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印刷業界がめざすエコロジーの新たな局面〜ビジネスチャンスとしてのエコロジー〜
 
感圧紙の業界の未来を考える グリーンレポート
印刷業界がめざすエコロジーの新たな局面
〜ビジネスチャンスとしてのエコロジー〜
2009/5/11
1.カーボンオフセットとは
2.エコの新星、カーボンフットプリントとは
3.印刷業界のカーボンフットプリント取り組み事例
1.カーボンオフセットとは
 今、世界の各地で進行しつつある「地球温暖化」の兆候が、マスコミなどで報道され続けています。その主原因は、二酸化炭素などの温室効果ガス(以下、CO2で統一)といわれています。昨年8月に行われた北海道洞爺湖サミットで京都議定書の目標を基にしたCO2の具体的な削減目標数値が決まり、日本政府もより具体的な形で動き始めました。
政府の政策の中には、省エネの推進や太陽や風力を利用した自然エネルギーの活用などがありますが、各企業から注目されているのが、「カーボンオフセット」です。
カーボンオフセットとは、日常生活や経済活動において避けることができないCO2の排出について、まずできるだけ排出量が減るよう削減努力を行い、どうしても排出されるCO2についてはその排出量を見積り、排出量に見合った温室効果ガスの削減活動に投資(※1)することなどにより、排出されるCO2(カーボン)を埋め合わせる(オフセット)という考え方です。カーボンオフセットがきっちり実行されれば、CO2は今以上に増加しないことになるのですが、世界中が足並みを揃える必要があります。
企業からカーボンオフセットに見合った費用を受け取り、そのお金をCO2削減活動に投資する「オフセットプロバイダー」のビジネスモデルが始まったのは、今から約12年前のことです。初めて手掛けたのは、英国の植林NGO、フューチャーフォレスト(現 カーボンニュートラル社)でした。現在、同様のビジネスへの参入は急増しており、すでに全世界で100を超え、日本国内ではカーボンニュートラル社と提携した(株)リサイクルワンなどを中心に、2007年末頃から相次いでサービスが始まっています。カーボンオフセット市場規模は急激に拡大中で、世界全体では2007年3.3億ドル(約350億円)だったものが、2008年には対前年比300%以上に成長。2010年には2兆円を超える規模になるものと予測されています。カーボンオフセット権の購入は規模によりさまざまで、Yahoo! JAPANや日本航空の取り組みのように個人がウェブサイトから購入できるものも登場しています。
また、カーボンオフセット商品の開発も活発化してきました。例えば、日本郵便のカーボンオフセット年賀状や「かもめーる」、JTBの排出権付き旅行商品、セブン&アイホールディングスの排出権付き買い物バッグ、京急百貨店のカーボンオフセット付き中元ギフト、日産自動車の排出権付き自動車、パナソニック電工の排出権購入オプション付き省エネ照明器具など、今後さらに増え続けるものと予想されています。
CO2削減プロジェクトの一例
【CO2削減プロジェクトの一例】
(上記は(株)リサイクルワンのウェブサイトより)
排出権市場規模
カーボンオフセット年賀状とカーボンオフセット「かもめーる」
 カーボンオフセットの説明書きが入ったカーボンオフセット年賀状(左)とカーボンオフセット「かもめーる」(右)。はがき代は55円で、5円がカーボンオフセットに使われる。
※1 カーボンオフセットを取り扱う事業者や団体が、森林吸収、再生可能エネルギー、エネルギー効率向上などに資するプロジェクトに投資。購入者は、自らが排出したCO2の量を金額に換算し、事業者や団体に支払うことで、CO2の排出量を相殺。
2.エコの新星、カーボンフットプリントとは
 「カーボンオフセット」と並んで最近耳にすることが多くなったキーワードに、「カーボンフットプリント」があります。2008年6月に、福田首相(当時)が日本記者クラブにてスピーチした「福田ビジョン」(※2)の中で、「カーボンフットプリント」の制度化を表明したことで注目され始めました。
カーボンフットプリントとは、資源の採掘から製造、販売、廃棄に至るまで、製品のライフサイクル全般にわたって排出された温室効果ガスをCO2排出量に換算して表したものです。いわゆる「炭素の足跡」、CO2排出量を「見える化」することです。自らが排出したCO2を相殺するカーボンオフセットの目安となります。
海外ではカーボンフットプリントを商品パッケージなどに表示する活動がすでに始まっていますが、日本での取り組みはまだ始まったばかりです。
