CLUB GC
表紙へ グリーンレポートへ 技術情報へ Q&Aへ アンケートへ
食の安全とトレーサビリティの現状<第2回>
 
感圧紙の業界の未来を考える グリーンレポート
食の安全とトレーサビリティの現状<第2回> 2009/2/10
1.食への信頼回復とトレーサビリティ
2.問題発生時だけではない導入メリット
3.食の安全に対応した帳票システム提案のために
1.食への信頼回復とトレーサビリティ
 民間の調査会社・三菱総合研究所によると、2008年に最も怖いと感じたニュースに「世界金融不安」「秋葉原通り魔事件」などのニュースを押さえて「中国製ギョーザ農薬混入事件」が第1位に選ばれました。衝撃的なニュースが多いなか、年末に行われた調査で年初頭に起こった事件がトップとなることは珍しく、消費者が食の安全に対し敏感になっている現状が改めて浮き彫りとなりました。
2008年の食に関する事件で中国製ギョーザ農薬混入事件がクローズアップされたのは、農薬混入により実際に中毒者が発生したこともさることながら、発生時期が年末年始であったこともあり、販売した小売店や輸入した業者などの間で情報が共有されなかったことです。事件が公になった後の会見でも事件の認識段階や原因がはっきりしないなど、危機管理のまずさが露呈し混乱に拍車が掛かったことも一因といえるでしょう。
■2008年に最も怖いと感じたニュース
 このような問題発生時の混乱を避けるために重要といわれているのが「トレーサビリティによる食の透明性の確保」です。
トレーサビリティ(Traceability)とは、「trace(追跡)」と「ability(可能)」が組み合わされてできた言葉で、生産や加工・流通の段階を通じて、食品の移動履歴・状態を追跡把握できることをいいます。
トレーサビリティには、履歴をさかのぼる「トレースバック」と履歴を下る「トレースフォワード」の2種類が存在します。「トレースバック」とは、消費者や小売り段階などで製品に問題が見つかり、問題が発生した時点・原因を特定するために製造段階をさかのぼることをいいます。逆に、出荷後に原材料や部材に問題が見つかった場合、その材料が使われた製品を特定して回収などの対処を行う場合は「トレースフォワード」と呼ばれます。 消費者の視点から見ると、購入したもしくは購入する製品についてトレースバックできるかどうかを重視して「製品の信頼性」を推し量り、生産・販売側がトレースフォワードで問題に迅速に対応できるかで「生産・販売業者の信頼性」をはかっているといえます。
当然これらの追跡ができない状態よりはできる方がよいのですが、ただ追跡できるだけではなく、情報の公開手順も含めどれだけ迅速かつ的確に対応できるかが問題発生時の重要なポイントとなります。これらによって、実際に行わなくてはならない対応規模や風評被害をどれだけ防ぐことができるかが決まるからです。
2008年12月24日に沖縄県食肉センターで起こったサルモネラ・コレラエスイス菌に感染した食用豚1頭の誤出荷は、出荷用識別カードがなんらかの理由で外れたことが原因とされています。結果として製品レベルで他の豚との区別ができない状況であったため、この1頭分の感染肉57kgのために他の135頭分4.5tの豚肉すべてが回収処分されました。幸いにも出荷先がスーパー21店舗と限られていたことと、迅速に回収処分が行われたため二次被害は出ませんでしたが、製品末端までの詳細なトレーサビリティが確保されていれば、一次被害も最小限に抑えられたと推測されます。
■トレーサビリティのしくみ
2.問題発生時だけではない導入メリット
 トレーサビリティが確保されていた場合、問題発生時に次の3つの対応が迅速に行えるとされています。
①対象商品を特定した迅速な回収
②問題原因の速やかな特定
③安全な他の流通・製造ルートの確保
①と②は問題発生時に必須といえます。しかし、問題の現実的なリカバリーという意味で③のメリットも重要です。当然原因の特定が済んだ後の対処ではありますが、製品の安全性のほかにも安定した供給は生産・流通業者の信頼にかかわる要素であるからです。
また問題発生時以外にもトレーサビリティ確保による効果は存在します。生産方法や加工方法などに関する情報提供による販促効果や、販売状況の把握・受発注処理・在庫管理・物流管理を効率化できるなど、消費者だけでなく各事業者にとっても導入メリットが大きいのです。
