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印刷通販ビジネスという可能性〜WebやITを直接ビジネスに結びつける手法〜
 
感圧紙の業界の未来を考える グリーンレポート
印刷通販ビジネスという可能性
〜WebやITを直接ビジネスに結びつける手法〜
2009/3/10
1.デジタル版下とインターネットの活用
2.印刷通販の概要とメリット
3.自社の営業ツールとしての印刷通販
1.デジタル版下とインターネットの活用
 印刷業は比較的早い時期からデジタル化、コンピューター化が進んだ業種です。しかし、印刷データの容量が大きかったことやデータや版の確認などの関係から、インターネットを使ったビジネス展開は立ち遅れる傾向がありました。また、デジタルデータで起こるトラブルも存在するため、結果として「プロ同士がお互いの確認の上で行う」のが現在でも常識となっています。そのため、プロではない顧客を相手にインターネット上で版下データのやり取りを行う「印刷通販」などは、一昔前までは考えにくいサービスだったのです。
デジタル版下を気軽にやり取りできない理由として、デジタル版の書類形式と、フォント(書体)データ、貼り込み図版データ、貼り込み画像データなどの複雑な関係が挙げられます。これらのデータ類は、一部でも不具合や欠損、制作側の環境と印刷会社側の環境との不一致が起こると版下として意味をなさなくなる場合も多く、問題発生時にお互いに連絡を取り合い再調整を行ったり、作り直すことが可能な体制を確保することが不可欠でした。これらの問題を解決し、印刷時に必要なデータを一つの書類にまとめ、デジタル版として単体でトラブルなく入稿できるようにした規格が「PDF-X1a」です。
「PDF-X1a」はAdobe Systems社が開発したPDF(Portable Document Format)規格のうちの一つです。「PDF-X1a」はすでに印刷版下として利用可能な書式として普及が進んでおり、最新のDTPアプリケーションでは入稿データとして「PDF-X1a」での書き出しが標準化されています。「PDF-X1a」の登場により、従来のデジタル版としての安定性はもちろんとして、インターネット経由のやり取りでも安心して作業が行えるようになり、「印刷通販」というビジネス実現にも大きく貢献しています。
また「PDF-X1a」は、通常のPDFデータと同じように受け取ったデジタル版データの修正が行えないため、制作側と印刷会社側との間で作業責任範囲が明確になるという利点もあり、画像などもデジタルデータとして埋め込まれていることが前提なので、写真の分解などによる手間や費用の増減を抑えられるメリットも存在します。
●従来の入稿とPDF-X1a入稿の主な違い
2.印刷通販の概要とメリット
 「印刷通販」とは、インターネット上のホームページで印刷の受け付けを行い、インターネットを介して版下データのやり取りや校正作業を進め、印刷後は宅配業者などを使って納入をするサービスの総称です。料金システムなどが明確化されており、印刷業界のルールに詳しくない人でも印刷発注を行いやすいのが特長です。
●印刷通販サイトの仕組みとポイント
 「印刷通販」は、大判出力などの特殊印刷の分野で、広告制作・デザイン会社など印刷業と関わり深い業種を対象に始められました。印刷会社としても、当初は導入した高価な機材の稼働率を少しでも向上させるため、インターネット受付窓口を増やしてみたというのが実情でした。
しかし、パソコンやインターネットが完全に浸透した結果、「印刷業界と直接の結びつきはないがデジタル版下は作れる」「規格デザインの一部変更であってもオリジナルの印刷物が欲しい」という顧客層が、インターネットでの検索サイト経由で、印刷物の見積もりや発注を依頼するようになりました。これらの業界外からの顧客に対応するため、料金体系を通常よりもわかりやすく割り切った形で設定し、作業ルールや作業責任の範囲を明確に切り分けていった結果出来上がったのが、現在の「印刷通販」という形態です。