日本最大級の環境展示会といわれているエコプロダクツ展が毎年12月東京で開催されていますが、昨年の 「エコプロダクツ 2008」では、カーボンフットプリントがキーワードとなって展開されました。同展で経済産業省は、決定した「カーボンフットプリント統一マーク」を披露。カーボンフットプリントを算定・表示した商品約100点を展示しました(※3)
企業がカーボンフットプリントを開示することは、製品を通じた環境配慮への取り組みを商品によって発信、アピールができ、消費者に環境に配慮した購買行動を促すこともできます。また、最近では消費者や機関投資家も、企業の製品・サービスにおけるカーボンフットプリントに注目し始め、開示が求められる傾向にあります。
現在、カーボンフットプリントは企業の自主的取り組みですが、すでに表示した商品の試験販売に踏み切ったメーカーも出てきており、カーボンオフセットと同様、定着化する可能性が高まってきています。
※2 2008年6月9日、福田首相(当時)が、日本記者クラブにおいて「『低炭素社会・日本』をめざして」と題したスピーチを行った。主に低炭素社会への転換の必要性を強調され、その具体的な政策の「柱」として、低炭素化に向けた施策(排出量取引の試行的実施、税制のグリーン化、カーボンフットプリント制度の試行)などの提案が盛り込まれていた。
※3 経済産業省は2009年3月3日、カーボンフットプリント制度の基本ルール(「カーボンフットプリント制度の在り方(指針)」及び「商品種別算定基準(PCR)策定基準」)を決定したと公表。 さらに、2009年度からカーボンフットプリント制度の市場導入試行事業の実施を行った。
カーボンフットプリント統一マーク
経済産業省がデザインを公募し、「エコプロダクツ2008」で発表したカーボンフットプリント統一マーク(暫定)。カーボンフットプリント制度ではCO2排出量が商品比較の情報源となる。
カーボンフットプリントが表示された商品の一例
「エコプロダクツ2008」出展商品リスト(30社40種類54品目)
3.印刷業界の「カーボンフットプリント」取り組み事例
 印刷会社においても、カーボンオフセットやカーボンフットプリントに着目しているところは少なくありません。前述した「エコプロダクツ 2008」では、CO2排出量を「見える化」する意欲的な展示を行う印刷会社が多数出展していました。
例えば、清水印刷紙工(株)は、印刷物製造にかかるCO2排出量計算モデル「Printing CO2 Formula」を考案し、CO2排出量の「見える化」を実現しました。また、(株)栄光舎は自社工場で実測したデータなどを分析し、印刷物1冊当たりの精度の高いCO2排出量を開示したPRパンフレットを配布するなど、環境負荷低減を積極的にアピールしました。
また、(株)トークは、最新の「ライフサイクルアセスメント(※4)」データを元に、印刷物の製造工程におけるCO2排出量を自動で算出し、見積書や製造報告書に排出量を明示する「カーボンアイ(印刷物CO2排出量算出・積算システム)」を紹介しています。このカーボンアイは、原材料調達段階(用紙・インキ・刷版など)から製造段階(刷版-印刷-製本)、流通販売段階(流通=輸送のみ)の印刷の「ライフサイクルアセスメント」をベースにした手法でCO2の排出量を実測データに基づいて算出するシステムです。このシステムでは見積の段階で、これから作ろうとする印刷物のCO2の予想排出量を試算し、金額と環境の両面から比較検討できるようになることから、環境意識の高い企業が求める目的や効果にあったさまざまな印刷物を提案することも可能でしょう。また、新たなお客様やビジネスを獲得するチャンスも生まれてくることでしょう。
こうした印刷各社の取り組みは、自社の印刷工程の中でボトルネックになっている点を見つけ出すことにもつながり、「CO2の見える化」⇒「CO2削減のための改善実行」⇒「コストダウンの実現=利益の増大」といった「環境経営で収益アップ」につながるのではないでしょうか。
※4 製品づくりに関して、資源の採取から製造、使用、廃棄、輸送などすべての段階を通して環境影響を定量的、客観的に評価する手法。これまでの環境負荷評価は、製品の使用や廃棄に伴う有害物質の排出の有無、処理の容易性など一定のプロセスだけを評価範囲としたものが多かったが、これだと全体としては環境への負荷の低減には寄与しない製品が生産されてしまう可能性があった。そこで、製品の原料採取、製造、流通の段階も含めて環境への負荷を評価することにより、経済社会活動そのものを環境への負荷の少ないものに変革しようとする手法が考えられた。
(株)トークの「カーボンアイ」による「カーボンフットプリント」の概念図
(株)トークの「カーボンアイ」による「カーボンフットプリント」の概念図。
(株)栄光舎のカーボンフットプリントを紹介したパンフレット
(株)栄光舎のカーボンフットプリントを紹介したパンフレット。
 
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