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電子マネーと印刷業界〜目前に迫る、新しい決済手段への法規制〜
 
感圧紙の業界の未来を考える グリーンレポート
電子マネーと印刷業界
〜目前に迫る、新しい決済手段への法規制〜
2009/4/10
1.電子マネーの種類と現況
2.電子決済イノベーション
3.法規制に伴う印刷ビジネスへの波及
1.電子マネーの種類と現況
 電子マネーは、電子的なデータをやりとりすることで、現金を持ち歩かなくても買い物やサービスが受けられる“新しいタイプのお金”です。JR東日本の「Suica(スイカ)や関東の大手私鉄や東京メトロ、都営交通などの「PASMO(パスモ)」、コンビニでの「Edy(エディ)」、「QUICPay(クイックペイ)」などでおなじみです。
電子マネーは、あらかじめ現金をデータ化してカードに蓄積し、残高の範囲で決済を行う「プリペイド型」の運用方式が基本でした。その他、クレジットカードと連動させた「QUICPay」などの「ポストペイ型」や、銀行のキャッシュカードで決済する「ジャストペイ型」の「J-Debit(ジェイデビット)」など、さまざまな決済方式の電子マネーも登場しています。
■主な電子マネーと電子決済
■電子マネーとクレジットカードの小口決済(1回当たり)の目安(イメージ)
 電子マネーの利用は、ITの普及やネット社会の進展に加え、利便性に優れた決済手法やポイント制度、割引サービスの付加など、現金決済よりも魅力的なメリットにより急速に拡大しています。日銀の発表では、電子マネーの発行枚数は、「Edy」に代表される前払い方式(プリペイド型)と「QUICPay」などの後払い方式(ポストペイ型)を含めた非接触IC型(カード)で(※1)1億枚(2008年3月末)を突破し、2007年度中の年間決済件数は8億1,000万件、決済金額は5,636億円にものぼっています。また野村総合研究所によれば、2006年に1,800億円規模であった非接触IC型(カード)で決済するマーケットは、5年後の2011年には2兆8,000億円規模にまで成長するものとみられています。現在の硬貨の流通残高が4〜5兆円となっていることから、今後、その現金の半分近くが電子マネーでまかなわれるほどの規模に成長すると予測もあります。
こうした現状を踏まえて、印刷大手の大日本印刷や凸版印刷も電子マネーやクレジットカード用の非接触ICカード事業を強化し始めました。凸版印刷は、すでに2008年5月、埼玉県に非接触ICカードの専用生産ラインを構築し、生産効率を従来より5割引き上げています。
■プリペイド型電子マネーの普及状況
※1:●接触型ICカードと非接触型ICカード
接触型ICカードは、カード端末機のリーダ・ライタ端子と接触するモジュール端子を持つタイプで、カードと端子が直接接触して確実なデータ交換が行われます。接触型は主に、より堅牢なセキュリティが求められる決済や認証の分野で使われています。
非接触型ICカードは、カード内部にアンテナの役目を果たすコイルが内蔵されており、端末のリーダ・ライタから発生している磁界にカードをかざすと無線通信でデータ交換が行われます。「Suica」や「ICOCA」に代表される鉄道改札や入退室管理など、利便性を求められるジャンルで活用されています。
■接触型ICカードと非接触型ICカードの仕組み
2.電子決済イノベーション
 電子マネーの利用は、これまで「Edy」や「Suica」などのIC型電子マネーが主流でしたが、これからは流通業界で広がりつつある“ネット上で決済を行う”「サーバー型電子マネー」が主流になると予測されています。
IC型電子マネーが金額情報をカード内のICに記録しているのに対し、サーバー型電子マネーは、インターネット上のサーバー内に金額情報が記録されます。これは、ネット上のゲームやネットショッピングなどに使用され、現在若年層を中心に利用者が拡大している電子マネーです。
例えば、NTTコミュニケーションズが提供するサーバー型のネット専用電子マネー「ちょコム」は、約3,000店のネットショップが利用できるもので、 コンビニ、銀行などから自分の貯金箱(ウォレット)にあらかじめ現金をチャージしてショッピングを利用します。クレジットカード決済のように個人情報が流失する不安がないという特長を持っています。
しかし、「サーバー型電子マネー」は従来の電子マネーと異なり、消費者保護を規定した「プリペイドカード法」から除外されていることから、事業者が経営破綻した場合、所持金(電子データ)が保護されない可能性がありました。こうした消費者保護の立場から、遅ればせながら、本年「サーバー型電子マネー」が法規制される見通しとなりました。
新しく規制の対象となるのは、ネット上でのみ使用できる「BitCash」や「WebMoney」といった電子マネーのほか、百貨店発行のカード型ギフトカードや「スターバックスカード」なども該当する予定です。これらが規制対象となると「Suica」や「Edy」など、カード自体にその価値(金額)が記録される「IC型」の電子マネーと同様に、発行企業が未使用発行残高の2分の1以上を積み立てる供託制度の整備が義務付けられる見込みです。
ただ、今後大きな課題となるのは、情報セキュリティの確保といった安全性の問題でしょう。クレジットカードの不正利用や、ネット上の個人情報の盗取・改ざんなども頻発していることから、電子マネーにもこうした不正や犯罪を防ぐ情報セキュリティ対策の早急な対応も求められています。
3.法規制に伴う印刷ビジネスへの波及
 サーバー型電子マネーに新たな法規制(※2)が始まると、利用者保護の観点から、クレジットカードを申し込む場合と同等の手続きが必要とされると予想され、その影響は多方面にわたります。まず直接的には、サービス申し込みの関連書類から決済会社における各種の帳票や証票、現行の書類の訂正作業、さらには対象者に告知するためのチラシ、カタログ、PRポスターといった印刷紙媒体の制作など、印刷業界への波及効果も見込まれます。
新たな法改正に関して記憶に新しいところでは、未成年者の喫煙を防止するために2008年7月からスタートした「成人識別たばこ自動販売機」、通称「taspo(タスポ:成人識別ICカード)」があります。この「taspo」を入手するためには、申込書のほか関連書類が準備されました。また、事前の告知キャンペーンにも多くの印刷物が制作されるなど“印刷特需”につながりました。
また、IT機器の進化と相まって、現在ネット上では個人が取引する少額決済が増え続け、便利で安価なサービスに期待が高まっていることから、今回の法改正と同時に、これまで銀行だけに認められていた送金業務を一般事業者にも開放するという改正案も盛り込まれ、実施される可能性が高まっています。
送金業務が開放されると、ネット上の電子決済システム会社が事業展開しやすくなり、手数料が割安の小口送金が一気に普及する可能性も期待されます。例えば、通販会社なども、銀行を経由することなく、会社独自で商品の決済・送金システムを構築できるようにもなり、より割安な商品の提供が可能となります。そこには当然、会社ごとに顧客管理や決裁書類、帳票類など多くの印刷物の発生が見込まれます。
このように法改正が実施されると、関連する新たなビジネスが必然的に誕生し、同時に印刷業界にとってもビジネスチャンスの拡大につながると予測されますので、今後の電子マネー業界の動向にも、ぜひご注目ください。
■法改正により新たに発生した印刷物の一例(「taspo」申込用紙)
※2:●法規制に対応するための主な取り組みとその対応
※2:●法規制に対応するための主な取り組みとその対応
 
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