「印刷通販」が多くの「インターネット通販」と異なる点は、大抵のインターネット通販が、従来の通販のインターネット版、もしくは小売店舗のWEB窓口としてのインターネット通販であるのに対し、「印刷通販」は従来の通販システムや小売店舗というステップを踏まずに、下流側に位置する印刷会社が、直接最上流の個別顧客と結びつくシステムだということです。 メーカー直の通販と同様に、途中に中請会社が存在しないため規模が小さくても利益率が高いのが特長です。
また主に業界外の顧客を対象とする「印刷通販」には、従来の印刷業界のルールを見直して、より割り切った形で適用できるというメリットが存在します。通常の業界内同士の作業の場合、スケジュールのほかに2社間の作業環境の擦り合わせなども必要で、印刷会社としては、自社にとって効率の良いフォーマットや、デジタル版に最適化された校正ルールへの一本化が難しいなどの問題点も存在しました。
「印刷通販」では、価格を含めそれらのルールを印刷会社側で確定していくことが可能です。またなによりも「印刷通販」の顧客層が求めているのは安易な低価格ではなく、明確で納得しやすい価格体系で、トラブルなく自分が必要としているレベルの印刷物が手に入ることにほかなりません。初めての注文で、顧客側に版や色味について不安があるのであれば、指導手引きや対応処理が可能な納品スケジュールを提案することもできます。校正も本紙校正をオプション扱いにするなどの合理化もしやすく、自社の機材や人材を有効に活用できます。これらは必ずしも従来の業界内の取引と相反する動きではなく、従来の取引の隙間を埋めていく窓口作りといえるでしょう。
印刷通販のメリットをまとめると以下のようになります。
1 小規模だが利益率が高い
2 ルールを統一することで作業効率が向上する
3 従来とは異なる顧客層にアピール
4 自社の得意な印刷分野に顧客を誘導可能
5 機材や人材の有効活用により生産性が高まる
このほかにも、小規模顧客であることから、インターネットを利用した校正を含む将来的なデジタルワークフローシステムへの移行のテストケースとしての運用も可能で、「印刷通販」導入の隠れたポイントの一つといえます。
3.自社の営業ツールとしての印刷通販
 「印刷通販」に注目しているのは印刷会社だけではありません。印刷商材や機器メーカーなども、パッケージとしての「印刷通販」の可能性の高さからビジネスとしての展開を始めています。例えば、現在印刷業界におけるトピックスに各種オンデマンド印刷機があります。「印刷通販」や他の用途のためだけにこれらを導入する場合、それだけで成り立つ損益計画を立てなければいけませんが、他の取引を視野に入れた上で「印刷通販」と合わせたシステムとして考えれば、これらの機材の導入もより現実的なものとなります。「印刷通販」の窓口となるインターネットのサイト上で、自社で可能な印刷について広くアピールも可能で、設備投資による相乗効果を狙えるからです。
●得意分野のアピールと付加価値の提案
 また、印刷業界と関係の薄い「印刷通販」の顧客にとって、自分が求める用途に合った印刷物が手に入ることの価値は想像以上に高いといえます。
例えば複写式の帳票類は、文房具店などから用途に近いものを選んで使うのが当たり前と考えている人が多いのが現状です。確かに単価でいえば、書式規格で作られる大量生産品にはかないません。しかし、事務員が一枚一枚、社名をゴム印で押しているとしたらどうでしょうか。その作業時間にかかる人件費や実際の使いやすさ、見栄えなどを考えれば、オリジナルの帳票を印刷した方が費用対効果が高い場合もあります。もし、オリジナルの帳票を作りたいと考えても、実際にどのくらいの費用が必要なのかまで印刷業者を探して問い合わせるのは、業界外の人間には敷居が高いのです。中間の制作会社などを通して制作を依頼すれば当然割高になり、価格的な意味での現実性が薄れてしまう場合も存在します。
大判印刷、小ロット・オンデマンド印刷、または簡易製本などの自社の「切り口」を、実際にかかる費用のケースパターンを提示しながらアピールできる「印刷通販」という窓口。印刷会社が持つノウハウや業者間の繋がりを上手に活用することで、柔軟かつ実利を兼ねた新しい営業ツールとして大きな可能性を秘めた武器になるでしょう。
 
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