを招くことがあります。また、昨今では、企業の2007年問題(※)や景気低迷による人員削減など「人的リストラ」によって、社員の持つ知識や技能、ノウハウが引き継がれないまま、貴重な“財産”が失われるという現実がありました。こうした企業の損失を防止するのも「ナレッジマネジメント」の役割です。
ここでいうナレッジとは、社員が日々の仕事の中で習得したノウハウや、入手した情報やその成果なども指します。ノウハウの典型としては上手な商談の進め方や顧客の好みといった個人的な情報や、実際に評判の良い提案書などの成果物もナレッジになります。また、誰がどんな分野に詳しいという個人の情報も、「ナレッジマネジメント」の対象です。こうして蓄積された情報が共有・活用され、その結果がまた蓄積されていく過程で、より新しいナレッジが創造されることは、先に述べたとおりです。
「ナレッジマネジメント」として現在運用されている形態には、グループウエアなどの共有型文書管理ソフトを用いて、営業日報のように社員が日々蓄積していく文書を組織全体で共有して、事例や方法論についての議論の場を設けたり、過去の事例を検索できるようにしているケースがあります。また、提案書や成功例集などといったさまざまな文書を分類、整理してシステムに蓄え、その知識を使って営業活動に役立てるといった使われ方などもあります。
※2007年問題:1947年前後に生まれた団塊の世代が一斉に定年退職を始める年が2007年で、企業活動に大きなダメージを与えるということで問題化。労働力不足、ノウハウ・技術継承、企業体力低下などの問題点が指摘されていました。
3.ナレッジマネジメントの新たな可能性
 一般の会社だけでなく、芸術・美術分野でも知識の共有化が進んでいます。絵画をはじめ、神社・仏閣の壁画、天井絵など、日本には世界に誇るべき美術財産が数多く存在していますが、ほとんどが自然環境の中にあるため、劣化は避けられません。そこで、文化的価値を保存するため、作品のデジタル化が急務となっています。美しいままの状態をデジタル保存することで後世の修復作業にも貢献できるといいます。デジタル化は、 “より本物”を目指し、専門家のアドバイスを反映しながら技術革新がたゆむことなく続けられています。デジタル化されたデータはまた、情報の共有化を目的としたデジタルアーカイブとして一括管理・公開されます。これまで専門家や研究者しか知り得ることができなかった詳細なビジュアル情報が公開されることにより、文化の向上や、歴史研究においても多大な貢献を果たすものと期待されています。
デジタル化技術の進化により、美術界に新たな試みが始まっています。大日本印刷(株)と東京国立博物館とが共同で制作した、“本物でない”複製作品が一般公開されたり(写真参照)、長野県小布施町の「北斎館」などのように、複製作品を常設展示している美術館もあります。いずれも専門家でなければ本物との違いを見分けられないほど精緻な仕上がりです。
高度な印刷技術によって生まれた印刷物が、複製でありながらも極めて高い再現性が評価され、展示される時代がすでに始まっているのです。デジタル化技術と印刷技術の進化が、これからも印刷ビジネスの新たな可能性を広げていくことでしょう。
次回は、帳票や伝票など過去に蓄積された膨大な紙資料を、電子化することなくそのまま活用し、先進の管理システムとの融合を実現した静岡銀行の「ナレッジマネジメント」導入例をご紹介しながら、紙ベースの印刷業界がデジタル技術による電子書類化の進展と共存共栄していく道を探ります。
CO2削減プロジェクトの一例
最新のデジタル技術で甦った東京国立博物館庭園内、応挙館障壁画の複製画
(写真提供:東京国立博物館)
写真は東京国立博物館と大日本印刷株式会社(以下、DNP)が共同で制作した「応挙館」の一之間の「梅図(円山応挙筆)」。美術作品の複製に実績のあるDNPにより、最新のデジタル画像処理技術と美術作品の独特の風合いを忠実に再現する特殊な印刷技法を駆使して、障壁画41面の複製画が制作され、2007年2月に一般公開された。劣化した作品群を甦らせ、制作当初の空間を再現しようとする東京国立博物館初の試み。また、最近でも「応挙寺」とも呼ばれる大乗寺(兵庫県香美町)の重要文化財に指定されている障壁画計47面が、同じ技術により4年がかりで複製され、2009年4月1日から一般公開されている。
 
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