農林水産省の調べによると、2005年3月時点の調査においても、既に約9割の消費者が食品のトレーサビリティについて「重要」と回答しており、それらの要望に応える形で、食品製造業・食品小売業共にトレーサビリティシステムを導入している企業は年々増加しています。
すでに国産牛肉に関しては、2001年の国内でのBSE(牛海綿状脳症)発生を契機として、「牛肉トレーサビリティ法」が制定され、牛を個体ごとに一元管理する手法が採られています。他の食品に関しては導入指導レベルに止まっていますが、農林水産省では、青果物、外食産業、鶏卵、貝類(カキ・ホタテ)、養殖魚、海苔、鶏肉、豚肉などについて幅広くガイドラインを作成し積極的にトレーサビリティ導入を推進しています。
■トレーサビリティ確保に対する消費者と企業の意識の高まり
3.食の安全に対応した帳票システム提案のために
 HACCPやISO22000などと同じように、食品のトレーサビリティを導入することは、安全な食品として、また食品管理や流通管理の確かさを消費者や取引業者にアピールするポイントともいえます。特にトレーサビリティによる履歴の概念は、国内においての工業製品の管理流通システムと類似した点も多く、いかに追跡が容易で偽造されにくい帳票データベースシステムを構築するかが鍵といえます。
トレーサビリティの基本は簡単で、製造・加工業者においては以下の2点となります。
①「どのロット」を「いつ」「どこに」「どれだけ」販売したのか記録する。
②ロットごとに原料の「購入先」や「購入時期」「履歴」がわかるように記録する。
流通業者においては、この2点にさらに次の項目を追加します。
③ロットを小分けにして販売したり、組み合わせて1つのロットとする場合は、それぞれの相関がわかるように記録すること。
取り扱う製品によっては追加管理項目は発生しますが、トレーサビリティシステムは、従来の帳票システムを見直すことで構築できる要素が多いのが特長です。確実に納入側と受取側に帳票控えが残るようにするのは当然で、受け渡した時刻や流通・物流時の管理状況も含め記録することで履歴がより明確になります。リアルタイムに処理検索が可能という意味で、ネットワーク上に製品の履歴がデータベース化されるのが好ましいのですが、商品の外箱などに添付されたラベルを見ればおおよその履歴がわかるような、視認性のよい管理も実作業効率の向上のために同時に進める必要があります。
■従来の帳票管理とトレーサビリティに対応した帳票管理の違い
■従来の帳票管理とトレーサビリティに対応した帳票管理の違い
 このような現実に即したトレーサビリティシステムを構築するためには、他業種を含めた各種帳票のノウハウを生かし、導入する立場に立った提案を積極的に行うことが重要です。新しい帳票を作成する単発の仕事と捉えずに、トレーサビリティ実現のために全般的なアイディアや資料を提示することがビジネスチャンスを広げるきっかけともなります。
紙ベースでは、文字記入や従来のバーコードに比べて大幅な情報量アップと読み取りエラー・改ざん回避を実現した二次元コードを並列利用し、データベースとの連携で偽造や迅速な処理に強い帳票システムの作成・提案が望まれます。また現在、完全なトレーサビリティを実現するべく経済産業省の指導の下で安価で汎用性の高いICタグが研究開発されており、近年の食の安全問題を背景に実用化の加速が予想されています。現在の導入コストだけでなく、将来的なランニングコストを算出してのアプローチが有効でしょう。
印刷業種においては、これらのICタグとデータベース、従来の紙ベースの帳票を上手に組み合わせた、取引先の会社・流通規模にあったトレーサビリティシステム構築を支援することが新たなビジネスチャンスや業務形態移行への糸口ともなります。そのためには、従来の帳票に足りない項目は何か、安価な物流業者を選んでも管理がしやすいチェック項目の構築の仕方などに気を配り、システム全体をみておく必要があります。トレーサビリティ導入全体にかかわることが難しい場合でも、発注された帳票の内容などからケーススタディを行い、ポイントを把握しておくことが重要です。
またトレーサビリティ情報の他にも、公表することで安全性のアピールや事故防止に有効と思われる情報は積極的に明記し、第三者による改ざんや、人為的ミスによる誤配や品質管理ミスなどを事前に防ぐフォーマットの提案・作成が、取引先ひいては消費者にも自社のノウハウをアピールできるポイントといえるでしょう。
 
back
Copyright(c) 2009 FUJIFILM BUSINESS SUPPLY CO., LTD. All Rights Reserved.